第78話
ダンジョン産の作物の仕入れの話が纏まった後、畑以外にも果樹園や牧場を案内した俺達。そこでもやはり才は驚きを隠せずに興味深く観察していた。
「テオプアじゃ育てられない作物とかかなりあるな。もしかしここでなら何でも育てられられるんじゃないか?」
「まあ地質や気候とかは自由に変えられるから、それに近い環境のフロアを利用すれば育てられるかな」
灼熱から極寒、砂漠から樹海とあらゆる環境がこのダンジョンには用意されている。メリアスは色々と実験をしているが変異種なんかも量産できないかやっているそうだ。正直最強のフロアボスがやる事か?と思っているが本人は結構楽しんでいる様子。
「本当に何でもありだなお前の【ゴッドスキル】は」
「まあプログラミングで一から構築するのが難点だが」
万能そうで結構精密作業が多いんだよな。
単純な物や空間を設定するくらいならすぐにできるけど装飾や複雑なギミックも含めると色々と面倒だ。
「才の【ゴッドスキル】は結構便利そうだけど」
「まあ調べる事においては最強の【スキル】だな。相手を見ればステータスや過去の行動まで見れる。戦闘でも相手の動きや弱点が分かるのが強みだな」
相手の思考が読めるってのはかなり便利だよな。俺のよりも使いやすそうだし。
「まあ戦いよりも交渉とかに重宝しているけどな・・・相手が求めている物が分かるから取引がしやすいし、隠し事も看破できる」
「やっぱりお前もチートだろ」
俺がそうツッコミを入れた後お互いに何かがおかしくなり笑った。同じ異世界人だからなのだろうか今までため込んでいたモノを好きなだけ吐き出せたようで妙に気持ちが楽になる。
「なぁ光輝・・・ちょっと提案があるんだがいいか?」
「え?」
才が俺からある提案を聞いた後、俺は急いでダンジョンの主要メンバーを会議室に集めた。
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「さて・・・ゾアはテオプアにいるから後で伝えるとして。皆集まったね」
地下44階層の会議室にはエイミィにゾアを除くフロアボス、ガウスとシオ・・・そして今回の会議のキーパーソンである才がいる。
才は会議室の風景に何か言いたい様子であるが今はスルーしておく。
グラムとメリアスは才の事を知っているから気にしていないが、それ以外のメンバーは興味深そうに才を見ていた。
「コウキ様、そちらの男性は?」
「ああ・・・彼は地天才。俺が行ったテオプア王国で世話になった人で俺と同じ異世界人だ」
俺が軽く説明すると全員興味深く才に注目するも、視線に慣れているのか才は緊張せずに自己紹介をした。
「初めまして、俺は地天才・・・女神・エイミィと同じ三大神のシンから加護を貰った者だ。現在はテオプアでギルドという組織を運営をしている」
「今回皆に集まってもらったのは彼からある提案をされて皆の意見を聞きたいと思っている」
「提案ですか?」
「ああ・・・このダンジョンを一つの国として立ち上げようって話だ」
『え?!』
あまりの展開に殆どの者が驚いた様子で目を見開いた。
「待ってください!国として立ち上げるってどういうことですか?」
「今回俺達がダンジョンの外の世界を見て来て色々と世間の事を知らない事を痛感した。そして学ぶべき箇所も色々とあった」
魔法具関連の技術力ならこっちが上だけど芸術面や生活レベルとかはまだテオプアの方が上だ。文化レベルもダンジョンはまだまだ未熟・・・そうとなればやはり他国との交流が一番だ。
俺がいた日本だって開国して様々な文化を取り入れて急成長を成し遂げた。
「つまりダンジョンを国として他国と繋がりを持とうというわけですか?それはあまりにもリスクが高いと思いますが」
ガウスが心配そうに言うが彼の言い分はもっともだ。せっかく88層のダンジョンを作ったのにその繋がりを利用してエイミィに危害を加えようとするなら本末転倒である。
「もちろんルヌプのような明らかにエイミィを狙う国と繋がりを持とうとは考えていない。信頼のおける国を厳選してまずはそこと交流を深めようと思っている」
以前エイミィから神狩りに声を上げて反対している国の事は聞いている。テオプアを含めまずはこの国と繋がりを持ちたい・・・できれば南の方にあるカグツチという国にもいつか異文化交流をしてみたいものだ。
「信頼できる国ですか・・・その保証はあるのですか?」
珍しくグラムは不安そうに言うがそれに答えたのはエイミィだった。
「グラム、信頼とは初めからあるものではありません。積み重ねてこそ生まれるのです。ただリスクを考えて行動を取らなければ信頼も何も生まれません。それにここには頼れるあなた方もいます。以前と違って私は本当に安心して日々を送れているのです。たとえ他国と交流を持とうとも私が不安に感じる事は全くありません」
エイミィの確信した視線を俺達に向ける。こう言われてはもう反論は出来ない。
グラムも納得は出来ていない様子だがエイミィの言葉を聞いてそれ以上は言わなかった。
「俺は今後色んな国々と交流を持って味方になってもらおうと思っている」
「・・・我々だけでは不十分なのですか?」
リンドは他のフロアボス達の気持ちをを代弁するかのように俺に尋ねる。
「戦力を考えたらフロアボス達は十分すぎる・・・ただ神狩りに参戦している国々への牽制は必要だと思っている」
イメージとしては国連のような機関を作れたらと考えている。
「この国で作られる作物や魔法具、ダンジョンの鉱石などはすでに才から太鼓判を押されている。国として交流を持てばこれらの物が自国にも渡るようになる。エイミィを狙って敵に回すよりも交流を選ぶ国も出てくるはずだ」
ダンジョンに宝があるっていうのも、ダンジョンの宣伝とエイミィから視線を逸らすことが目的だったし。
「俺の最終的な目標は神狩りなんてくだらないものを無くすことだ・・・エイミィや皆が平和に暮らせるようになるならダンジョンをただの砦としてではなく国としてやっていくのが良いと思う」
それがどれくらい時間がかかるものなのかは分からないし、とてつもなく大変な事なのだと理解している。
「・・・コウキ様のお気持ちは分かりました」
グラムが低いトーンで言い席を立つと他の皆も同じように立つ。
・・・もしかして皆呆れて辞めるとか言い出すのか?
最悪な展開を想像していた俺だったが、次の瞬間俺全員が一斉に片膝を頭を下げる。
『我ら一同、コウキ様とエイミィ様と共に歩み続けます』
全員の一斉の誓の言葉が部屋に響く。
「いいのか?正直これは俺の我儘みたいなもんだし皆をもっと振り回してしまうかもしれないよ」
「コウキ様はエイミィ様だけでなく我々を含めダンジョンに住まう者達の事も考えてくれての判断・・・むしろそれにすぐ気付けなかった自身が恥ずかしく思います」
グラムに賛同するように全員が頷く。
「ありがとう皆・・・それじゃ改めてよろしく頼む!」
『御意!』
っと皆の気持ちが一つになった所で才が話に割り込んできた。
「どうやら話は纏まったみたいだな」
「ああ・・・才のおかげでダンジョンは更に発展しそうだ」
「そうか・・・ところで国を立ち上げるわけなんだが国の名前は決まっているのか?」
『・・・・あ』
才の言葉に全員がハモったのだった。
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