死んだ、死んで、死んでいく

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 人が死んだ。


 目の前で死んでいる。


 また、死んでいく。


 次から次へと、死の連鎖が止まらない。






 どこかの酔狂な、頭のおかしい、ちょっとネジの外れた科学者が、人を狂わせる病を開発した。


 その人物は、性格も頭もおかしくても、そこそこに優秀な科学者だったらしい。


 だから、どこかの国の中心部で、潤沢な研究資金を使って好きな事を研究できたようだ。


 けど、それは人の為になるものではなかった。


 とても優秀だったらしいけど、人間的にはどうかしていたから。


 人を狂わせる、だなんてそんなおそろしい病をつくりあげてしまったのだろう。


 その手の専門家や研究者が時折り見せる、異常な探求心を発揮したのか、それか世の中に対する知らない憎悪があったのか。


 理由は分からないが、その人物は研究して、成果を残した。


 最初の犠牲者になったのはもちろん、生みの親であるその科学者だ。


 病の特徴である殺戮衝動に侵されて、同僚やら上司やら部下やらを瞬く間に骸に変えていった。


 その様は、一日中部屋の中にこもっている研究者にあるまじき、動きだったとか。


 件の病には、殺戮衝動を引き起こすだけでなく、人を興奮させて、普段は眠っている潜在能力を引き出す力もあったらしい。


 治療法を知っていたのももちろん科学者だけ。


 だから、病の存在を知らない時期に、ただの凶悪犯として警察の放った銃で倒れた後は、世界中で地獄絵図が描かれた。


 犠牲者の発生は、歯止めがきかなかった。


 治療法は何もすすまず、特効薬なんてものも存在せず。


 たくさんの場所で、多くの人が狂って殺し合った。




 赤い色が舞う。


 今、死んだ。


 血しぶきが待った。


 もう、死んでる。


 鮮血が噴き出している。


 きっとすぐに死んでいく。


 血の華が咲く中で、狂気に落ちていく思考を感じるのは安心感。


 どこかで、誰かが同じような目に遭っている。


 そう考えると。


 こんな狂った世界に一人で取り残されるよりは、皆と一緒に狂った方がよっぽどマシだと誰もが思った。


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死んだ、死んで、死んでいく 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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