リアル・ゲーム・コンヒューズ
沖田鰹
【プロローグ】全焼戦1
近年、話題沸騰中のフルダイブ型VRMMORPG、通称【
仲間達と世界に蔓延る凶悪なモンスターを討伐しに行くもよし。
壮大で広大無辺な世界を自由気ままに冒険するもよし。
農家や自営業、町外れの山小屋などでまったりとしたスローライフを送るもよし。
現実世界とは別の、『もう一つの仮想空間による(美しい)景色』をコンセプトに展開される、オープンワールド型のVRゲームだ。
そのクオリティは非常に高く、グラフィック、やり込み要素、ゲームシステム、ワールドマップの規模、多種多様なイベント等々、筆舌に尽くし難い程存在する。
まさに、今のゲーム界の覇権を握る超人気作品だ。
そして何より、【
初回アカウント作成時に心理テストのようなものを受けさせられる。
自己の性格や
プレイヤーはその自分の
*****
そこは、この【V・V】の世界で最難関とも称される三大ダンジョンのうちの一つ、【
洞窟最奥のラスボスステージ。
未だかつて、誰一人として攻略者のいないこのダンジョンの最後の層である第100層:《破壊への頂戦》ステージ。そこで立ちはだかるのが、
凶悪な
全ての攻撃が致命傷の一撃に加え、その防御力と耐久性はバグかと思えるほどに硬い。桁違いの素早さに、HPはほぼ底無し。
本当に誰が勝てるのかと思わせるこのチート級モンスターに現在、たった一人の少女が挑んでいた。
その少女の名は、《アイポイ二クス》。通称『アイポイ』。
腰あたりまで伸びた淡い白髪に、顔は可愛らしい
身長3メートル強、魔人という名に相応しい形容でパンチの効いたデザインのディアベルクに対し、正対するアイポイは幾分か
……がしかし、幾人もの挑戦者が挑み、1ゲージすら削ることのできなかったディアベルクのHPが今、3ゲージ目の9割減。残すところ3センチ程度の赤いラインのみだ。
小さき少女があとほんの少しで、前人未到の【魔戒裂境】完全制覇を成し遂げようとしていた。
だが、アイポイの方にももう余裕はない。ゲーム内なので身体的な疲労は問題ないが、精神的な面での疲労により細かなミスなどプレイへの支障はかなりのものだ。
「ぐッ!!!」
ディアベルクの攻撃パターンを数ドットでも見誤れば、今のようにすかさず強力な一撃をお見舞いされる。
運よくワンパンは避けられたが、そのダメージはHP9.5割減の致命傷。最後の〔回復キット(大)〕を使用し、入念すぎるくらいに用意して来たアイテム類も完全に底を尽きた。
さらに、ここに来て追い討ちを掛けるようにディアベルクの防御力が1段階増し、攻撃力不足となってしまう。
「ああー、まじかよ」「コイツ反則だろ!」「まさか、ここまで来て負けないよな?」「アイポイー、頑張ってー!」
その光景をライブ映像で見ていた視聴者達は、この緊迫した最終局面をただ息を飲んで見守ることしかできなかった。
ディアベルクの攻撃を精密に躱し、ミクロ単位でしか入らない攻撃のヒットアンドアウェイ。
ここまでの戦闘時間は、およそ5時間半。もうすでにアイポイは限界をとっくに通り越し、いつ緊張の糸が切れてもおかしくない状態だった。それまでになんとか、一刻も早く決着を付けなければならない。
最後の頼みの綱は、もうすぐ溜まるであろうアイポイの最終奥義:〈ザ・アルカナ〉。俗に、必殺技と呼ばれるものだ。
自身の体力と引き換えに炎による攻撃力と、風によるスピードを大幅に増幅させるまさに、一発逆転の最後の奥の手。
これが最後のチャンスだと、アイポイはその時が来るまで精一杯時間を稼ぐ。
そして、視界の右端。ザ・アルカナが溜まった事を知らせるUIに、胸の奥底の
「神の
刹那、翼が
満タンだったHPは一気に1割も満たなくなるほど減少し、その体力はもはやディアベルクと同じかそれ以下。
しかし同時に、攻撃力とスピードは今までの5倍以上となる。
「ここで決める!」
そう言って勢いよく駆け出したアイポイの速さは、さっきまでとは比にならないほどだ。視聴者達はもはや眼で追うことができず、ディアベルクでさえも辛うじての反応。
咄嗟に防御態勢を取るが、それはまさしく
圧倒的な攻撃力により、ディアベルクのHPは2センチほど減少。
「あとちょっと!」
さらに休む暇も与えず
