第34話
地下45階層
俺はゾアとエドを連れてエイミィに言われた通り封印具を持って島の中央にある大樹の近くへやって来た。
「いつ見てもデカいよな・・・設計した時はあまり意識していなかったけど明らかに地球では見ない樹だ」
まさに異世界の樹と言いたくなるような立派な樹を見上げると何か違和感というか空気が少し変わったような気がした。
「何だろう今の感じ?」
「なぁ、エドワードはん・・・なんかこの辺りの魔力濃度が異様に濃ぁなってへんか?」
「我も感じている・・・原因はおそらくあの大樹だろう。居住区とかに影響が出ないように結界が張られている」
2人は何かヒソヒソと話しているがよく聞き取れなかった。
「光輝来ましたね・・・エドワードとゾアもご苦労様」
大樹の麓にはエイミィ、メリアスとアルラがすでに待機していた。そしてエイミィの労いの言葉に2人はすぐさま跪く・・・こういうのを見るとやっぱりエイミィは女神なんだなと思ってしまう。
「それで、環境を作ると言っていたが何をしたんだ?なんか空気が変わったみたいな感じはするが」
「ええ、この大樹の機能の解放と溢れる魔力を結界で纏めているの」
「大樹からの魔力?・・・これ島のシンボル用に置いただけの樹じゃないのか?」
「はぁ、光輝・・・ただの樹がこんな巨大なわけないでしょ・・・これはユグドラシル、世間では『世界樹』とも呼ばれているわね」
ユグドラシル・・・北欧神話に登場する架空の樹か。ゲームとかでもよく登場する有名な樹だ。
「光輝、木は二酸化炭素と太陽光で何を生み出す?」
「え?酸素」
「そう、そしてこのユグドラシルは酸素と一緒に魔力も生み出す能力を持ちます・・・いうなれば永久機関でしょうね。もう少し待ってから解放しようと思ったのだけど状況が状況なのでさっき解放したわ」
「なるほど思った以上にこの大樹は凄い効果を持っているようだな」
俺がそんな風に感心していると後ろにいた2人は俺以上に驚いていた。
「っちょ!コウキさん、何のんきに言っとるんですか!魔力を無尽蔵に生み出す樹やで?!ある意味エイミィ様に匹敵するくらい重要な存在や!活用方法なんか数え切れんほど思いつくで!」
「ゾアの言う通りです。我も図書館で世界樹については知っていますが殆ど伝説上の存在だったはず」
ゾアとエドはそういうがコレメリアスのフロアにもあるんだよな・・・もしかしてメリアスのフロアにある畑が異様に育ちが良かったのも魔力の影響なのかな?そうなると他にも影響が出ないか心配になってきた。
「さて、話はこれで終わりにして精霊達を解放しましょう」
「そうだな、ゾア頼む」
「ほいきた!エドワードはんこっちの封印具に魔力を流してくれへんか?」
「了解した」
ゾアとエドがそれぞれ封印具に手を差し伸べ、封印具に魔力を流し込む。すると封印具が急に光り出すと弾けるように壊れ始める。そして壊れた封印具から小さな光の球が次々と現れた。赤、青、黄、緑、白、紫と様々な色の球が飛び散り、初めは弱弱しい光の球も徐々に光が強まっていく。ある意味幻想的な光景でとても魅力的な光景だった。
「どうやらこの辺りの魔力を吸収して回復できたようね」
光の球は徐々に色んな形へと作り変え、妖精のような人の姿になるのもいれば、蜥蜴や魚、鳥なんかに姿を変えていく。
「コレが精霊なのか?」
「ええ、と言ってもこの子たちはまだ下級精霊。そこまで強い力は行使できないわ」
精霊達は解放された事に気付くとすぐさま俺達に向かってお礼と言わんばかりに頭を下げる。精霊の数はざっと数えて20ぐらいでどれも下級精霊みたいだ。
「それでエイミィこの精霊達はどうするんだ?」
「そうね、一応精霊としての役目はあるけど今すぐ外に出すのはかわいそうですし・・・しばらくはここで保護するのはどうでしょう」
ルヌプの事や保護した元奴隷たちの事もあるし、今すぐ出すのは得策じゃないか。
「保護というが精霊が住む場所とかはどうするんだ?」
「食事と住処はこの樹で十分よ・・・魔力を放出するこの大樹なら精霊達にとっては常にご飯を出してくれるようなもの。住処もこの樹の辺りに自分で作るわ」
魔力を出す樹に群がる精霊達・・・なんか樹液に集まる昆虫見たいだな。
「食事は魔力だけでいいのか?」
「ええ、精霊にとってそれが生きるために必要なものだから」
「ふーん、じゃあこのクッキーとかは食べないのかな?」
俺は試しにメリアスが作ってくれた試作のクッキーを取り出した。以前、頭使うのに糖分が欲しいって言ったらメリアスがクッキーを用意してくれた。シンプルな一口サイズのクッキーだがこれが凄く美味しく、今では俺のおやつとしてよく食べている。ちなみにミーシャにも同じような事を言ったら怪しげな薬を渡されたのでそれは封印した。
精霊達は興味深そうにクッキーを見ていると俺は自分で食べてみせ無害であることを証明する。すると小人のような精霊がクッキーを欲しがっている様子だったので一枚渡す。
小人精霊は一口クッキーを食べると目をこれでもかってくらい見開き大はしゃぎしていた。
「嘘?!精霊が魔力以外で喜ぶなんて?!」
エイミィさん?素が出ていますよ?
エイミィだけでなくアルラも驚いておりどうやら精霊=魔力が好きという先入観を持っていたみたいだ。小人精霊はもう一枚とねだるとほかの精霊達も俺に群がってきた。
「はいはいまだあるから順番に!」
精霊達は俺のいう事に従いピタッと止まるのを見ると何というか可愛く見えてきたな。
ピコン
火の下級精霊6柱、水の下級精霊5柱、土の下級精霊4柱、風の下級精霊3柱、闇の下級精霊1柱、光の下級精霊1柱の契約に成功しました
・・・どうやら精霊はテイムじゃなくて契約のようだ。
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