第25話不在


 私は今の大魔女達がどんな人かもしらない。ユイマでさえ、噂に等しい情報を漏れ聞いている程度なのだ。男か女かくらいは分かってもいいのに、公表しないのは何か理由があるのか……。

「!…そうだ。

 せっかくミズァドラ湖にいるんだから、

 水の竜と清流の大魔女に会うことも出来る?」


「勿論、出来ますよ。

 明日にでも会いに行きましょう。」


「やった!水の竜は湖にいるんだよね!?」

最高な声で最高なことを言ってくれるから、ついはしゃいでしまう。慣れるとイケボも普通に聞き流せるというよもやの事態。やっぱり内容が大事。美声は3日で飽きる…いや、飽きてはいないな、全然。飽きはしない。あれは嘘だ。


「事前に伝えておきましょうか。

 私が呼べば応えるはずです。」


 呼べば、来るんだ…!湖から…!!

頭の中ではネッシーのような竜が湖からザパーッと姿を現す光景を勝手に想像している。恐竜は嫌いじゃない。小さい頃は図鑑がボロボロになるまで見ていて飽きなかったのだ。あぁ懐かしい。図鑑は持ち主の弟より使い倒していたから、私の方がやたら恐竜に詳しかった。

 エラスモサウルスとかプレシオサウルスとか、

 あんな感じでカワイイといいなぁ。

 やっぱり大きいのかなぁ〜。

いや、それはそうと、竜はともかく人間の方の予定が心配だ。多分考えていないだろう。この竜は、私だけでなく人間全般を相手にしていないフシがある。一応、話を振っておかないと。

「今の清流の大魔女はどんな人なの?」


「魔女はいません。」


「あ、留守なんだ。」


「清流の大魔女は長く不在だそうです。」


「え〜なに?旅行かなんか?」


「魔石と共に行方不明です。」


「はぇ!?」

 …変な驚き方をしてしまった。ハズ。

 てか、これか。これで困り果ててるのか、

 水の竜は!……いや、でも腑に落ちない。

 長く不在で何とも無いのに、どうして今…?


コンコン、と軽快なノックの音が聞こえて、白塗のドアに目をやる私に竜は言った。


「この世界は久しぶりですが、変わりません。」


「え?あぁ、前に言ってた…。」


「世界はすべてを歓迎するために存在する。

 よく覚えておいて下さい。」


そんなの、私もそう思ってる。そう願っているに決まってるよ、と言おうとして言葉は出なかった。

 ………久しぶり……前に来ている……。

 どうして雷の竜を誰も知らないの?

雷を操る、なんて新しい概念のハズ、だった。

 あれ?

ノックは繰り返される。返事をしなくては。

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