おねだり

家族の夕飯が終わると、オカメさんは、一日の内の最後の放鳥タイムになります。




私が急ぎめに夕飯を終えると(なぜ急ぐのかは『合図』の回をご覧下さい)、オカメさんをケージから出します。

ケージの扉が開くと、サーッと飛んで出て、まず冷蔵庫の上へ。

そして、台所で私が片付けを始めるのを待って、棚の上に移動します。


棚の上に止まったオカメさん、ソワソワとしながら、私を見ています。

足をチョコチョコと動かし、つぶらな黒い目で私を見上げるのです。


『おかあしゃん 青菜ちょうだいな』


そう、オカメさんは毎日、この時間に棚の上で青菜を食べるのが習慣なのです。



オカメさん、欲しいものがある時、こうしてチョコチョコと足を動かして、欲しいものを持っている人を見上げます。


とうもろこしを食べている人。

みかんを剥いている人。

爪楊枝を手にした人。


持っている人の側に飛んで行き、お目々くりっとさせて、やや首を傾げて下からおねだり。


『それ ちょうだいな』



おおおっ、かわいいっ!

かわいすぎるぞ、オカメさーんっ!



美少女のあざとい上目おねだりにも勝る、オカメさんの最強おねだりです。


これをされると、誰もが手にしているものを渡さずにはおられません。

「はいはい、ちょっと待ってね〜」

家族は皆、どこかデレた様子でオカメさんに手のものを与えてしまうのでした。

オカメさんは満足気です。



……因みに。


このかわいいおねだりを長く見たくて、青菜を手にしたまましばらく待たせていると、しびれを切らしたオカメさんが手に飛び乗って指ごと噛じられます。


いったーい!!


……おあずけは程々にしましょうね。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る