「フッ、オモシロい」
アイポイの攻撃が自身に通用すると察したのだろう、それならばとディアベルクも勝負に決する。
両手を地面に付け四つん這いの態勢で構えると、そのツノから黒光りする稲妻が微かに
その稲妻は、次第に3本あるツノの中心に収束していき、やがて黒き
「ギュルルルルララララララアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!!」
ステージ全体に
遠距離ならディアベルクに分があると思われたが、否。アイポイは目一杯息を吸い込むと、その小さな胸を最大限に膨らませ、黄金の火炎ブレスで応戦。
黒き
やがて、二つの力は相殺されるように爆散。今度は辺り一面を土煙が覆う。だがその中で、素早く動く影が一つ。アイポイニクスだ。
お互い体力は、残り1。このギリギリの局面においてアルカナの効果時間が切れる前に勝負を決めると先に動いた。
目にも止まらぬ速さで
ディアベルクは途端、とんでもない速さで滑空し一瞬にしてアイポイの背後を取った。
(マズい…!)
誰もが目を見張り、おそらく破壊の魔人をも勝ちを確信した最高のカウンター。
………だがしかし、鳳凰巫女〈アイポイニクス〉はその八重歯をキラリと露わにし、小生意気な笑顔で存分に笑ってみせた。
ディアベルクがカウンターの一撃を放つほんの寸前、アイポイの腰から生えていた一本の尻尾が徐に動き出し、無防備な魔人の胸を
_____
訪れた一瞬の沈黙のあと、残り僅かだったディアベルクのHPゲージが全部なくなり0となる。
ド派手な演出や、高らかなBGMはなかった。
ただ静かに、ディアベルクは細かなライトエフェクトとなり霧散。目の前には、簡素かつシンプルなUIとフォントでただ一言『
その代わりに………、
「「「ウオオオォォォオオォォォーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!」」」
ライブ映像をリアルタイムで見ていた視聴者達から、これ以上ないほどの歓声が巻き起こった。
______
『3周年直前!【魔戒裂境】完全攻略耐久配信』と、銘打って始まったこのライブ配信。
主である《アイポイch》はこの2週間、寝る間も惜しみぶっ通しで【魔戒裂境】のダンジョンを駆けあがり、ついに3周年を明日に控えた8月19日の今日、前人未到の完全制覇を果たしたのだ。
時刻は23時55分。3周年を迎える大型アップデートが実施されるまで、あと5分といったところだ。
そこから約1時間程度メンテナンスが入りログインできないため、制覇報酬をアイポイの口から明かされるのはおそらくメンテナンス後になるだろう。
「ここ2週間本当にツラくて…、厳しいコメントとかもたくさんあって諦めようともしたけど、それ以上に応援してくれるファンがいてくれて…、ぐすっ、ひっく、ここまで来れました。
………本当に、ありがとうございます!」
あと5分で配信の閉めとして、今回の【魔戒裂境】に挑んだ感想を
普段お淑やかでネガティブな事は絶対言わず、誰に対しても分け隔てなく天使のような優しさを見せるアイポイ。
しかし今回に至っては、その話題性も相まって人の心を持たないようなアンチ達にかなり酷いコメントの数々を送られ、さすがに
そんな苦しい中決して諦めずに達成した、おそらく過去一厳しかったであろう目標に鼻をすすりながら涙声での感謝。
その姿はファンのみならず、初見で見ていた人々、さらには心のないコメントを送っていたアンチ達、配信を見ていたすべての人に歓喜と涙腺の崩壊、金銭感覚をバグらせるにはこれ以上ないほどの効力をもたらした。
コメント欄は現在、喜び・称賛・高額な投げ銭の嵐。
凄まじいほどの興奮と熱気を残したまま時刻は深夜0時を回り、【A・V】内の全プレイヤーがメンテナンスのため強制ログアウトとなった。
*****
「ふい〜」
VRの世界から戻って来た俺は、頭と腕に装着された仮想ゲーム世界【V・V】へダイブするためのダイブハードを外し、今さっき目の当たりにした偉業の余韻に浸るように一息ついた。
今日の配信も、とっても良い内容だった。
そのAAは白髪・ロリ・巫女とかなりの属性を有していて、性格はとても慎ましいやかなお姉さん。かに思われがちだが、ポンコツで子供っぽい一面もある。
