第2話 炎
炎を取り囲みあがる奇声。
その炎と奇声の中で
建物の名を本能寺と言った。
・
一人は
その顔は若い女と見間違えるほどの
もう一人は、首、
青年は白い
痩身の美しい青年は、己より頭一つ以上背の高い黒い大男を見上げ、黙ったまま頷く。黒い肌の大男も真直ぐに美しい青年を見つめ、その合図に少し目を伏せてから、これも又、黙ったままで頷く。
二人は互いにそれを確かめると、
・
炎が上げる消失の音と熱はけたたましく夜空に舞い上がり、炎の熱はそれを囲む者達を激しく熱し、その高揚した心を更に
「信長はぁああ
「信長をさがせぇえええ!」
激しい戦場で、一人の男を探す野太い声が駆け巡る。
「光秀様、
光秀と呼ばれた
「信長様の首は
その一言だけで、
その度に、
「信長の首をさがせえぇぇえええっ!」
「信長を逃すなっぁああああ!」
夜空を焼くその炎の熱さすらも解らぬ様子で、右手に
「光秀様、光秀様!落ち着き下さい!」
「この激しい火の手では、生きて居れるモノなどは居りませぬ!」
それでも光秀は冷ややかに
「信長様の首は未だか」
現にその目は微かににじんで見える。
黒い夜空を焼く
その炎を囲む色とりどりの
拡がり、
その中で絞り出される冷たい呟き。
「信長様は未だか」
その時、燃え盛る炎の中で本能寺が大きな音を立てて崩れた。
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