この嘘は本物だと言うために(『君たちはどう生きるか』解題の試み)

君足巳足@kimiterary

はじめに

 解題を試みる以上、当たり前だけどネタバレには考慮していない。また、なるべく作品外の固有名詞を排して書くつもりだ。つまり、このシーンはあの作品のオマージュだとか、この登場人物は現実世界のあの特定の人だろうとか、そういう話はしない。もっと得意で知識のある人に任せたいし、個人的に断言を避けたい気持ちもある。


 基本的には作品内での時系列順に書いていくが、テーマとしては「主人公と〇〇の関係」を基本単位とするため完全に時系列順ではない。話のまとまりを優先し、先の内容を含めたりする。


 あとは前提として、あの物語をどう観たのかをおおざっぱに書いておこうと思う。


 主人公、眞人は大人の都合によって振り回されている。母親の死と、父親の再婚(ソロレート婚)と、疎開、つまり戦争や社会や家族の都合で振り回されるさなかにある。だから、多くの人と、主に大人と、望まずとも出会う。彼はどうにかして自分の心情と折り合いをつけて、周囲の人物たちを許容していく必要があった。彼は塔の下の世界での「冒険」を通して、それを達成していく。その障害であった自身の悪意と向き合い、「やがて炎に包まれる世界」の中でも「友だちを作る」をことを宣言して、そして、外の世界に帰っていく。


 あの物語はそのように、非常にシンプルな成長の物語だった。

 そういう至極当然の読みをまずはじめに書いておこうと思う。

 それ以上の読みなんて、別にどうしても必要なものではないのだから。





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