加えてその見た目からは想像もつかないほど高い戦闘能力を持っており、今まで数々の難易度の高いチャレンジを配信で成し遂げて来た。最近そこそこのファンが付き、人気が出てきたV・V
かく言う俺も、そんなアイポイを応援するファンの1人であり、彼女の配信だけがこのつまらない人生の唯一の生きがいと言っても過言ではなかった。
アイポイの嬉しそうな顔と今回成し遂げた偉業に満たされた俺は、横になっていたこともあり急な睡魔に襲われる。
メンテナンスが終るまで暇だし、仮眠がてら一時間ほど眠る事にした。
_____
とある事情で塞ぎこんでしまい、現実から目を背けるように自分の部屋へと閉じこもりゲームの世界に逃げ込んだ俺は、昔、当時まだ無名に近かったアイポイchと偶然【V・V】のイベントで出会い話したことがあった。
もう
そんな悩みを聞くと彼女は、驚くほど落ち着いた声と柔らかい笑みでこう言った。
「そういうの、分かります。心の中で思ってる事と、実際にやっちゃう行動って相違しちゃう事が多いんですよね。
こんな事したかったんじゃないのに。とか、こんな事言いたかったんじゃないのにって、いつも後悔しちゃったり。
………でも、そういうのっていつか本当にやらなきゃいけない時、伝えなきゃいけない時が来ると思います。その時、絶対的な信念を持って逃げずに立ち向かう事が出来れば、それでいいと思います。
今はその準備期間みたいなもの、焦らずゆっくりやっていきましょう。………なんて、無責任ですよね」
その笑顔は眩しいほどに美しく、まさに鳳凰の祝福かに思えた。
結局今でも俺は、現実と向き合えず惨めに引き籠っている。
いつ来るかも分からない、本当にやらなきゃいけない時を待って………。
_____
そんな懐かしい夢を見て目が覚めた俺は、反射的にベッド付近に置いてある時計を見る。時刻は1時過ぎ、我ながら完璧すぎるタイミングだった。
おそらく、もうメンテナンスは終わっている頃だろう。
急いで傍らに置いてあったダイブハードを頭と右腕に装着し短く一言、
「DIVE・IN!」
その呪文を唱えれば、微かな駆動音とともに視界は虹色に明点。もう一つの美しい景色が広がるバーチャルの世界へとダイブする。
………はずが、
いつまで経ってもそうはならず、視界は真っ暗なままだ。
まだメンテナンス中かとも一瞬思ったが、それならば『ただいまメンテナンス中』という注意書きが視界上に表示されるはず。何の音沙汰なくただの真っ暗闇というのは、初めてだった。
(もしかして、壊れたんじゃないだろうな?コレ、超高かったんだぞ)
という少しの不安を抱えながら俺は、一応確認のためベットから起き上がりパソコンを起動。
SNSを見てみると案の定、俺と同じようにゲームにログインできないユーザー達が多数存在していた。
(サーバーダウンか?)
まあ、一度に大勢のユーザーがアクセスすればサーバーがその負荷に耐えきれずダウンするというのは人気ゲームでならあるあるだし、それは規模がデカイ大型アップデート後、新シーズン開幕直後なら尚更だろう。
大人しくサーバーが復旧するのを待つことにした俺は、そんな事より非常に喉が渇いていることに気が付く。しかし、部屋にストックしておいた飲料水達は全て飲み干してしまった。この突如としての異常な喉の乾きを潤すには、自室を出て一階のリビングに行くしかない。
「………」
正直、すごく嫌だったが。喉の乾きはどんどん加速していったため、仕方なくその扉を開け俺は何週間かぶりに部屋から出た。
_____
「…うわ」
キッチンへ行くとそこには、考え得る中で一番最悪なパターン。妹と遭遇してしまった。
高校生にしてよく引き締まっているが出るところがしっかりと出た健康的なモデル体型の体躯に、艶のある綺麗なロングの黒髪。クールな印象を受けさせる、大人びた顔立ち。才色兼備・成績優秀・
それにしても『…うわ』とは何だ、『…うわ』とは。
目も合わすことなく俺は手短に冷蔵庫を開けると、ペットボトルの水を手に逃げるように
「いつまでそうしてるつもりなの?」
そんな声が掛けられた。
「…さあ」
少し驚いたが、俺は振り返ることなく返す。
「私は、また一つ前に進んだよ」
(……?)
