おじさん目のやり場に困る
拠点に到着して、猪から手を離す。
うわ! ブーツダメになってる!
そりゃそうだよなぁ。軽トラよりデカイ猪と相撲して、一歩一歩地面をめり込ませながらここまで来たんだもんな。
むしろよく持ったなこのブーツ。
とりあえずボロボロのブーツを脱ぎ同じくズタズタになった靴下も脱ぐ。靴下も終わったか。
この一足しかなかったから、これからノー靴下か。ハァとため息が出る。
幸い皮膚も身体能力の向上で頑丈になったのか、尖った石をおもいっきり踏みつけても、痛みは感じるが足裏に穴が開くことがないのが救いか。
尖った石なら素足で消しゴム踏んだ程度、尖った木材ならスナック菓子程度だ。
これからは必要なときだけゴム長靴を履こう。必要な時ってのがどんなときか知らんし、ブーツよりかなり脆いけどどうすっかね。
なんて考えて作業着の裾を少し捲っていると、美人四人組は、朝よりはだいぶ火勢は弱まったが、まだまだ煙を上げている焚き火の近くで、集めていた枝を持ち上げて話し合っている。何度か頷き枝を火にくべだした。
さて、やるなら一気に一思いに殺ってほしいが、そんな雰囲気は微塵もないな?
どうすっかね。とりあえず猪をなんとかしたいが聞いてみるか。
「セイランさん、アイリーンさん、リジーさん、エナさん」
四人に身振り手振りに地面の絵も使って猪をどうするか、食べたいことも伝えて聞いてみる。
なんか四人の目がキラキラしてる気がするが気のせいか?
セイランさんが何事か指示を出し三人が動き出す。
アイリーンさんはリジーさんと猪の頭部を解体しだし、エナさんはセイランさんのリュックからロープを取り出して、川に一番近い木に走っていく。
ポカンとしているとセイランさんに肩を叩かれ「ちょっと待ってろ」と身振りされたので、とりあえず座って待つことにした。
セイランさんは解体の手伝いに行き、ロープを木に結んだエナさんは猪の足にもロープをしっかり結び、解体を見学している。
解体は大きな牙を四本取り外して終わったようだ。
こっちに来た四人に、猪を川に沈めてほしいと地面に絵を描かれて頼まれたので了承し、牙がなくなったから前足を掴んで引き摺ろうとすると、アイリーンさんに肩を捕まれた。
どうやら裸足なのを心配されているようだったので、ゴツゴツした石を踏みつけ砕いて見せ、足も大丈夫なことをアピールするとアイリーンさんとリジーさんはドン引きし、セイランさんとエナさんは目を見開いていた。
猪を川に沈めていると、血とか泥とか汚れとかがとんでもない規模で流れていくんだけど、大丈夫なのこれ? 下流に誰かいたらめっちゃ迷惑じゃない?
いや私も洗濯やら水浴びやらしてたけどさ。心配だったので地面に絵を描いて聞いてみるが、問題ないようなので気にしないことにした。
猪を沈めると武器防具等々装備を外してシンプルな服装になった四人が入ってきて、より血が出るように首の辺りに大型のナイフを刺したり、枝で猪の毛皮を擦っていた。
背の低いエナさんが、あの猪が沈む深さではエナさんも沈んじゃうので、猪の上によじ登っていたのが微笑ましかった。
手伝い方もわからないので上がらせてもらい、猪よりも上流で水を片手鍋に汲んできて、火にかけておく。川の水はまだまだ冷たいからね。
そんなこんなで鍋と作業の様子をボーっと見守っていて、ふと思う。
無防備過ぎやしませんか?
いや、私は襲おうとか思わないし、いくら力があっても戦闘を仕事にしてる彼女達には絶対に勝てない自信がある。
でも、人数がいるとはいえ全員が武器防具を外してるのが気になるな。
さっき焚き火に枝追加してたから、やっぱり煙? 戻ってきたら聞いてみようかな。
作業が終わったのかみんな戻ってきたんだけどさ。
こっちに来て焚き火を囲むのはわかるよ。川の水は冷たいからね。
それでも肌に張り付いた衣服が目のやり場に困るんですよ。
はい、お湯ありますよ。みんな荷物に木製や金属製のカップは持ってるんだね。
なかったら腕力で石くり貫いてカップに・・・
待て待て待て待て!
やっぱりこの人達、無防備過ぎやしませんかね?
何でいきなり脱ぐのさ!?
百歩譲って仮にあの煙を動物がとても忌避していて、装備を外すのはわかるよ。
何でいきなり脱ぐのさ!?
周囲警戒することなく、すげぇ普通に脱いだんだけど!?
虚を突かれてガン見しちゃったわ!
え? この人達下着のまま焚き火囲ってんだけど! 正気か!?
地球と似たような下着なんだね。……じゃねぇよ!
危機感! 危機感持って! 羞恥心! 羞恥心はどこ!?
ここに男が! おじさんが! 男がいますよ!
待って! セイランさん! 話ができないからってそっち向かせようとしないで!
パワーがあっても踏ん張る場所がないと、パワーが発揮できねぇな?
しかもなんか無駄に技術? 合気? 使ってねぇかこの人!
あ、セイランさんニヤニヤしてんじゃねぇか!
エナさんはこっち見てきょとんとしてるし! 純真無垢!!
アイリーンさんとリジーさんは今頃恥ずかしがってんじゃねぇよ!? 遅いよ!
恥ずかしがるだけでそのままじゃねぇか!? 服着ろよ!
エナさん!? 下着脱ごうとしないで!?
誰か止めろよぉぉぉ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます