想い出の場所で語る僕と君とこれまで
弥彦乃詩
短編
僕は限界かもしれない。あれから1年経った。
雲一つない青が広がる空。広がる草原。白い息。
世界から切り取られたようなここで、君に伝えたいことがあって。
ここでなら、ちゃんと向き合える気がした。
こんなことが言いたいわけじゃないけれど。
だからといって、思い出の場所で会いたい、なんて君が聞き入れてくれるのだろうか。
きっと君は困った顔をして笑うんだろう。
いつからか、自分勝手な僕に対して、君はいつも笑ってごまかした。
好きだった君の笑う顔は、いつからか、苦手になって、嫌いになって。
それでも僕は。会いたくて。話したくて。笑ってほしくて。
君ともっと親密になりたくて、愛を深めたくて、終わりまでを共にしたくて。
付き合って2年。僕は君と苗字を共有しようとした。
有体に言えばプロポーズをした。
青く晴れ渡った空と青く生い茂った草原の想い出の場所で。
やっぱり君は困った顔をして笑った。
僕は限界かもしれない。薬を飲む。
君の苗字が僕の苗字に変わることなく、今日まで来てしまった。
この先も変わることなんてないのだけれども。
もっと気に掛けるべきだったのかもしれない。
君の笑い方が変わったのは、付き合って2回目の春が来た辺りだった。
君に沢山話しかけた。我儘も言った。拗ねてみた。
それでも君は困った顔をして笑うだけだった。
僕の何が悪かったのか。
君は僕に悪いところなんてないと言った。
受け入れられないのは君の問題だからと。
それでも僕は受け入れてほしかった。
僕は限界かもしれない。君が遅れて会いに来てくれた。
君は3年半前と同じ白いワンピースを着ている。
僕が告白して、君が承諾して、付き合い始めたときに着ていたワンピース。
はにかんだように笑う君は眩しくて、愛おしくて。
本当はわかっていた。
いつからか、君が僕を遠ざけていたことに。
嫌われようとしていたことに。
でもいつからか、君の困った顔も好きになってしまった。
僕を気にかけているから、そうやって困った顔で笑うのだから。
君に会いに来たよ。愛してる。
あぁ、やっぱり君は困ったように笑うんだね。
――あとがき―――――――――――――――――――――――――――――――
久々に文章を書きたくなったので書いてみました。
文量を増やしたかったのですが、とりあえず、公開することが重要かなぁ。
なんて言い訳をしたかったわけじゃないけど。
やっぱり読者さんも困ったように笑うんだね・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます