第4話 協力者
一週間後、南条は斎藤から指定されたロシアのモスコスフキー駅へと訪れていた、何故ここを指定されたのか詳しい理由は聞かされなかったが、南条はなんとなく理解していた、それはマシンの手術が終って2日後の事だった、早乙女からの全ての様態検査が終わった南条は再び指令室にいた斎藤のもとへと向かっていた、入り口の前へと着くと、中で数人かの話し声が聞こえた、部屋へと入るとすぐに斎藤はこちらに反応した、「ご苦労だったな南条、気分はどうだ?」そう話すと南条はチップが埋め込まれた右腕に顔を振り向いた、「妙な気分だ、」そう応えると斎藤は杖をつきながら義足の足で、指令室のモニターの前へと歩いた、「南条こっちに来てくれ」南条は疑問を持ちながらも斎藤の近くへと歩いた、「悪いが緊急の事案が出た、」 「どういう事です?」すると斎藤は険しい表情で話し始めた、「我々の組織には二つの係がある、まず一つは過去に戻り事件を未然に塞ぐ私たち、二つ目は過去に何が起きたかを記録する部隊だ」そう話したが南条は理解出来なかった、「何の記録もなしに過去に戻るのでは意味がない、そこで先に犠牲になる覚悟で調査しに行って貰っていたエージェントの加藤からの連絡が現在途絶えている」すると斎藤はモニターから加藤の顔を映した、「もしかするとテロリストに拘束されている可能性がある、君には黒幕を始末する前に加藤の情報を聞き出してくれ」 「わかりました」南条は真剣な目付きで斎藤に深く頷いた、指令室から出ようとした時、慌てて斎藤は自分の名前を呼んだ、「君に言い忘れてた事があった、今回の任務には君ともう一人応援部隊を呼んでいる、君はすぐロシアに向かってくれ。」
大きなモスコスフキー駅の内部では、いくつもの電車がこの駅を通っている、そして事件のあったモスクワには近隣の位置にある、駅のベンチで時間を潰す南条は新聞を読み込んでいた、新聞には題材的に爆弾テロ事件について取り上げている、じっと目を通していると突然、南条の座るベンチの隣に誰かが座り込んだ、ゆっくりと新聞を下ろし横を確認しようとすると、顔が微かに見えた、横に座る人物はコートを着こなしてまだ若い青年のように感じた、「危険な任務だ、逃げるなら今のうちだぞ、」突然横に座る青年は南条の顔を見ることなくそう言い放った、「覚悟は出来てる、本当なら俺はもう死んでいた筈だったからな」そう応えると青年は手を差し出してきた、「青葉です、よろしく」南条はすぐに青葉と握手を交わした、「南条だ、お前が応援部隊か?」 「あぁ、斎藤から聞いてないのか?」 「聞いてないな」そう応えると南条は新聞を閉じてベンチから立ち上がった。
二人は一先ずモスコスフキー駅のモスクワ行き電車へと乗り込んだ、吊革を握りながら電車に乗っていると、数分後に窓から見えてきたのは立ち入り禁止で封鎖となっている有名な赤の広場だった、「爆発はあそこで起きたんだな」険しい顔で二人はその風景を目に焼き付けた、モスクワ駅へと降りた二人はそのまま近くのホテルへと入っていった、既にホテルは先に仲間がチェックインをしており、すぐに3階の部屋へと入ることが出来た、「予定より遅かったな」部屋の中には眼鏡をかけてパーマ髪の男が入っていた、「こちら同じく仲間の畠山だ、」青葉は軽く南条に紹介すると寝室のベットへ着ていたコートを脱ぎ捨てた、南条は改めて畠山に挨拶を交わした、「南条です、よろしくお願いします」
「えぇ、よろしくお願いします」部屋のリビングで軽く握手をしていると青葉が寝室の部屋から出てきた、「畠山、加藤から送られてきた記録はどこにある?」青葉は急かすかのように質問を投げかけてきた、「わかった、わかった」すると畠山は床に置いていた黒のボストンバッグからタブレット端末を取り出した、「爆弾テロ事件が起きたのは、10月8日午後2時において、赤の広場付近にて爆発が発生、ロシア警察に逮捕されたのはアメリカの過激派組織に属していたと思われるオリバー・ムシーナ、彼が爆弾を起動させた」畠山は眼鏡を抑えながらタブレットに書かれた記録を読み上げた、「と言うことは、まずムシーナを確保しないと爆弾が起動させられ、黒幕が掴めなくなる」南条は鋭い視線を二人に向けて話した、「そろそろ任務に取り立てたい、南条、青葉、準備してくれ」。
時計の針が今この瞬間にも小刻みに動きだしている、南条と青葉は寝室の中で慌ただしく任務用の服装に着替えていた、「南条さん、わかってると思いますが我々は機密組織の人間です、もし敵に正体がバレたらその時点で我々の負けになります」突然そう青葉は話しているとクローゼットの中に納めていたハンドガンを南条に手渡した、「もし過酷な状況に落ち込まれて、口を滑らそうとしたらこの銃で」 「わかってるさ、お互い生きて帰ることを願おう」南条は笑顔で青葉に応えた、5分後には又リビングへと3人は集まった、いよいよ任務が実行されることになる、南条は銃を腰のポケットに備え付け腕時計で時間を確認していると、畠山が一言二人に告げた、「一応話しておくが、リセットをすると一度起きたことがもう一度繰り返される事になる、起きたことは記録に残り、やり直すことは出来ない、それともう一つ1日を過ぎると元の時間軸へと戻ることになる、どうかこの二つだけは覚えておくようにしといてくれ」その言葉には畠山の重みがあった、「もうすぐ時間だ、行こう」そう告げると南条と青葉はお互いに近寄って腕時計の時間を確認した、すると青葉は二人から離れた畠山の方を振り向き軽く頷いた、「青葉、テロ事件の起きる一時間前に時計をセットした、チップはあるか?」 「勿論、」青葉は笑みを見せながら応えた、次の瞬間、南条と青葉は埋め込まれたチップを押した、チップが押された瞬間、回りに見えていた景色が高速で巻き戻るかのように自分達だけが動かないまま回りの景色や人の動きが一気に戻っていく、南条は驚愕した表情で辺りを見渡していると次の瞬間、高速で巻き戻っていた景色が突然ストップした、「驚いたな、一体どうなってるんだ!」すると青葉は冷静な顔で南条に話しかけた、「チップによって時空を遡っていたんだ」南条が驚くなか青葉はすかさず窓の外を覗いた、「赤の広場が封鎖されていない、今のうちに行くぞ」 「あぁ、」。
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