一体何の事だが分からないが、要は『自分はこれだけ頑張っている。お前はいつまでそんな底辺にいるんだ』と、俺の
……特にコイツに言われると、その『萎え』は一層強くなる。
「そりゃぁ良かったな。そのまま俺のことなんか忘れるくらい前に突き進んでくれ」
未だ、俺は顔を合わせない。
これ以上話せば、俺の心の奥底にある黒い感情が暴発しそうだったので、話は終わりとばかりにまた歩き出そうとすると、
「本当にこのままで良いの?このままじゃ……」
「うるせえなぁ!」
……嗚呼、ダメだ。
「父さん死んじまって、おばさんも寝たっきり。親戚の人らもお前なら大歓迎みたいな感じだったんだから、さっさとおばさんとそっちに行って、もう俺のことは放っといてくれよ!
………、元々血の繋がってねえ、家族でも何でもねえんだから」
……違う。
「それとも何か、劣等種を近くにおいて自分は優越感に浸りたいのか?」
………違うだろ。
「………」
俺の勝手な、醜い劣等感をブチまけた叫びに
「何それ?」
そしてここからは、
「自分の能力不足を他人の
およそ3年前までは日常茶飯事だった、兄妹喧嘩が始まる。
「お前こそ、いつまでも俺みたいな底辺のクソニートを『ああは絶対なりたくなーい』とか言って見下して、自分のことまともな人間だと思ってるバカだろ。
ピラミッドで言ったら、お前なんか最下層にいる俺の一個上くらいのランクだからな」
そこで初めて俺は勢いよく振り返り、正面から義妹を睨み言い返した。
「はっ、誰がアンタみたいな人間の悪い部分を全て集約したようなゴミ人間と、自分を比べなきゃいけないのよ。元々ランクが違いすぎて眼中にもないわよ」
「さっき『私は前に進んだ〜』とか、
「うわっ、何で知ってるの?キモすぎ」
「引き籠りは外とか周りの音や動きに敏感になんだよ。お前、俺とあんま変わんねえじゃねえか。自慢気にやってた事もどうせ、大したことないようなくだらない事だろ」
今まで皮肉交じりで余裕を見せていた義妹は、俺のその言葉を聞いて様子を一変。鋭かった目つきを一層尖らせ、それは激昂へと変わった。
「お前、ふざけっ……」
と義妹がそこまで言いかけたその時、手に持っていたガラスが勢いよく砕け弾け飛ぶ。
「痛っ!」
その一つの破片が腕を掠め、綺麗な肌に血が滲んだ。
「大丈夫か?」
咄嗟に心配の声が口から漏れ駆け寄った俺だが、数秒経ってそういえば現在コイツとは喧嘩中だったのを思い出し、何とも言えない気まずさを覚える。
相手の方もどうやら同じような感情に陥ったらしく、目を逸らし微妙な表情。
昔は大がつくほどの仲良しだった俺達は、しかし中学に上がった頃から徐々に仲が悪くなっていき、その顔を見れば今のような口喧嘩の嵐。
元の原因は間違いなく俺にあるのだが、思春期の頃というのは変なプライドが邪魔する所為か、『ごめん』という一言が中々出てこずそのまま相手への不満だけが溜まっていき、そんな中での父親の死に俺が塞ぎ込み引き籠ってしまったため、
別に心の底からコイツの事が嫌いというわけでもなく、さっきの口をついて出た言葉達も全部が全部本心ではない。そう思った俺は、この3年、少しは成長したと言えるだろうか。
お前やコイツではなく、実に久しぶりに口にする
「
こんな素直に謝罪することができるなんて、自分でも驚きだった。これも、心優しきアイポイを3年間応援して来た恩恵なのだろうか。
恥ずかしすぎて愛凰の顔は直視できないが、おそらく俺と同様に目をかっ開いて
「私も…」
そして何かを言い掛けたその時、_____ピンポーンと玄関のインターホンが突然鳴った。
「………、おいおいヤベエ、どうしよう?」
「どうしようって、アンタが無駄にデカい声で叫ぶからでしょう」
「お前の方がキィーキィーうるさかっただろ」
時刻はまさに、深夜真っ只中の午前1時半過ぎ。こんな時間に訪れてくる訪問者など、考え得る中では先の真夜中にしてはうるさすぎる口論から一つ。
ドンドンドンッ!
