異世界生活・18日目

壮麗でありながら、力を失った女神像を見ていたら、涙が自然と溢れました。

何故だか分かりませんが、寂しさと虚しさとが胸いっぱいに広がります。導かれるように女神像の真下まで進み、膝を付きます。


目を閉じて手を胸の前で組むと、王都で見かけた光景が浮かび上がります。そして、クローウッドや巡礼の旅で出逢った人々の笑顔。

どうか、王都の人々にも笑顔になって欲しい。あの優しい人達のように。


胸の奥から温かいものが溢れてきます。

どうか、どうか幸せに。誰もが笑顔で過ごせますように。陰で苦しむ人が出ませんように。悲しむ人が出ませんように。女神像にお祈りし、日々を過ごし、一日の感謝を祈りに来る。そんな穏やかな時間が誰にも訪れますように。


そんな事を願いながら、祈りを捧げていたと思います。とにかく、胸に溢れる思いを捧げていると、足元から暗いナニカの気配を感じました。


ジワリジワリと身体に纏わりついてくるようです。ネットリとしたナニカが触れるたびにパチリと弾けます。


パチリ

パチリ


弾けるたびに苦い思いが聴こえてきました。

「つらい」

「くるしい」

「いやだ」

「いたい」

「くるしい」

「くるしい」

「くるしい」

「くるしい」

「いたい」

「いたい」

「いたい」

「いたい」

「いたい」

必死な叫びが聴こえます。


それでも、私は必死で祈り続けました。この暗いナニカが救われるように。

何故かは分かりませんが、きっとこれが女神様の望んだ事なのだと思いました。


ナニカはずっと苦しいと叫び続けています。

そして、私の周りで弾けて消える。それは永遠に続くかと思えました。消えても消えても、すぐに溢れ出てきます。


そのうち、もっと大きな塊となって私を包み込みました。

苦しいと痛いと辛いと、暗い想いが全身を包み込みます。もはや、腕の感覚も足の感覚もありません。ただ、想いだけがその場にありました。


「どうか救われますように」

それだけを必死に祈り続けます。その気持ちだけが唯一光を放っていたように思います。その光を消さないように必死に祈り続けました。


そして、女神様の声が聴こえました。


「あぁ、そこにいたのね」と。

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