第18話 三銃士(仲良し高校生3人組)

 北海道の内陸側の小さな町。

小さい町だが真ん中に国道が通っているため、車通り、特にトラックが多い。

その国道の外れにある小道を、学ランのズボンのポケットに手を入れながら歩いている1人の少年がいた。


「―――♪」


 耳にワイヤレスイヤホンを付け、小声で口ずさんでいる。

彼の名前は影山かげやま 岐志きし

前髪を少し伸ばし、目付きが悪いのが特徴的な男子高校生だ。


「あ、ヘーイきしー!」


 すると、岐志の後ろから女子高校生が手を振りながら彼の名前を呼んだ。

しかし……。


「――――♪」


 イヤホンから聞こえる音楽の音量に負け、岐志の耳には全く声が届いていない。

もちろん分かっているその女子高校生は走り始め、彼の真後ろまで忍び寄った。


「――――わっ!」


「うわあっ!? ら、らんか……。おはよう」


「Good morning岐志! わたしを無視するなんて酷いじゃない!」


「やっぱ発音良っ! ごめんごめん、音楽聞いてたから全然気づかなかったわ」


 彼女の名前はカネラ らん

父はスペイン人、母は日本人の間に生まれたハーフである。

父親はスペイン語と英語を話せるが、英語は世界共通語となっているほど重要な言葉。

そのため、蘭には徹底的に英語を教えた。

結果、蘭は日本語はもちろんのこと、英語も流暢に話すことが出来るのだ。

 岐志の両肩をポンッと置いたことで岐志は驚き、思わず腰が抜けそうになった。

しかし、何とか踏ん張って堪えた。


「あれ、ひかるは――――あ、いた。おーい!」


 蘭の後ろでこちら側に歩いて来ているのは、身長が高くてひょろっとした体型の男子高生だ。

名前は斎藤さいとう ひかるである。


「おはよう岐志」


「おはようさん。相変わらず眠たそうな顔してるな?」


「まあ、そうだね……ふわぁ〜」


 斎藤晃とカネラ蘭、実は岐志が幼稚園からずっと同じ、そして小・中・高校ともに同じの幼馴染同士である。

3人は家の場所も非常に近いため、幼い頃から公園やお互いの家に訪れてはよく遊んでいた仲だ。

 しかし、幼馴染と言っても歳を重ねていけばちょっとは変わったりもする。

それは……。


「ねえ晃、ん!」


「はい!」


「――――おうおう、俺の隣で堂々とイチャついてんな」


「えっ、ダメ?」


「別にダメじゃねぇけどよ……。ちょっと苛つくと言うかなんというか……」


「「―――さすが彼女なし=年齢」」


「うっせ!」


 そう、蘭と晃は恋人同士なのだ。

岐志の協力があって2人は晴れてカップルになったわけだが、1人だけ恋人がいないボッチ少年は――――ちょっと寂しい気持ちになるのであった。


「誰だよ寂しい気持ちになるとか言ったやつ」


「「知らなーい」」


「絶対お前らだよな?」


「「――――さぁ?」」


「―――――」


 いつもこんなくだらない会話から始まる3人だが、本当に仲が良いのである。

放課後になると3人の中の誰かの家で遊んだり、休日になるとゲーム大会をしたり……いつも一緒にいるほどだ。

 しかし、岐志は深い闇を抱えている。

それを知ることが出来るのは、授業が終わり3人で下校している最中に必ず話すことだ。


「Hey岐志、今日どうするの?」


「昨日は蘭の家だったから、今日は晃ん家だな」


「そうだったね、じゃあお母さんに連絡しておくよ」


「いつもすまねぇな……」


「大丈夫だよ」


 そう、岐志は自分の家には絶対に帰らず、蘭か晃の家に泊まるのである。

その理由は、岐志の両親の存在だ。


「じゃあ、またね2人とも! あ、でもその前に……晃」


「うん、じゃあね蘭。また明日会おうね」


 そう言って名残惜しそうにそっとお互い抱きしめ、そして岐志の前で堂々とキスをした。

幸せそうなオーラを出している2人に対して、岐志はというと……ちょっと苛つき気味であった。










◇◇◇










「ただいまー」


「お帰りなさい〜。岐志くんいらっしゃい! どうぞ遠慮なく上がって!」


「すいませんお邪魔します!」


「おう、おかえり」


「あ、お父さん帰ってきてたんだね」


「あぁ、思ったより早く終わったからな。おう、岐志君久しぶりだな」


「お久しぶりです祐樹さん」


「遠慮せずにゆっくりしてけよ」


「ありがとうございます」


 岐志はお礼を言うと晃と一緒に2階へ上がり、晃の部屋へ入る。

そこに荷物を一旦置くと、再び1階のリビングに戻った。

テーブルの上にはカレーライスが4つ置かれていた。


「さぁさぁ!いっぱい食べてちょうだいね!」


「「「「いただきまーす!」」」」


 ちなみにこの4人、体の見た目の割には大食いであり、また食べるスピードも速い。

そのため、10分もすれば祐樹も、


「ご飯おかわりしまーす」


「祐樹さん相変わらず早いですね」


「いっぱい食った方が体に良いからな!」


 そう言うと、祐樹はキッチンへ向かうと炊飯器から白米を大盛りで皿に盛り付けると、今度はカレールーが入っている鍋の蓋を開けて、カレールーを白米の上にかけた。

 みんなが食べ終わるまで、笑い声や話し声が絶えることはなかった。

岐志は確かにここの家族ではない。

しかし、家族だと言えるくらい全く違和感がないほど溶け込んでいた。

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