と今度はチャイムではなく、直接のドアを叩く音が鳴り響く。
おそらく、今あのドアの向こうにいるのは『うるさい』と苦情を入れに来た近隣の住人であり、俺たちはまたしてもどちらがうるさかったかと罪のなすりつけ合いで喧嘩目前。
「どうすんだよ?」
「そんなの、居留守に決まってるでしょ」
直前まで声が聞こえたのにそんなのが通用するかと思うが、苦情を入れに来る人間も暇ではない。こちらが決死の居留守で耐えていれば、そのうち諦めて帰っていくだろう。
その読みは正しく、2、3分ドアを叩いたあとその音は止み、嵐が去った後のような静けさへと変わった。
「……いなくなった。のか?」
「……たぶん」
そう俺達二人揃って安心しきったその時、それはまるでB級ホラー映画かのように安堵させてからの、凄まじい破壊音をたててリビングの窓ガラスが大破した。
「「!!??」」
「何だっ!?」と驚愕した俺が一番最初に頭に浮かんだのは、たった今苦情を入れに来た近隣住民が強行手段としてベランダからの侵入を試みたか、あるいは目には目を歯に歯をというスタンスで石などを投げつけガラスを破壊したという可能性。
だがよくよく考えてみれば、俺たちは普段からそんなうるさいわけでもないし、こんな風に苦情を入れられに来られたのも今回が初めてだ。
たった一回でここまでするか?と、その短気すぎる神経に逆に開き直り掛けていると。それは突然、
「居留守トハ、連れないナア。貴様達プレイヤーが来た時、我は逃げずにスベテ出迎エテ迎え撃ってやったというノニ」
少しノイズが掛かりドスの効いた、よくニュースで流れる犯人のような
その姿は……、
凶悪な貌に3本のツノを生やし、ゴツゴツとした赤と黒の強靭な人型の体躯。禍々しい翼と獰猛な爪を携え、タッパは優に3メートルを超える。魔人という名に相応しい悍ましき形容で。
名を………、《破壊の魔人:ディアベルク》。
見間違えるはずもない、【
「…ありえない」
すると、俺の隣で同じ光景を拝んでいた愛凰もまた、そう静かに呟いた。
「ゲームの世界だけに存在する我が、今コノ場にイるのがオカシイか?そうダナ。でもコレは夢でもゲームでもナイ。
………現実ダ!」
そう嬉々として告げると同時、ディアベルクはその厳つい指を前に構え一閃。
反応はおろか、目視することすらできなかった俺の身体を愛凰が身を呈して押し倒した事により、横切った攻撃は後ろにあった冷蔵庫を焼き払った。
一連の攻防が全て終わってから俺はようやくその事実を認識し、愛凰のおかけでその雷撃を何とか避けることができた事に気付く。
しかし、今の回避は奇跡のようなもの。おそらく次はない。
「頭が良く、回転も速い貴様ならもう薄々勘づいてるダロ?【V・V】にログインできず、異常ニ喉が渇く。感情の揺らぎによって破壊したコップに、今我がこの場にイルこの状況。
さあ。第二ラウンドと行こうカ、
混乱が頭を駆け巡る中でしかし、俺の耳は今ディアベルクが口にした名前を辛うじて拾った。
……アイポイニクス?
今この場には俺と愛凰、そしてディアベルクしかいない。
ディアベルクがそう口にし、俺にその心当たりがないとすれば名指された相手は一人。俺はその人物に視線を向けた。
大人びた端整な顔が、苦虫を噛んだように渋面を滲ませる。
少し経ってからその少女:
「DIVE・IN!」
途端、凄まじい熱風が愛凰を包み込むと、勢いよく渦巻いて、やがて四散。
次の瞬間、そこに愛凰の姿はなく、淡い白髪に巫女服を纏い、紅の翼を生やした鳳凰の巫女:《
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