第3話 決意
「悪いが家に帰らせてくれ」自家用ジェット機へと乗り込んでいた南条と斎藤は、ミッションの内容について話していた、しかし南条は頑なにミッションを承諾しなかった、「ようやく家に帰って娘にも会える筈だったんだ、残念だが協力は出来ない」そう応えると斎藤は南条を見つめずジェット機の窓を眺めていた、「君の娘にも危害が及ぶかもしれない、敵を放って置いたらな」その言葉に南条は疑問を抱いた、「どういう事だ?」南条の問い掛けた言葉を斎藤は待っていたかのように突然こちらを振り向いた、「敵は核兵器の設計図を手に入れた、」斎藤のその言葉に南条は更に疑問を感じた、「どうしてだ?設計図は東堂教授と共に消えた筈だぞ!」 「設計図は二つ存在していた!、恐らく君が追っていた物はダミーだったんだろう」そう話した瞬間しばらく南条は大きなため息と共に落胆してしまった、「高橋はダミーの為に命を落としたのか!」
「彼の事は残念だが、スパイの身である以上致し方ない事だ」南条は頭を抱えながらしばらく頭が回らなかった、「もうすぐ目的地だ、詳しい詳細は基地で話す。」その五分後にジェット機は地上へと着陸した。
斎藤の話した基地は地下空洞に設置されており、地下まではでかいエレベーターで下へと降りた、「まずはこれを見てくれ」司令室へと入った南条がまず始めに見せられたのは、でかいモニターに映されたニュース映像であった、「これは昨日発生した、モスクワでの爆弾テロ事件だ」 「昨日のうちにこんな事が起きているなんて」すると斎藤はモニターの画面を切り替えた、次に画面に映されたのは男の顔だった、「奴はこのテロ事件の実行犯であったが、奴の後ろに黒幕が存在していたと情報が会った、この爆弾テロ事件がもし核兵器の実験だったとすればその黒幕が設計図を持っている可能性がある」 「だが昨日起きた事件だぞ」 「そこでだ、原因不明のこのテロ事件をもう一度調査し、黒幕を探し出すのが我々の任務だ、」そう話したが南条は理解が出来なかった、「一体どうやって探し出すんだ?」すると斎藤の後ろから白衣を着た一人の女性が歩いてきた、「このチップで探すのよ」そう話すと女性はポケットから小さなチップを取り出した、「彼女は研究者の早乙女君だ」斎藤がそう紹介すると早乙女は軽く会釈した、「そのチップはなんだ?」南条はすぐチップについて問い掛けた、「まぁ、簡単に言うとタイムリープするための鍵の様なものよ」早乙女は続けて話し始めた、「タイムリープは一般的に自分自身の意識だけが時空を移動し、過去や未来の自分の身体にその意識が乗り移る事がタイムリープであるが、このチップを身体に埋め込むことで自身の意識を時空で移動することが出来るようになる、まさにタイムトラベラーになれる、」 「だが埋め込むことが出来るのは政府からの認可が下りたごく僅かな人間だけだ」南条は息を呑んだ、「この任務を引き受けるということは、君の存在を抹消してもらう事になる」斎藤は険しい顔でそう話した、「斎藤さん、どうして俺はここに選ばれたんだ?」 「いずれわかるさ、」南条はその場で考え込みしばらくの間会話は途絶えた、「悪いが少し時間をくれ」。
一先ず司令室から抜け出した南条は基地の個室へと足を運んでいた、部屋へと入ると南条は携帯を取り出し通話をかけた、通話先は南条の実家だった、携帯から最初に声がしたのは娘だった、「ごめんな家に帰れなくて」南条は物寂しそうな顔を浮かべながら話し始めた、「パバいつ戻ってくるの~」その娘から問いかけに南条は言葉を募らせた、「今度の仕事が終わったら必ず帰ってくる、お爺ちゃんの手伝いしっかりやっとくんだぞ、」しばらくの間南条は娘との会話を楽しんでいた。
司令室から南条が出ていった一時間後、再び南条は司令室へと戻ってきた、南条の顔を見た斎藤はふと驚いた、南条の顔は決意を明らかにしたような覚悟を持った顔をしていた、「娘を守るために、任務に協力します!」。
ベットへと寝かされた南条の横には鋭く尖った針が付けられているマシンが置かれ、眩しいライトの光が南条を照らしていた、これからチップを埋め込む手術が始まろうとしていた、「準備はいいですか?」寝ている南条を見下ろせる位置にいた斎藤と早乙女は南条にもう一度確認をした、「もう覚悟はできた、やってくれ」そう応えると早乙女は近くの機械テーブルに取り付けられたマシンのスイッチを起動させた、次の瞬間には南条は麻酔によって深い眠りへと落ち、マシンによる手術が開始された。
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