第4話 お母さんと一緒に旅行にいこう。

 八月にはいり世界コスプレサミットに参加すべく、真喜子と司は名古屋行きの近鉄特急に乗り込んだ。


「ふんふん♪♪」

「母さん楽しそうだな」

「だって司ちゃんと久しぶりの旅行ですもの、テンションも上がるわ」

「そ、そうなの」

「どうしたの司ちゃん、顔真っ赤だよ」

「いや、何でもないよ。今日もあついね母さん」

「そうね、名古屋も天気予報晴れだったわ。はー楽しみ」

「ところでけっこうな荷物だけど……」

「じゃじゃーん!!お弁当用意してきたんだよ!!」

「えっマジで!!」

「そうよ、これお昼に食べましょうね」

「母さんのお弁当楽しみだな」

「あらっ司ちゃん、正直じゃないの」

「母さん、料理だけはうまいからな」

「料理だけはってなによ。ぷんぷん!!」

「痛い痛い、ほっぺたをつねらないでよ」


 名古屋行きの近鉄特急は出発し、三重県に入る。


「さあ、ちょうどいい時間だし、お弁当たべましょうね」

「じゃあ、僕は自販機でお茶買ってくるよ」

「私は烏龍茶お願いね」

「うん、わかったよ」

 しばらくして司はペットボトルを持って席に帰ってくる。

「ありがとう、司ちゃん」

「さあ、ご飯たべよう。僕もお腹すいてきたよ」

 二人は前の座席についている折り畳みのテーブルを下ろす。

「まずはおにぎりね。このお魚のシールがはってるのがツナでワカメのシールがはってるのが昆布よ。で赤いテープがはってるのが梅干しね」

「すごいよ、わかりやすい」

「でしょう、もっと誉めてもいいのよ」

「うん、すごいよ母さん。母さん天才!!」

「えへんっ!!」

「で、おかずは何?」

「そでは発表します。ドコドコドコ♪♪ジャジャーン!!」

 お弁当の蓋をあける真喜子。そこにはびっしりとおかずがつまっていた。

「わーこれもすごいよ。唐揚げに厚焼き玉子、筑前煮にタコさんウインナーじゃないか」

「そうよ、司ちゃんの好物ばっかりでしょう」

「うんそうだね。これだけでも母さんと一緒に旅行に来たかいがあるよ」

「まあどうしたの。今日は口が達者じゃないの」

「い、いや。せっかくの旅行だしね。テンションあがっちゃたのかな」

「そうなの。いっつもそれでいいのよ」

「まあ考えとくよ。それじゃあいただきます」

「はい、私もいいただきます」

 二人はお弁当を食べ始める。

「母さんのおにぎりは絶品だね。ちょうどいい塩加減だよ。唐揚げも美味しいよ」

「よろこんでもらえて嬉しいわ。ほら玉子焼きも司ちゃんが好きな甘いほうよ。はいあーん」

「あーん、パクリっ。うーんこの優しい甘さがたまらないね」

「本当に今日はお世辞がうまいのね」

「違うよ、母さんの料理が美味しいから正直にいっただけだよ」

「あはっうれしい、ありがとう司ちゃん」

「こっちこそ、いつも美味しい料理をつくってくれてありがとう、母さん」

「どういたしまして、うふふっ」

 真喜子はご満悦であった。

 

 

 楽しくお弁当を食べたあと、特急電車は名古屋駅に到着した。

 二人は地下鉄にのりかえ、栄駅に向かう。

 チャックインをすませ、真喜子はホテル貸し出しの更衣室で着替えをすませた。



「さすがにあのビキニアーマーで出てきたらどうしようかと思ったよ、母さん」

「まあね。この長いたけのTシャツもかわいいでしょう。私の好きなスマーフの柄なのよ。それにこっちは司ちゃんが選んでくれたショートパンツよ。オアシス21についたら脱ごうかな」

「そうだね、地下街であの衣装はまずいかもね。オアシス21についたら本番だね」

「そうね、すっごく楽しみ。これ司ちゃんの撮影参加証よ。で、これが私のコスプレ参加証ね。ほら見て、おっぱいに参加証のっちゃった、うふんっ」

「ちょっと母さん、旅先だからってはしゃぎすぎだよ。それはエロすぎるだろう(小声)」

「えっなんか言った司ちゃん」

「そういうのはもういいから!!」

 二人は世界コスプレサミットが開催されているオアシス21に到着した。

「うわっすごい人よ。司ちゃん。ほらっコスプレしている人いっぱいいるわ。上の芝生のエリアにいってみましょうか」

「そうだね、母さん。それにしてもすごい人だね。コスプレしている人もカメラマンの人もいっぱいいるよ」

 二人はオアシス21の階段を登り、芝生のエリアに向かう。

「さて、それじゃあ司ちゃん撮影よろしくね」

「うん、まかせてよ。この日のために一眼レフのデジカメかったんだから」

「じゃあ司ちゃんよろしくね、脱ぎ脱ぎっと」

「服、鞄にいれとくね」

「うんっありがとう司ちゃん」

「じゃあ、母さんポーズとっていってね」

「まかせてよ、司ちゃんかわいく撮ってね」

 カシャカシャと司はシャッターをきる。

「どう、うまくとれた?」

「すごいよ、母さん。めっちゃセクシーでかわいいよ。まあ朝霧陽子にしては胸が大きすぎるけどね」

「そうね、これでもおさえてるんだけどね」

「母さん、エロすぎるんだよな(小声)」

「醸し出す大人の魅力ってやつかしらね」

 ウインクする真喜子。

「あっその表情いいよ」

 シャッターを再びきりはじめる司。



「あの……すいません。もしよろしければ写真とらせてもらえますか」

 二人に声をかける女性。手にはデジタルカメラ。


「どうする母さん?」

「もちろん、いいわよ。ほらっ後ろみてみなさいよ」

「うわっ、いつのまにか行列できているよ」

「いいですよ。他の人もいるみたいなんで少しだけでよければですけど」


「はいっ、ありがとうございます。あのっ失礼かもしれないけど、南条真喜子さんですよね」

 カメラを持つ女性は言う。

「うんっそうよ」

「やっぱり、私いつもYouTube見てます。ファンなんです。お会いできて光栄です。今日のコスプレとってもかわいいですね」

「まあ、そうなの。私のYouTubeも見てくれてるのね。ありがとうね」

 その女性は何枚か写真をとったあと礼をいってさっていった。

「じゃあ次のかた、よろしくね」

「はいっ、お願いします」

 撮影は一時間ほど続いた。

「すいません!!いったん休憩させてもらいます」

 列をいったん区切る司。

「母さん、お疲れさまスポーツドリンクかってきたよ」

「ありがとう、司ちゃん。まさかこんなことになるなんてね。はー暑い、暑いっ」

「ちょっと母さん、こんなところで胸の谷間あおがないでよ」

「えーだって暑いんだもの」

「さ、さすがにエロすぎるよ。さあTシャツきて日陰にいこう」

「そうね、はい司ちゃん、疲れたから手つないでつれていってくれない」

「わかったよ、はい、母さん」

「うれしい、毎日こんな司ちゃんだったらいいのにね」

 二人は日陰に行き、休憩をした。



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