アクションヒーロースーツアクター
ゆでたま男
第1話
緊急を知らせるベルが鳴った。
朝桐純は、モバイルモニターを取り出す。
「スーパーライダー、大変よ。怪人デンデコデンが街で暴れているわ」
画面に映し出されているのは、人口知能でしゃべる妖精フジコだ。
「何だって!すぐに行く」
朝桐は、バイクに乗った。
「怪人デンデコデンめ!街の平和は俺が守る」
「デンデンデコデン。お前がスーパーライダーか。邪魔をするな」
「とぅぉー」
朝桐は、スーパーライダーに変身した。
スーパーライダーパンチ。
「うわっ」
スーパーライダーキック。
「うげぇっ」
スーパーライダーボディースペシャルプレス
「やられたー」
怪人デンデンは、爆発し、くだけ散った。
「こうして、今日も街の平和が守られたのだ」
「何がスーパーライダーだよ」
午前8時。
牧野はコンビニ弁当を食べ終えると、リュックを持って家を出た。
牧野は、なんとか大学に入学したものの、
これといって打ち込むものもなく四年間を過ごし、同級生の白石には好きだと言えず、
就職試験には失敗。
仕方なく始めたのがスーツアクターのバイトだった。
もちろん熱意などあるわけもなく、
何かしら怒られている毎日だった。
その日も、段取りを間違えて、怪人のパンチが見事に顔に当たり、子供に笑われた。
30分のステージを終えると、楽屋でスーツを脱く。
「おい、しっかりやれよ」
朝桐役の男が言った。
「はい。すみません」
と、頭を下げた。
着替えて、帰ろうとしたとき、ベルが鳴った。あのモバイルモニターが緊急を知らせる音だ。
「あれ?なんで勝手に鳴るんだ」
それは、ショーの時にスタッフが鳴らす仕掛けになっている。勝手に鳴るはずがないのだが。
牧野が手に取ると、画面に妖精フジコが映し出された。
「大変よ。怪人 が暴れてるわ」
「は?なんだこれ」
「なんだこれじゃないわよ」
「え!聞こえるの」
「当たり前でしょ」
「だって、いつもは、決められたセリフしか喋らないのに」
「なに言ってるのよ。早くスーツを来て」
「いや、でも契約時間ぶんしか時給出ないし」
「バカ!これは、バイトじゃないのよ」
しぶしぶ、スーツを着た。
「なんだあいつは」
「あれが怪人オニヒトデンよ」
「あんなの倒せるわけないじゃん」
「なに弱気なこと言ってるのよ」
「だって」
「オニヒトデン、こっちよ」
妖精フジコは、大声を出した。
「なんてことすんだよ」
オニヒトデンが向かってきた。
「オニオニ」
「スーパーライダーパンチよ」
「え?なにそれ」
「パンチを打てばいいのよ」
牧野は、パンチを打ってみた。
見事にオニヒトデンは倒れた。
「とどめは、スーパーライダービームよ」
「何だよそれ、やったことないし」
「お尻を突き出すのよ」
妖精フジコは画面の中でやって見せた。
立ったまま内股で腰を90度曲げ、両腕を前に突きだしている。
「嫌だよ、そんな格好するの」
「バカ!地球がどうなってもいいの?」
「そう言われると」
牧野は、勇気を振り絞りお尻を突きだした。
「スーパーライダービーム」
すると、お尻からビームが放たれ、怪人オニヒトデンは、爆発と共に消滅した。
「やれば出来るじゃない」
「う、うん」
それからと言うもの、牧野は地球を救うべく、いろんな怪人を倒し続けた。
そんなある日、また、緊急を知らせるベルが鳴った。
「怪人ミラミラミーラが現れたわ」
妖精フジコが騒がしい。
いつものように現場に着くと、牧野は驚いた。彼女がいたのだ。
「白石さん」
「あ、スーパーライダー。助けて」
「まかせたまえ」
牧野は、スーパーライダーパンチを繰り出したが、まったく効かなかった。
スーパーライダーキックも効かなかった。
「そんなもん効かんミラ」
「こうなってら、スーパーライダービーム」
渾身のポーズをかました。
怪人ミラミラミーラは、そのミラーでビームを跳ね返され、牧野に命中して倒れた。
スーツはぼろぼろになり、マスクが破れ、顔が見えてしまった。
「牧野君だったの!」
白石は、駆け寄った。
「ゴメン、君を守りたかったが」
牧野は気を失う。
「私が牧野君を守る」
「年貢の納め時だなスーパーライダー」
白石は、近くの店のショーウィンドーに飾られた、人気アニメ魔法少女ピムリンのコスプレ衣装を見つけた。
「ちょっと、待って」
「なに!」
走って衣装に着替える。
5分後
走って帰ってきた。
「なんだそのへなちょこな格好は」
「へなちょこじゃないわ。人気アニメ魔法少女ピムリンのコスプレ衣装よ」
白石は、呪文を唱えた。
「ピムピムリンリンピムププリン時間よ戻れ」
「あれ?」
牧野はもとに戻っていた。
白石は、呪文を唱えた。
「ピムピムリンリンピムププリン鏡よ曇れ」
鏡が曇った。
「今よスーパーライダー」
「よし!スーパーライダービーム」
見事にビームは
「そんなバカな!」
怪人ミラミラミーラは爆発して消滅した。
「君は」
「私よ」
白石は、ベネチンマスクをとった。
「君は、白石さん」
二人は強く抱き合った。
完
「って言う話はどう?」
牧野は隣の白石に聞いた。
「え、つまんない」
ここは、とある大学の部室。
漫画研究会の一コマだった。
アクションヒーロースーツアクター ゆでたま男 @real_thing1123
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