ダンジョン作ったら無理ゲーになりました

緑葉

ダンジョン誕生編

第1話 プログラミングしたらダンジョンができました

俺の名前は神埼かんざき エドワード 光輝こうき。現在は小さなゲーム会社のプログラマーとして働いている。今日もいつも通りPCメガネをかけながら暗号のようなプログラムを打ち込んでいく。時計はすでに針兄弟が12に到着していた。


「残業にしたって、これは無いだろ!あのアホ部長面倒な仕事押し付けやがって!どんだけバグを見落としてやがるんだ!」


誰もいない部屋で頭に浮かんだ様々な愚痴や鬱憤などを溢しながら、俺は机の上に積み上げてある栄養ドリンクを手に取り飲み干した。先輩からの差し入れらしいが、差し入れくれるくらいなら俺の作業手伝って欲しい。こっちは猫の手でも猿の脚でも借りたい気分なんだから。なんで後輩の俺より先に帰っているんだよ!


「俺のこれが待っているんで」・・・リア充爆破しろ!


「ああ、もう終電間に合わないな。タクシー代ももったいないし、雨降ってるし、傘ないし・・・・またここで寝るか」


残業疲れで変なテンションの俺はそんなことをつぶやきながら再び指を動かした。


ゴロゴロ


「・・・っげ、雷・・・まずいな今のうちにセーブしておかないと」


俺は急いでセーブコマンドを押した瞬間。


プツン



「はい?」


辺りは真っ暗になった。音は無い。パソコンの様子を見たが『返事が無い、ただの屍のようだ』。いや、無機物だから屍じゃないだろうが・・・・データが飛んだら俺が屍になりそうだ。


「おいおい!最悪のタイミングだろ!セーブ中に停電とか。洒落にならんぞ!」


慌てて立ち上がり、ブレイカーがある場所へ向かう。


「チッ、暗くて見えない。携帯を・・・・あれ?」


机の上においてあった携帯がある場所に手を伸ばすと、何も無かった。バランスを崩し倒れかけるがなんとか体勢を立て直す。


「あれ?・・・暗くて方向感覚がおかしくなったか?」


手を広げ周りにあるものを触ろうとしたが何も無かった。掴めるものは何も無い。

座っていた椅子も、使用していた机も無い。

さっきまで聞こえた雨の音も時計の音も聞こえなくなった。


「どうなっているんだ?これは夢?意識のある夢か?」

「神埼・エドワード・光輝ですね?」


突然の声に俺は跳ね上がり声がする方向に目を向けた。しかし相変わらず回りは真っ暗で何も見えなかった。


「あ、失礼。今見えるようにします」


すると、目の前にいきなり小さな光の玉が降りてきた。まるでシャボン玉のようにゆっくりと重力に引き寄せられるように降ってくる。


「始めまして、私の名前はエイミィ。こう見えて、とある世界の神をしています。エッヘン」

「・・・」

「あえ?思考機能は正常よね?・・・五感機能・・・問題無い。・・・もしもーし?聞こえますか?」


光の球は俺の周りをくるくる回っている。


「何なんだこれは?ってかあんた誰?」

「お、やっと気付いた・・・改めて言うわ。私の名前はエイミィ、神様よ」


えーと、この玉は何を言っているのかな?神?髪?紙?


「えーと、エイミィさん?質問していいですか?」

「ええ、どうぞ」

「先ほど、俺は小さなビルでゲームプログラムの作成をしていたはずなのですが、雷が鳴った瞬間俺はここにいました。ここはどこですか?」


「ああ、あの雷は多分私のせいですね。この世界に来る際、なるべく違和感持たれないように雷に偽装として落ちたの。そしたら、丁度停電になって周りが暗くなったからチャンスだと思ってあなたをここに連れてきた。ちなみにここは亜空間よ」


はい、いきなり俺はギブアップ!何を言っているんだこの球は?


俺をここに連れてきた?雷となって降ってきた?ってことはまてよ?1億歩譲ってこの玉が神として、雷が落ちたのがこの球が原因、そして俺をここに連れてきたのもこの球。


「俺の苦労をかえせえええええええええええええ!!!!!」


消えたデータの怒りをこの玉にぶつけるために俺は飛び掛った。


「っちょ!いきなり襲うとか!日本人はおとなしい性格だって調べたけど、違うの?!」

「どこのソースだそれは!怒り狂った日本人の恐ろしさを教えてやろうか?!お前は俺の大事なものを一つ奪った!」


何ヶ月もかけてくみ上げたプログラムをこの球の降臨で消え去ったと思うと、怒りがこみ上げてくる。


「っちょ!落ち着いて、勝手に連れ出したのは悪いと思ったから」

「それも問題だが、そこ問題じゃねええ!」


そしてしばらく、俺と光る玉の追いかけっこが続いた。


「はぁはぁ・・・少しは落ち着いた?」

「ぜぇぜぇ・・・いつか絶対簀巻きにして転がす」


お互い体力の限界まで走り続けた、玉に体力があるのか不明だが俺と同じように疲れを見せていた。


「はぁはぁ・・・っで、なぜ俺がここにいるんだっけ?」

「はぁはぁ・・・そうでした、あなたにある建物を作ってもらいたくてつれてきました」

「そういうのは、建設会社に頼め!俺はただのゲームプログラマーだ」

「ですが、作り方がこういうので・・・」


俺の目の前には透き通ったモニターが映し出された。まるで近未来アニメに出てくるような未来型パソコンのような形だった。そして画面にはアルファベットと数字の羅列。俺がよく見ているゲームのプログラムの文字だった。


戦闘システムのプログラムではなく、マップとかのオブジェクト情報のデータだった。だが見るからにデータの容量が大きく、装飾や仕組み、ギミックなどのプログラム欄がある。建物というよりか、ダンジョンのマップのデザインに近い。


「これって、設計図か。だけど所々間違っているな、これじゃアップしてもエラー起こしてバグになる。・・・これを完成させればいいのか?」


エイミィは頷くように縦にはねた。


「この程度、いつもバグを直している俺にしたら余裕だ」


さっきまでの疲れは吹き飛び、俺は没頭してプログラムの修正に入った。キーボードもいつも使っているサイズと同じですぐになれた。


「えーと、この数値だとバランスが悪いな・・・あと、ここが玉座の設定だから・・・」


俺はビックプロジェクトを渡された気分で次々とプログラムを修正させた。疲れなんて忘れるくらいプログラムを組み立てていった。


時々、エイミィに説明や相談を受けて要望に答えるように設計した。


・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・


どれくらいの時間がかかったのは分からない。だが、俺はやり遂げた気分で最後のコマンドを打ち込んだ。


「これで・・・完成!」


エンターキーを押した瞬間、俺の頭に鐘が鳴る音が聞こえた。


『オリジンダンジョンプログラム・・・・起動させます。神、エイミィの名の下にカンザキ・エドワード・コウキをダンジョンマスターとして登録します』


「はい?エイミィ、これはどういうことだ?」

「おめでとうございます、これで私たちの家が完成です」


言っている意味が分からない・・・私達?

エイミィの輝きが増し、光は成人した女性の姿に変わった。


「エイミィ?」

「はい、これが私の本来の姿。神崎・エドワード・光輝さん、改めてありがとうございます。早速出来た手ほやほやのダンジョンに行きましょう!」


エイミィに手を引っ張られ俺たちは光の中に飛び込んだ。


「ダンジョンって・・・えええええええ!」

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