第10話世界


 やらかしたのはわかってる。スゴイキマズイ。

"欧米人から見たら日本人は幼い"なんて話は聞くけど、その感覚を実体験出来てしまうなんて思わなかった。

ここは異世界。

現代世界(便宜上そう呼ぶことにする)には存在しない様々な人種や種族が当たり前にあるのだ。

ラダさん達は恐らく小柄で線の細い種族の方々なのだろう。(実はユイマも知らない)

例えユイマの知識として頭に入っていても、私が咄嗟に判断してしまえば、つまり、決め付けてしまえば、情報を引き出す前に考えを進めて思い込んでしまうこともあるということだ。

先入観というやつ。

なまじっか、ここの人達の外見と文化に既視感があったものだから、変に自信を持った。普通に恥ずかしい。

勿論、案内役さんには丁重に謝った。

 これは発見だわ……。今後気を付けよう。

 "中にいる"状態にも慣れていかないと。


女性はルビと呼んで欲しいと言っていた。(名前か名字かは知らない)

図々しいとは思うけど、名前の他にもいろいろと教えて欲しいと頼んだら、食事の後の時間を約束してくれた。語学堪能な上に、失礼な事をした私に優しい。神。


 ログラント(この世界)には、北と南にそれぞれ竜と大魔女の加護を受けるとされる大国があり、東西周辺には無数の小国、中堅国がせめぎ合う。紛争地域があれば中立地帯もあるし、城塞都市型国家なんてものもある。

地図上もっとも広大だとされているのは、海。

南北の大国はどちらもぐるりと海で囲まれていて、戦争にならないのは純粋に距離があるからだと考えられている。

次いで森林や山岳地帯。砂漠、サバンナなどの未開拓地が続く。少数部族はまだまだ世界的には知られないものも多く、彼らの中には限定的な魔法や秘術を使う者も存在すると言う。

ユイマが聞いたこともない魔法もあるのだろう。

魔獣、精霊、動植物や昆虫は言わずもがな。

 現代と似ているような大分違うような……。

 中世くらいかと思ってたけど、

 世界地図が普通の家にあるんだ。

 魔法で飛んでる人が居るなら出来るか?

 測量って大変なイメージあるけど。

ところでいつまでこの世界にいるのだろう。

 ………死ぬまでとかないよね?

 せめて一回だけでも、

 所謂黒歴史を処分しに帰りたいんだけど。


 モグモグしながら考え事をしていたら、あっという間にモーニングセットを食べ尽くしてしまい、お皿を下げに来たルビさんに、おかわりをお願いして、もうワンセット追加してもらった。

一見じゃがいものポタージュみたいなスープは、スパイスの香りが食欲をそそり、中々に美味しく頂けるものだったし、ハード系のコッペパンには柑橘類のジャムがとても合っていた。味は蜜柑に似ている。ぜひこの果物の名前が知りたい。

我ながら単純だと思うけど、食べ物を与えられた途端に気持ちも落ち着いた。はぁ~やれやれ。

腹が減っては戦はできぬ。真理。

空腹という深刻な問題がひとつ片付いたところで、ようやく本題に入りましょうか。

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