失恋

ペットショップに行くと、ペットのおもちゃって、結構な種類が売られていますよね。

鳥のおもちゃも、たくさん陳列されています。


鳥のおもちゃは、大体がケージの中に設置して、嘴で突付いたり噛ったり、ブランコのように乗って揺らしたりするものが多いようです。

最近は、おやつを隠して探させる、知育玩具のようなものも増えました。

動画やテレビなんかで、インコ達は頭が良いのだと周知されてきたからでしょうか。




うちにも市販の鳥のおもちゃはあります。

噛り木や、ビーズと一緒に、ベルが吊るされたおもちゃ。

以前はケージの中に吊るしていました。


オカメさんがガジガジと噛ったり、ツンツン突付くと、チリンチリンと可愛らしく音がするのです。

その音が可愛らしく、私は家事をしながら音を楽しんでいたものでした。


カシカシ、チリン。

コツコツ、チリン。


うーん、かわいい音。

良い感じ。


チリン、チリン、ウピ…


ん?


ウピ…チリン、ウピピピピ……


待て待て、オカメさん!

その声はラブコールではありませんか!?


……なんと、オカメさんはおもちゃに恋して、求愛していたのです。

疑似彼氏…。



実はおもちゃに恋して求愛行動をすることは、インコには珍しいことではありません。

鏡に映った自分に恋して、一生懸命アピールしたりする子もいます。

意外とナルシスト?


うちのオカメさんも、すっかりおもちゃに惚れてしまった様子。

一日に何度もアピールするので、かわいそうですが放鳥中にこっそり撤去しました。

発情に発展してしまうと産卵モードに入ってしまうので、好ましくありません。 

無精卵を度々産むことは、命の危険にも繋がってしまうのです。



さて、放鳥を終えてケージに戻されたオカメさん。

ケージの角を見て、一瞬首を傾げました。


引き裂かれた二羽のオカメインコ。

(おもちゃだけど…)


ああ、ごめんなさいオカメさん。

あなたと彼氏(疑似)とは結ばれない運命なの。

おかあしゃんを許してちょうだい…。


ちょっとおセンチになって見守ったおバカ飼い主を尻目に、オカメさんはすぐにごはん入れへ。

モリモリ食べて、羽繕いが始まりました。


……うん、全然気にしてなかったみたいです。



そんなわけで、うちのおもちゃは今も棚の奥で眠っているのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る