偏屈無職と空想少女のリアルワールド

無駄職人間

無職は終わらない プロローグ

 七月中旬も過ぎ去り、僕の無職生活が三か月を迎えようとしていた。


 世間では今年一番の猛暑と盛り上がっているが、就活もしない僕は家族からの冷たい邪視を浴びながら、リビングでゴロリと寝ている。ゴロリと言ってもNHKのとは寝てないからな。


 勘違いされては困るが僕はケモナーではない。僕は生粋のストレートであり、ノーマルな人間なのだ。


 小学生の若さで拾ったエロ本で熟女モノを知り、中学には同級生の未亡人に初恋をし、高校の時は昼下がりの団地妻に魅了され、大学では民俗学的なエロスの学問に励んだ。そして現在、無職の僕は真っ当な人間として、小さき幼女達を変態日本人から守るため、日々通学路に出没する。


 こんな紳士的で独立独歩の恥のない矜持があるのに社会から追い出されて無職の座に身を落とされるなんて、世界は間違っている。僕は変態紳士でも、ロリコンでも、人間のクズでもない!


 いい加減にしろ!


 こんな不名誉な称号を返上できる切っ掛けがないかと、毎日散歩をするも何もイベントは発生しない。まるで僕の青春時代そのものだ。


 部活も入らなければ学業も頑張らない。授業が終われば即帰宅して孤独にゲームをする。


 まさに青春とは正反対だ。その結果、僕の将来は決定したのも同然だ。


 部活をしなかったから、人との距離感や常識を得れず。勉強しなかったから、バイトの筆記試験で落とされ。ゲームばかりしても、それが活かされた経験は現状ひとつもない。


 おかげさまで社会に出たら、もう怪獣級に大惨事だ。場に馴染めず、空気を読めない発言をし、簡単な作業ですら真面にできない。毎回、履歴書を書くたびに長所が減っていき、短所ばかり増えていく。そもそも長所なんて最初からあったのだろうかと、存在自体が危ぶまれる。見つけたらそれは徳川埋蔵金並みの大発見だ。


 まったく無能な人間は存在しないとネットには書かれてあるが、おそらく僕が完全無欠の無能人間第一号なのだろう。でも、それはそれで学術的に貴重ではないだろうか?


 だとしたら、僕はパンダと同等に保護して貰う権利を主張すべきだ。毎日、食っちゃ寝して子供が出来たら、育児放棄して人間様が勝手に育ててくれる。


 ああ、保護生活受けて、甘えた人生を送りてぇ・・・・・・。


 でも、僕はパンダみたいに可愛くないし、頭部も禿げてるから、そのビジュアルからは河童に近い。なので、どちらかというと保護よりも退治されそうだ。


 全く、どう転んでも僕に厳しい世界だぜ。


 そんなこんなで今日も何か良いことを求めて、世のため幼女のため散歩に出かけよう。


 じゃないとストーリーも進まない。


 えっ、僕のは既に終わってる?




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