第4話


 目覚まし時計が鳴り響く。


 私は鉛の様に重い体を無理やり起こして時間を確認する。


 7時45分


 「まだ間に合う。」


 のそりと立ち上がり、無造作に服を脱ぎ、制服に着替える。


 鞄を持ち上げながら勢いよく部屋を飛び出る。


 朝食には目もくれず、私はがむしゃらに走る。


 時刻は7時50分、いつも通りなら間に合う時間だ。




 息を切らしながら少し遅れて席に座る。


 タナカ先生が点呼を取る。


 「出席番号1番、島田 美咲。」


 私は机に頬をつけて、返事をした。


 「……はい。」


 「よし。」




 1時間目の授業は美術。


 ………………………………………嫌いだ。




 2時間目以降はサボった。




 何をするでもなく家に帰り、横になる。


 なんだか気分が悪い。


 こんな時は寝て、気分をリセットするのがいいだろう。


 私は頭を外した。


 ………。


 ………。


 ………。


 ………。


 ………………寝れない。


 寝るにしては時刻が速いからだろうか?


 ちがうな。


 視線を感じる。


 でも、それはあり得ない。


 ここは私の部屋だから。


 何人の侵入も許さない、無敵の居城。


 私を見る者が居るはずがない。


 だが、依然として視線を感じる。


 恐ろしくなった私はドアを閉めて、布団で丸くなる。


 それでも、眼は私を見る。


 怯えた私は膝を抱えて身を小さくする。


 それでも、眼は私を追う。


 私は目を閉じて、涙を流す。


 それでも、眼は許さない。


 私はあきらめた。


 ………。


 私は熟睡することが出来た。

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