第49話
ジョーと亜人達の救助に成功したエドワード達はナギ達を入り口付近で待機しているガウスの所へ向かわせ次の行動に移しだす。
「ジョーあまり無理はしないでください」
「あぁ?さんざん地獄を見せられてきたんだ、落とし前は俺が付ける!それにチビ共を助けるのは元々俺の役目だ」
「お前らやる気があるのは良いが、入るぞ!」
エドワードが扉を蹴り飛ばし入り込んだ部屋はナギ達に聞かされていた下位精霊達が閉じ込められている場所である。
「な!貴様ら何者・・がは!」
侵入した部屋にルヌプ兵数名がいたがジョーの炎で一瞬で消し炭となった。
「容赦ないですね」
「・・・お前だって同じことしてただろ・・・いたぞ!」
ジョーが精霊達が囚われているケースを壊すとすぐに魔力を精霊達に分け与えた。
「よしよし、お前らよく頑張ったな」
「これでここの任務は終了だ」
そう言ってエドワードがこの場から去ろうとした時、一体の下位精霊がエドワードの袖を引っ張り何か伝えようとしていた。
「・・・こわいまりょくの・・・あじんは・・・いない?」
「怖い魔力を持つ亜人?」
「・・・やぎのつのをもったあじん・・・たまにここにきて・・・あいつらと・・・はなしをしてた」
「山羊の角の亜人が・・・まさか、亜人の一人がルヌプを手引きしたのですか?!」
「あのあじん・・・すごくいやなまりょくした・・・こわい」
それを伝えると精霊達は怯えた様子でノバにしがみついた。
「精霊がこれほど怯えるなんて・・・一体どのような魔力を」
「・・・亜人・・・まさか」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一方光輝達は・・・
「俺の名前はザズムフ・・・・『災害の邪神』でも言えばすぐに分かるかな?」
目の前にいる灰色の肌に山羊の角を持った亜人は何を言った?
ザズムフだと?
「・・・おや?女神・エイミィからは何も聞いていないのか?それとも信頼していないから喋らなかったのか?」
奴の言葉にイラっと来たが言動からしてただの挑発・・・下手に奴の口車に乗ってはいけない。
「何のことだ?」
「しらを切る気か・・・思ったより忍耐力強いな。関心関心」
余裕の表情で俺達を見るザズムフ・・・この男からあふれ出る魔力はエイミィのに近いようで根本的に違う。
「さっき、手の平で踊らされているって言っていたけどあんたがルヌプ兵を集落に連れてきたのか?」
「おや?こっちの質問には無視しておいて質問かい?」
まあ答えてくれるとは思っていないけど。
「なら、答えてたくなるようにするまでだ!」
ザズムフの死角から攻め込むようにグンナルが刀でザズムフを襲い掛かるが彼を守るような結界でグンナルの攻撃を防ぐ。
「死角からの攻撃は悪くないが・・・」
ザズムフはそのままグンナルを吹き飛ばすがすぐさま別の攻撃がザズムフを襲う。
「吸血鬼の屍人族、巨大な狼に機甲人・・・ダンジョンは随分と物騒なのがいるな」
ボーロックとオウカの攻撃を防ぎつつサクが援護し、戻ってきたグンナルも再び戦闘に入る。
「コウキ様!急いでお逃げください!こいつは危険です!足止めは我々が」
サクが撤退を言うがここでダンジョンにつなげた場合。ザズムフがエイミィの所に行ってしまうかもしれない。俺一人だけならもしかたらと思ったが、後ろには亜人達が恐怖で動けない状態だ。
【精神強化】で感じにくくなっているがザズムフから溢れる魔力は俺が感じている以上に他の者にとっては恐怖なのだろう。
「フハハ!いいな!邪神相手に挑むか!だが!ヒトが災害に勝てるわけないだろが!」
ザズムフの叫びと共に黒い渦が現れグンナル達を吹き飛ばし、隠れて狙撃していたサクも黒い炎で吹き飛ばした。
こいつはヤバい・・・急いでエドを呼ぶか?だがあっちも戦闘中だったら・・・
「おいおい!戦闘中に迷いは禁物だぜ!」
ザズムフの黒い炎が俺を襲い掛るが・・・直撃した瞬間炎は霧散した。
「何?!テメェ何をした!」
驚いた様子のザズムフ・・・実は俺にはエドがかけてくれた何重ものバフがかけられていた。
正直かけすぎじゃないかと思ったが『念には念を』と言われありがたくかけてもらっていた。まさかエドの予想通りになるとは思わなかったが。
「っち!ならこれならどうだ!」
「【アクアレーザー】!」
「【フレイムランス】!」
「っち!」
突如襲い掛かる水と炎の魔法をザズムフは紙一重で避けると撃ってきた方角を見る。
そこには二人の上位精霊の姿があった。
「コウキ殿、ご無事ですか?!」
「おうおう、こいつ本当に亜人か?ものすごく嫌な魔力を感じるぞ」
ノバの隣にいる赤髪の男・・・おそらく火の上位精霊のジョーだろう。彼がここにいるという事は集落の方の作戦はうまくいったみたいだな。
「コウキ様遅れてしまい申し訳ございません」
