第2話 知らない天井だ。
「...う、うん?」
どこかで、恐らくは窓の外でスズメ...にしては少し高い鳴き声が聞こえる。瞼を薄く開ければ、木材の梁と石材で出来た知らない天井だった。朝日が大きなガラス戸の窓から差し込んで朝を感じさせる。だが、運の悪いことに俺は寝起きが悪かった。すぐに起きることができない。
よく考えたら体の節々が痛い。瞼をもう少し広く開けて下に目線を向けると俺はどうやらベージュの薄い布の上にそのまま寝かされているようだった。確かにそれなりに厚い服を着ているから寒くはないけど、体が痛い。
「...あぁ、あなた、起きたのね。よかっ「ホワッツ!?!?!?獣人美少女?!?!?!ホワィ?!?!?!」ちょっと!!うるさい!!!」
俺はあんなに寝起きが悪いのに今回ばかりは跳び起きた。そして着地する時にもドンと床に大きな音を立ててしまった。
「あ、ごめんなさいマイ・ハニー。ところでここはどこですか?」
「誰がハニーよ...全く、不法侵入者の分際で、質問に答えてもらえると思っているの?むしろこっちが質問する側よ。」
「不法侵入者?ところでここはどこの国なの?獣人高身長美少女がいる国なんて僕は知らないよ?」
「だから、あなたは質問される側で...全く、ここは帝国よ。」
「帝国?何帝国なの?」
「...?帝国は帝国よ。帝国って名前の...って、何度も言うけど。」
シャキンと金属と金属の擦れる音。正確には剣が鞘から抜かれる音が響く。
俺の側頭部のすぐそばにキンと石の床に刃こぼれ1つしない剣が突き立てられ、低い声で彼女は言った。
「質問するのはこっち。あなたには尋問室に行ってもらうわ。」
「ワ...ワァ...!」
この子イケメンすぎてないちゃった。
そこが彼女の寝室であることに気づいて意識を失った俺は気づいたら取調室みたいな所で椅子に縛り付けられていた。
「あのー、これちょっとかなり痛いんですけど、ほどいてもらったりとか...」
「いいわけねぇだろ。不法侵入者。いいか?まず、お前には黙秘権がある。だが、こっちには尋問権がある。つまりお前は黙っていることはできるが、黙るなら俺たちは尋問するだけだ。分かったか?」
ゴツくて太ったおっさんが俺の尋問官だった。あぁ彼女に尋問されたかった...尋問だって言ってあんなことやこんなことをされたいだけの人生だった。
「黙秘権ってそんな感じだったっけ...?まぁ、最初から黙る事なんてしないよ。だから...その、物騒なペンチを置いてくれないかな?」
そう、この男、なぜか血の付いたペンチを持っていたのだ。こわ...。
「あぁそうか。なら俺の仕事は楽になる。で、お前はどこから来たんだ?」
とりあえずペンチは置いてもらった。やさしいなぁ。
「...多分この星じゃないどこかだよ。多分。俺にもわからん。」
バァンと机が男に蹴り上げられて机がジャンプする。痛そう。机さんが。
「大きい音立てないでくださいよ怖いなぁ...」
「なら正直に言え!!どこから来た!?魔王領か?!」
やっぱり優しくないわこのおじさバァンと机が男に蹴り上げられて机がジャンプする。痛そう。机さんが。
「おじさんじゃねぇお兄さんだ!!!」
「なんで分かるんです?!」
「口に出てたぞ!!クソが!!!」
バチンとビンタで俺のほほを物理的に赤く染めるおっさバァンと机が男に蹴り上げられて机がジャンプする。痛そう。机さんが。
「おっさんじゃねぇお兄さんだ!!!」
「なんで分かるんです?!」
「口に出てたぞ!!クソが!!!ふざけやがって!!」
「いや、本当に少なくともこの地域出身ではないしここを知らないんですよ。信じてくださいよおっ...兄さん。」
「おぅ、これ以上白を切るようならお前の嫌いなペンチを使うぞ?尋問権発動するぞ?」
「白を切るというか最初から白ですよ...勘弁してくださいよ本当に...」
おっさ兄さんはにやりと笑って無言でペンチを俺の指元に...。
バンと取調室の扉が開かれ、現れた若い兵士が叫ぶ。
「敵襲です!!!敵騎およそ50!!!」
「...なるほどこいつを奪い返しに来たのか。よし!!殺るぞ!!!」
そう言って俺を置いたまま彼らは去っていった。
建物の中が騒がしくなってきて、なぜか何かの動物の鳴き声と羽ばたきが風を切る音が聞こえる。
ドタドタという足音の中には彼女のものもあるのだろうか?そんな事より、俺は何とか劣化した椅子の足の角で縄を踏んで力いっぱい引っ張って劣化していた縄を切ることに成功した。
さてここから出て行こうと慎重に、そして大胆に忍び足で空いたままの扉から飛び出して廊下を走っていると突き当りにドアが見えた。
俺はドアの向こうからなぜか聞こえる男の叫び声を気にせずに扉を開けた。
そこは防壁に囲まれたあの忌々しい砦だった。しかも更に悪いことに、どうやらここは今まさに戦場になっているようだった。
肉が燃える臭いが鼻を突き、砦の梁がバチバチ燃えていた。
「...えぇ...」
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