黒い部屋

裂けないチーズ

第1話

目を覚ます。全く光を感じない。部屋が真っ暗と言うか真っ黒らしい。ならば、ここは私の家ではない。心は部屋に現れると言うが私の心はこんな暗黒ではない。もっとキレイな、澄んだ色をしている。と言うかここは部屋なのだろうか。そこに壁があるのか。無限があるのか、さっぱりわからない。余計なことをすると余計なことが起こりそうで動けないでいた。兎にも角にも、私は超越的不思議空間に閉じ込められた。天罰だろうか。心当たりがないわけではない。

 学校の帰り。イライラして道端にあったわけのわからん地蔵に蹴りを入れたのがいけなかったのか。でもあれは結局、私の足にアザができて地蔵はケロッとしていた。それとも戯れようと思って近づいた猫に顔を引っ掻かれてつい首を絞めてしまったやつか。あれも余計に顔の傷を増やした。あるいは身長が高いくせに私の前の席に座ってきた男に腹が立ってヤツの椅子を思いきり蹴ったのがダメだったか。男はサークルの先輩でその後とんでもないくらいに気まずくなった。

 そう考えるとどれもしっかり罰を受けている。追加で罰を与えるのはさすがにやり過ぎではないか。推理に行き詰まりそうになった時ドアが開いた。

「おはよお。びっくりしたか」

 外に見えたのはボロアパートの廊下。ここは私の家だった。見事にはずれた。何が超越的不思議空間だ。何だそれ。ハズカシスギル。全身鳥肌。

「おい。無視するなよ」

 狭い玄関で伊藤が無邪気に笑っていた。

「この真っ黒はお前がやったのか」

「そうだよ。びっくりしただろ。世界一黒い塗料をぬりたくたったんだよ」

 頭おかしい。いったいどうやって中に入ったのか。

「あっそうだ。暑いからって窓開けて寝てるけど、あれ気をつけたほうがいいぞ。お前、一回寝たら起きないんだから」

「余計なお世話だ」

 だいたいそんなことする奴は伊藤しかいない。私の部屋は三階だ。

これはどうやって片付けるのか。

「片付けはそのうち。気が向いたらやるよ。あはは」

 はぁ。何だこいつ。イライラするな。

私は寝床から飛び出て、伊東へ迫った。そして、喉元を掴む。

 私はつい、力を入れてしまった。

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黒い部屋 裂けないチーズ @riku80kinjo

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