File:9 Go with The Wolf(2)

 降り立ったは良いものの議事堂通りは、いつもの景観の跡形もない荒廃した状況に変わっていた。

「これもアイツの仕業か、おっそろしいもんだなタイプFの力ってのは。」

「ほんとに今回のって2級なんですか?1級の間違いじゃないんですか…?」

 超常的な力を持つとはいえ、これが2級で収まるとは思えない。何しろ目の前が世紀末状態だ。

「さぁな、そう書いてあるならそうなんだろ?」

「ええ……」

 特に意に介していないような様子の照井を見てゲンナリしかけていると、突如。

「危ねえ!」

 と照井が叫び、突き飛ばされた。直後、低く唸るような音と、何かを弾いた様な音が聞こえた。

「照井さん!?」

「安心しろ、そっちこそ怪我はねえか?」

 照井の方を見ると、身体を覆うように丸いバリアを展開している。

「いえ、特に。」

「ならオーケーだ。」

「今のは一体?」

「さてな、ただ原因は一目瞭然だ。」

 そういうと照井は旧都庁の方を指差す。

「あれが…」

「今回の対象、ってことだな。」

 そこに見えるのは、禍々しいオーラを放つ翼を生やした人型であった。それを認識した瞬間、脳に直接声が響く。

『貴様らが超能力庁の狗か?』

「聞くまでもねえだろ、不意打ちしてきたくせに。」

 照井は虚空に喋りかける。四澤には届いているのだろうか?

『立ち去れ、命だけは助けてやる。』

「嫌だ、と言ったら?」

 返答は無く、再び低く唸るような音が響く。四澤の方を見ると、黄色い閃光のようなものが迫ってくるのが見えた。

「言葉で返す気がないのかねえ…」

 照井は文句を言いながら、先ほどのバリアを再度展開し相殺する。

「破堂、今のは見えたか?」

「はい、はっきりと。」

「よし、なら次はお前の能力で防いでみろ。」

「へ?」

 まるで「見えたならできるだろ?」とでも言いたげな風にあっさりと言われる。

「いやいやいやいや、そんな簡単な話じゃないですって!?」

「見えてるんならいい実戦練習になる。聞いた話じゃあ銃弾を壊して防いだんだろ?」

「いや、まぁ…」

 あれができていた時の自分は自分ではなかったというか、よくわからない状況だったのだが…

「オレの『気』は有限でな。使い切ると…」

「使い切ると?」

「とても疲れる。」

「つかれ…」

 ずっこけそうになるが、なんとか取り直す。なんかもう少し重大な何かがあるのかと思ってしまった。

「だから能力の使い勝手が良さそうなお前に任せたいってわけだ。」

「で、でも…」

「悩んでる暇はねえぞ、多分そろそろ次弾が来る。」

 照井が言い終わった瞬間、また低く唸る音が響く。

「ほら来たぞ!」

「ええっ!?」

 閃光が迫ってくるのが見える。おそらく当たれば死ぬ。それだけは絶対にいやだ。

「もうどうにでもなれぇ!」

 両手を閃光の位置にかざす、精一杯足掻くことしか自分にはできないのだ。

 閃光に手が触れた瞬間、高温が伝わって来て片手をはなしてしまった。

「しまっ……」

 やられる。と思い目を閉じるが、特に何も起こらない。目を開くと、膝や靴の上に粉々になった閃光の欠片が降り注いでいた。

「うん、上出来だな。」

「これで…ですか……?」

「十分イケてたぜ、これなら大丈夫だ。」

 照井はサムズアップしている。こっちは死ぬかと思ったのに。

 防いだ手は少々ヒリヒリしていた。やはり能力で熱などは防げないらしい。

「第4撃が来る前に少しでも走るぞ。旧都庁まで行って奴を直接とっちめなきゃな。」

 照井はさっさと走り出した。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!!」

 慌てて自分も走り出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る