第15話
ダンジョンに新たなメンバーが加わったホワイトリー。彼が持つ【スキル】は殆どが生産系のモノだった。だがその熟練度は殆どが達人級。世間に出れば間違いなく天才と呼ばれているだろう。
そんな彼だが現在はゾアの助手として働き彼と一緒に何かの開発を行っていた。
「ゾア、ホワイトリー調子はどうだ?」
フロアボスの中でも特に行動が読みづらい人物であるゾアには時々抜き打ちで訪問することにしている。
ホワイトリーの事もあるがその後も畑を耕すためのゴーレムを頼んだはずなのに警備も兼ねてミサイルやレーザーガンを搭載していたり、水まき用スプリンクラーを作るはずがウォーターカッター並みの水圧まで調整できるようにしていたりと変な機能が入っている。
とまあ、呆れ部分があるがそれを含めてゾアの発想は面白いのは事実であり、それを実現可能にしている腕は確かなのである。
「おや、コウキさん今日も抜き打ち訪問ですか?ワイそんなに信頼されていないんでしょうか?」
「余計な機能をつけなければ抜き打ちの頻度は下げてるよ。それで今回は何を作っているんだ?」
「メリアスさんに頼まれとったものを作っとったところですわ」
「メリアスに?また畑関連か?」
「いえいえ、今度は調理用の器具を作って欲しいと言われまして。ワイは鍋を作っているところです」
「メリアス最近料理のレパートリーを増やしたいって言ってたもんな。じゃあワイトはどうしているんだ?」
「ああ、ワイトならあそこで包丁を作っています」
ゾアが目を向けた先にはホワイトリーが真剣な表情で包丁を研いでいた。ちなみにワイトというのはホワイトリーのあだ名でありゾアがそう呼び始めた。ぶっちゃけ
「あ、コウキ様こんにちは」
「やあワイト、随分と作ったみたいだな」
ホワイトリーのすぐ近くには10本の包丁が並べられておりそれぞれ違う形をしていた。
「はい、それぞれ食材に適した包丁を作ってみました。あとでメリアス様に試し切りしてもらう予定です」
「そうか、必要な素材とかは足りているか?」
「はい、グラム様やカルラ様から必要な鉱石は頂いています。ゾア様からも工房を用意してもらったのでとても感謝しています」
他のフロアボスたちもワイトとはちょくちょく交流しているみたいで仲は良好のようだ。
「ワイト、包丁が完成したそうですね」
ふと声がする方に顔を向けると相変わらず神々しいオーラを放つメリアスが立っていた。
「メリアス様、早いですね。ついさっき連絡したばかりなのに」
「ええ、ワイトが作ってくれた包丁が楽しみでしたので。こちらがその包丁ですか?」
「はい、試しに使ってみてください」
「ではまずは野菜を・・・」
そう言ってメリアスはモニターを操作して目のまえに大量の巨大野菜を出現させた。
「メリアス、もしかしてその包丁でこの野菜を切るつもりか?」
「はい、風の刃で切ることも出来ますが切れ味が少々納得いかないので包丁で調理したく」
いや、そういう意味じゃなく。明らかにワイトが作った包丁ではサイズが小さすぎる。日本刀並みの大きさじゃないとちゃんと切れないんじゃないか?
「それでは、えい!」
可愛らしい掛け声でメリアスは軽く包丁を振った・・・そんなので切れる訳・・・ズドーン!!!・・・は?
メリアスの目の前にあった巨大カボチャは見事に真っ二つに切れた・・・床も一緒に
「あらあら、『最適化』を使っていなのに凄い切れ味ですね」
「ちょっと待て!メリアスこれで『最適化』使っていないのか?!」
「はい、この切れ味はこの包丁の性能です・・・ワイト、素晴らしい切れ味ですね」
「ありがとうございます」
「いや、褒める所か?!というか研究所が『ああああ!!ワイの研究所が!』・・・やっぱり」
床に大きな裂け目が作られた事に気付いたゾアは大声で叫びこっちにやって来た
「っちょ!ワイト、なんちゅうもん作ったんや!」
「でもメリアス様に何でも切れる包丁が良いって」
「だからって斬撃を飛ばす包丁作るか普通!しっかり【斬撃】の効果付与されちょるし!これもう調理器具やなくて完全に武器やん!」
いや、お前が言うか?
「あら、意外と便利ですよ調整すれば離れた所からでも」
メリアスはまた軽く振ると次は巨大キャベツが千切り状態になった。しかもキャベツを載せていたテーブルは無傷状態で後ろの機材にも傷はついていない。完全に包丁を使いこなしていた。
あれ?メリアス今一回しか振っていないよね?
「素晴らしい包丁ですね、ではこちらは貰っていきます。皆さん今日のご飯楽しみにしていてくださいね」
メリアスはそう言ってワイトの包丁と試し切りした食材をしまって出て行った。
「ゾア、今後ワイトが作るものにはしっかりと確認するようにな」
「りょ、了解」
なお、今日のメリアスの料理は一段と美味かった。
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