そして俺の後ろに現れたのはエドとガウス・・・そして先ほど吹き飛ばされたグンナル達が満身創痍の状態で安置されている。二人の精霊が気を引いている内にエドが回収してくれたのだろう。
「皆!」
「回復魔法をかけてあります。命に別条はありません」
「良かった・・・集落の方は?」
「はい、下位精霊及び囚われた集落の亜人達は皆無事です。現在は転移門でランカの所へ送りました」
その言葉が後ろにいる亜人達にも届いたのか驚いた反応を見せていた。
「アルド?・・・何故君が?」
ガウスはあの亜人を知っているようで近づきながら必死に問いかけていた。
「アルド?・・・ああ、そういえばこいつの名前だったな」
「アルドじゃない?・・・誰だ君は!」
「誰だっていいだろ?」
ザズムフは黒い炎でガウスを攻撃するが俺の時と同じように霧散した。
「っち!こいつもかよ!」
そしてその隙にノバとジョーがガウスを引っ張って俺達の方へやって来た。
「ガウスさん!無事ですか?」
「あ・・・ああ。エドワード殿にかけてもらった魔法のおかげで無傷です」
どうやらガウスにも俺と同じ魔法をエドがかけていたみたいだ。
「エド、あいつは邪神・ザズムフって名乗っていた。多分今回の黒幕だ」
「ほう・・・あいつが・・・確かに嫌な魔力も感じるぜ」
「邪神・・・女神・エイミィ様達と対をなす存在・・・たしか封印されていたはずでは?」
ジョーとノバは少し驚いた様子でザズムフを見た。精霊でも邪神を見るのは初めてのようだ。
「封印されているよ。俺はセフィロトとの戦いで神核を失ったただ邪神の一部・・・残滓に過ぎない存在だ」
残滓?という事は本物ではないのか?
「亜人の身体に憑りついて、あのナギとかいうガキを監視していたんだよ。予想以上に危険だと判断してルヌプを動かしたわけだ・・・ちょうど精霊に敏感なやつがいたからな」
ナギを監視?
「ルヌプの奴らの精神を少し弄って色々とやらせたが・・・まあ見ていて傑作だったな」
「お前は何を企んでいる!」
「俺?俺は役目を果たそうとしているだけだ・・・世界の災いとしてのな」
ザズムフがそういうと、彼は空に向けて手を掲げる。
すると急に灰色の雲が集まり出す。
「長話に付き合うのは要注意だな・・・俺のとっておきをくらいな!天災!【
灰色の雲は巨大な渦となって俺達の方へ降りてくる・・・あれが降りてきたらマズイ!
俺は何かできないかと考えようとしたが、すでにエドが動き出していた。
彼の手には虹色に輝く杖が握られている。
【
地下33階層フロアボス、原初の魔術師・エドワードが愛用する武器。
無から有を生み出し、あらゆる理不尽を打ち破る。
というよく分からないテキストフレーバーが付いた武器。
考えたのは俺だが。
どちらかというと『理不尽を打ち破る』ではなく『理不尽を突き付ける』が正解のような気がするが。
「っは!ヒトが大自然の災害に勝てるか!」
「我はダンジョンを守護する存在!あらゆる害を退ける者!・・・再現魔法・・・【
エドが唱えた瞬間、雲の渦は一瞬にして消え去り、空は見事な快晴となった。
【
それは44階層フロアボス、天空龍・リンドが使う技。天候魔法の一つで雲一つない空へと変える魔法。本来リンドが使えば更なる追加効果があるのだが今回はエドが使用したことでただ空を晴らすだけとなった。
だが晴れにすることが目的であり最適解だ。
結果ザズムフの巨大竜巻は消えてしまったのだ。
「な!天候を変える魔法だと?!そんなの個人・・・しかも人間が出来るわけ・・・」
目の前の光景が信じられない様子のザズムフだが、その隙をエドワードは逃さない。
杖から放たれた光の矢がザズムフを貫くと黒い靄みたいなものがザズムフの身体から引き剝がされる。そして靄は次第に黒いネズミのような姿へ変えた。
「それがお前の正体か」
「っく!なんなんだお前は!なんだこの出鱈目な力は!」
ザズムフは悪態吐きながらエドワードを睨みつける。
「我は原初の魔術師・エドワード。ダンジョンを守護する者だ」
「っち!エイミィの奴こんな隠し玉持っていたのか」
ザズムフは諦めた様子で自分の小さな手を見た。すると彼の手は少しずつ塵となって消えていく。
「俺の負けだ・・・お前みたいなやつを相手にするには力が足りないようだな」
「今の貴様は本来の力ではないと?」
「言っただろ?俺は残滓・・・邪神の一部にすぎない。・・・こいつは俺の置き土産だ。俺を含め邪神の残滓はまだまだ存在する。そいつらが今何をしているかは分からないが、いずれ神核を取り戻しに動き出し世界に大きな災いを持ち込むだろう」
ザズムフは空を見上げた後エドワードを見て笑った。
「抗えってみせよ」
そう言い残し、ザズムフは塵となって消えた。
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