第25話
地下45階層が出来上がった後、俺は早速その出来栄えを確認しに行った。
「うん、見事な無人島が完成しているな」
白い砂浜に見渡す限りの広い海・・・と言ってもこの階層にはこの島しかないから当然と言えば当然なんだが。
「空も問題なさそうだな、【天候系魔法】と【太陽系魔法】はしっかり作動しているみたいだな」
上を見上げると青い空に白い雲が浮かんでいる。俺がこのフロアでまず思いついたのがダンジョンの中でも外の環境に近づけることだった。だから外と同じように空には【太陽系魔法】を使って疑似的な太陽と月を作り出し、時間帯によって明るさを調整するようにした。
そして、雨や風も起こせるように【天候系魔法】も設定して、必要なときに雨を降らせたりさせることが出来る。俺が操作すれば一日中晴れとかにできるが、俺はなるべく外の世界に近づけるため天候はこのダンジョンがある場所と同じ設定にしてあるし、明るさも外と同じように自動調整される。
今は晴れているってことは外も同じように晴れているってことだ。
俺が景色などを確認しているとダンジョンの要人がやって来た。
「あら、中々いいわね」
「これは見事な島ですね」
エイミィ、アルラにフロアボス全員がやって来て、何人かは興奮した様子で周りを見ていた。
「あいつらをここに住まわせるのは少し贅沢な気がするな」
「コウキ様の慈悲深さをしっかりと理解させないといけないわね」
中にはダンジョンモンスター達の好待遇に不満そうな顔をしているのもいたが。
「別にフロアボスの家もここに建てれば良いんじゃないか?俺はそのつもりでいたが」
俺はそう言うと全員が目を丸くして一斉に俺を見た。
「コウキ様、我々の住居の事も考えていてくれたのですか?」
「まあ、メリアスの畑やゾア、ミーシャの研究所なんかもこっちに纏めた方が良いかなと思っていたし。せっかくなら皆で暮らせる村みたいな感じにしたいなと思ってる」
一応フロアボスたちの部屋はそれぞれ担当フロアに用意しているけどせっかくならここにも用意したいしな。
「流石コウキ様!その慈悲深さ感服しました」
「我々もこの場所をより良い場所に出来るよう努力します」
フロアボスたちもやる気を見せておりとても頼もしい。
「さて、これで衣食住のうち「食」と「住」はできた。後は衣だが・・・衣服はどうするか・・・」
今更だがこの中で衣服作れる者はいない・・・あまりにも普段の姿が当たり前すぎたから忘れていた。
「衣服なら私が【裁縫スキル】とか渡せば問題は無いわ。衣服を作りたいといという者がいればですけど」
「マジで?」
ここでまさかの女神発言・・・そういえば、女神だったな。
さて、残す課題は・・・・
俺は早速モニターを開き作業に取り掛かる。設定は範囲、地形、あとオプションとしてフロアのギミックを取り入れた。まずは住宅を建設するスペースと住民全員が集まれる広場、それと・・・・・
プログラムの設定が終わり「更新」させると「complete」と表示され、目の前に会場が設営された。といっても仰々しいものではなく、野外ライブで行われるステージみたいなものだ。
「とりあえず、挨拶する場所はこんなのでいいかな・・・それじゃ皆ダンジョンモンスター達をここに連れて来てくれないか?」
『御意』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なんというか異文化コミュニケーションの大会場みたいになっているな」
次々とやってくるダンジョンモンスター達・・・どれもユニークモンスターやレアモンスターばかりだからな、フロアボス達も含めたらこのダンジョンの戦力の殆どが集結したんじゃないかと思ってしまう。
フロアボス達はダンジョンモンスターを確認した後ステージから見て最前列で整列する。なんというかこれを絵にしてネットとかにあげたら『勝てる気がしない』というタグが付きそうだ。
「コウキ様・・・指定のダンジョンモンスター総勢100体がここに集合しました」
メリアスの言葉に我に返った俺はもう一度ダンジョンモンスター達を見た。誰もが俺に興味津々な視線で俺を見ている・・・あまりスピーチに慣れていない俺からすれば緊張して声が震えそうになる。
・・・いや、待て!今更だが俺、地球でもろくにスピーチなんかしたことないぞ!初めての会社でプレゼンした時だってたった6名の前で心臓バクバクだったんだぞ。ダンジョンモンスターとはいえ100体の前、しかもフロアボスたちも見ている・・・今日は俺の命日になるのか?死因は心臓発作か?
俺が緊張しているのをいち早く気付いたメリアスはそっと近づき皆には見えないように背中をすすってくれた。
「コウキ様・・・落ち着いてください。彼らはあなたのダンジョンから生まれた子達。我々を含め家族なのです。そう気を張らなくていいのですよ」
母性溢れるメリアスの言葉に何故かさっきまでの鼓動が落ち着き始めた。おそらくメリアスが放ったアロマ効果なのだろうか、かすかにいい香りがしてリラックスした。「彼らは家族」そう考えると不思議か、安心感を覚えた。そうだ、圧倒的レベルのフロアボスたちを見たとき、俺は恐怖よりも喜びで満ちていた。彼らに会えたことを心の底から喜べた。なら、ここにいる彼らも同じに接するべきなんだ。
俺は小さく「ありがとう」と伝え台の上に立った。
「皆、はじめまして。俺がこのダンジョンを任されている神埼・エドワード・光輝だ。そして、ようこそ俺達のダンジョンへ。君たちは女神エイミィを守護するダンジョンモンスターとして生まれた。彼女を狙う輩と戦うために生まれたとも言える・・・だけど俺は人生?魔物生は戦いだけにしたくない。だから俺はここを作った。君達が君達らしく生きられる場所にしたい。いきなりで分からない事も沢山ある筈だ、だけどこれから学べばいいんだ。君達がダンジョンから生まれ、魔物だろうが、種族が違おうがそんなの関係ない!君達は『生きている』!生きて学び、生きて成長し、生きて助け合う!俺が理想とする未来はそんな場所だ。だから・・・これは俺からのお願いだ!全力で生きてくれ!共に理想とする未来を創ってくれ!」
俺が伝えたいことは伝えた・・・少しやらかした感はあるが・・・まあいいか。
俺の短い挨拶が終わると真っ先に拍手をしたのがエドワードだった。そしてエドワードに続きフロアボス達も拍手し、ダンジョンモンスター達も歓声や雄叫びを上げて拍くれた。俺がステージから下がると満面な笑みを見せたエイミィが入れ替わってステージの中央に立った。
「皆さん私は三大神の一柱、『創造の女神エイミィ』です。皆さんが生まれたこと、この場に集ったこと・・・そして、これからの未来に祝して私、『創造の女神』から祝福を与えたいと思います」
話を終えた瞬間、エイミィは祈りを捧げるように手を組んだ。そして全身から優しい光が彼女を包み、会場にいる者達も包み込んだ。これが女神の祝福なのだろう、久々に俺の頭に機械っぽいあの声が聞こえた。
『祝福を受けたことにより、以下のスキルを習得しました』
どうやらその場にいた者全てにエイミィからの祝福をもらえるそうだ。
【ゴッドスキル:リンク】
・・・・・おいおい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます