File:4 A Man of Mass Destruction (4)

 先に中に入った電童に促され、思い切って中に入る。

 部屋は以外にも広い、イメージするなら出版社の編集部ぐらいの広さだろうか。

 しかしながら広い部屋を電子機器やら大量の本やら個性の強い物品が埋めつくしており、極彩色のぶつかり合いとでも言うべきカオスを形成しているせいで狭く感じる。

「今日は俺含めて3人しかいないが、本来ならあと3人いるから会った時に挨拶をしておくといい。」

 電童はそう耳打ちした。置いてあるモノだけで個性が強そうで、これからが不安になる。

れいつづりいるんだろう?早く出てこい。」

 電童が奥に向かって呼びかけると、「はーい」と変人が返ってきて、二人の人間が奥の方から現れた。

 おそらく零と呼ばれた方は、日に当たって無いのかと思えるほど白い肌をした青年で、服装もまだ暑いのにも関わらず長袖のTシャツを着ている。Tシャツには幾何学模様が描かれていて、ちょっと目に痛い。

 綴と呼ばれた方は少々猫背気味な女性で、服装は明治大正期を彷彿とさせる和洋折衷な服装をしている。あと手だけでなく体のあらゆるところに本を持っているのがすごく気になる。

「こいつらは元次もとつぐ れい秋鏡ときかがみ つづり。ウチの中でも群を抜いてクセが強いから気をつけろ。」

「電童、新人に僕を怖がらせるような紹介の仕方はやめてくれ…」

「電童さんにはもう少しデリカシーというものが無いんですか?」

 そう紹介された2人は不服そうに訴える。

 服装からして多分物語的には序盤に会う人間では無さそうだ…

「それで君、名前は?」

 零が聞いてくる、確かに挨拶をしないのは失礼だ。

「き、今日付けでこの課に入ることになりました。破堂 甲矢です。」

「僕は元次 零、能力は……まぁいずれ知るから言わなくていいか。よろしく。」

 淡々と自己紹介をして零は奥へと消えて行ってしまった。なんとも読めない人だ。

「私は秋鏡 綴、能力は『言霊』です。これからよろしくお願いしますね。ところで貴方は本を嗜んだり・・・」

「綴、今日はステイだ。時間が惜しい。」

「わかりましたよぉ…、機会があったら4時間ぐらいお話しましょうね〜。」

 話を遮られたのを残念そうにしながら綴も奥へ戻って行った。

 このまま付き合わされていたらどうなっていたのだろう…

「本当にクセが強い人達ですね。」

「アレがウチの中でも異常なだけだ、誤解するなよ。」

「はぁ…」

「あいつらは今日は関係ないから名前だけでいい。まずはお前のスペースを確保する事だ、着いてこい。」

 電童に案内され奥に奥に進んでいくと、ポツンとそこだけ空白のように何も無い一角があった。

「ここがお前のスペースだ。他の奴らのように好きに飾れば良い。」

「結構広いんですね?」

「まぁちょっと事情があってな。いずれ教える。」

 これもオーバーズ絡みなのだろうか?と思いながら渡された資料を机に置き、引き出しなどを確認する。

「この後は教育を兼ねていきなりだが俺と来てもらう。外で待っているから終わり次第来てくれ。」

「随分といきなりなんですね?」

「あの人に教育の為にと仕事も押し付けられたんだ、休日がパーになった…」

 電童はボヤきながら去っていく。少々可哀想な気がする。

 資料をなくさないように引き出しに入れ、付いていた鍵をかける。

 服やら靴やらを軽く整え、人の物にぶつからないよう机と机の隙間を慎重に通り抜ける。

 時間がかかりようやくドアにたどり着く。不便すぎる、あまりにも不便すぎる。

 息を切らして外に出ると、電童が事情を察したような顔でこちらを見ていた。

「何があったかは言わなくてもわかる。あれも新人が通る道だ、慣れてくれ。」

「火事とか起きたらアレどうするんです?」

「蹴り飛ばしてでも行け。」

「ええー…」

 そんな会話を交わしながら、エレベーターに乗り込んだ。

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