第18話

セフィロト復活という衝撃的な場面を目の当たりにするもその空気は号泣しながら抱き着くエイミィによって崩壊していた。


「えぐ!セフィロト良かったよ!」

「はいはい、エイミィ久しぶり?・・・っでいいのよね。私はどれくらい眠っていたの?」

「ざっと1500年くらい」

「・・・思ったよりも早かったわね。あと1000年くらいは石のままだと思っていたけど」

「復活できるように器を用意したの。セフィロトが好きだったあの花を使ってね」


エイミィがそう言うと、セフィロトの頭についている花を触った。


「もしかして、レオガラの花?・・・絶滅したと思ったのに」

「メリアスに頼んで作ってもらったのよ」


エイミィたちがメリアスに目を向けると彼女は何事もなかったかのように二人にお辞儀をした。あのエイミィの本性を目のあたりにしても全く動揺していないと思うと、どういう精神をしているのか疑問に思えてきた。


「初めまして女神セフィロト様。このダンジョン地下44階層のフロアボスを担当させていただいているメリアスと申します」

「メリアスね。あなたが用意してもらったレオガラの花・・・実に素晴らしいわ。永く生きていたけどこれほど立派に咲いた花は見たことは無いわね」

「ご満足いただけて光栄です」


セフィロトはメリアスに微笑むと次に俺の方に目を向けた。


「エイミィ、こちらの方はどなたですか?見たところこの世界の人間ではないようですが」

「ええ、彼は神崎・エドワード・光輝。私がこのダンジョンを創ってもらうために異世界である地球からこちらの世界から呼んだ人よ」

「そうだったのね。光輝さん、エイミィの都合でこの世界に招いてしまい本当に申し訳ございません」


そう言ってセフィロトは深々と頭を下げた。


「頭をあげてください。最初は戸惑いましたけどダンジョンを創るのは楽しかったし今の生活も結構気に入っているんです」

「そうでしたか。エイミィは昔からモノ作りの力を持っていても失敗ばかりでしたからね」

「そ、そこまで失敗していないわよ」


いや、たまにエイミィが作っているデータをチェックすることがあるが所々ミスがあった。


「ところで私が眠っている間の事を教えてくれませんか?1500年経っていますし、世界はどのように変わりましたか?」


セフィロトが質問するとエイミィはこれまでの経緯を説明した。セフィロトが邪神を封印した後世界がどうなったのか、魂の管理が不安定になって世界に混乱が起きている事や神狩りについてなど。


「なるほどだから『このような』形で私を復活させたのね」

「流石にあと1000年待つわけにはいかないからね。この状況を早く解決すべきだと思って」

「確かに、随分と管理がずさんに行われていたみたいです。英雄級の魂がいくつも転生されています」

「あ、それについては後で話をするわ。ところで、その体は問題無い?」


エイミィがセフィロトの周りをぐるりと回り確認する。


「そういえば、エイミィ随分と大きくなりましたね」

「いや、あなたが小さいの!子供の姿だから!というか今気付いたの?!」


まさかのボケにエイミィがツッコミを入れる。もしかしてセフィロトって天然なのか?


「頭に花が咲いているという事は私は植人族になったのでしょうか?」

「そうね、生まれたばかりだしかなり弱い身体だと思うけど我慢して」

「なるほど、ですがこれはこれで」


セフィロトは自分の身体を確認すると手を天井に向けて突風を放った。いや、突風というよりも竜巻だった、部屋にあった机や椅子は空中に巻き上げられぶつかっては粉々に砕けた。マジでヤバいぞ、部屋の中で自然災害は発生してしまった。


幸い俺とエイミィはメリアスが張った結界で何事も無いが目の前の景色は災害だった。そして風が収まるとセフィロトがキョトンとした顔でこっちを見た。


「エイミィ、この身体のどこが弱いのですか?」

「あ、あはははは。メリアスの渾身の出来だからかな?」


予想外すぎる展開にエイミィは乾いた笑いで誤魔化していた。


「なるほど、どうやらこの身体になった理由は器が大きすぎるのが原因なのでしょう」

「器が大きすぎるってどういう意味?」

「生き物には魂と器とする肉体を持っています・・・光輝さんの世界でいうなれば『魂魄』みたいなものですね。この身体はメリアスさんが作ったレオガラの花をベースに神核を融合させたことで植人族へと生まれたのです」

「あれ?植人族って確か植物の魔物がヒト化した時になるんだよね?」

「ええ、魂を持った植物の魔物が変異します。なので魂を持たないレオガラの花に私の魂が宿った神核が融合したことでレオガラの花の魔物が誕生。そしてそのままヒト化したことで植人族となったのです」


つまり魂を持った魔物であればヒト化するわけか。


「そして器の大きさですが、これはベースとなる肉体がどれほど魔力を持っているのかによって変わります。私のベースとなったレオガラの花は私の魂をも余裕で受け入れるほどに大きかったため、器が魂に合わせて子供の姿になったのだと思います」

「なるほど、というか神の魂を余裕で受け入れる花ってとんでもないな」

「もし器が小さければ私の能力は器に収まる範囲まで弱体化してしまうでしょうね。ただの木だったら姿は大人になっていたかもしれないですけど、そよ風を出すのが精いっぱいだったでしょう」


器なら何でも良いという訳ではないらしい。そうなるとワイトが子供の姿なのも器となったホムンクルスが相当優秀だったのかもしれない。

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