第17話 オリエンテーション1_Fクラス
――SIDE.明都院 割美
▽千堂先生
「は~いみんな~ まずはこれから一人ずつ自己紹介をしてもらいま~す
名前と得意だったり使ってみたい武器、
目指している【下級ジョブ】などを教えてください!
その後は他クラスの1年生と一緒に学園にある各施設を回っていきますよ~
はぐれないようにしてくださいね~
それとダンジョンを間近で見るのは初めてだろうから
最後は他クラスと分かれて入口の視察をしま~す」
学園生活2日目、自己紹介……もといFクラスにおける主要キャラクターの紹介が始まる。Fクラスはダンジョンと並んで主人公のメインとなる舞台で、攻略対象キャラも多く在籍している。彼ら彼女らと共にトラブルを乗り越えて成長していくのがメインストーリーの主な道筋だ。
他クラスにも攻略対象キャラはいるが……今は省略。ちなみにFクラスのネームドキャラは主人公とホヨヨちゃん以外ラブたんの【上級ジョブ】をもじった名前が付けられている。
改めてクラス内の人物を見回してみるが……やはり主人公の弘前くんがいない。私やホヨヨちゃんのように原作と見た目が変化しているネームドキャラもいない。
そうなるとこれから降り掛かるであろうたくさんの面倒事は……一体誰が処理していくべきなのだろうか。主に私だろうな。少なくとも私がワルミの運命を捻じ曲げてしまった余波はあるだろう。最低限責任は取らなければ。
しかし他のメンバーで対処できるのなら出来る限り干渉を控えたい気持ちもある。何故ならトラブルの解決は彼らの心身的成長に直結するからだ。あくまでも私はFクラスの一員でしかない事を忘れてはいけない。
▽
「僕は
武器は主に細剣と魔法杖を使う 【マジシャン】希望だ よろしく」
くすんだ明るい青色の髪と細長いスタイリッシュな眼鏡が似合う定村くん。寮では主人公のルームメイトであり、主人公やFクラスを支えてくれる準主役。主人公に比べて理知的で冷静だが、その胸の内には熱い正義感を持つ好青年。一部女子プレイヤーには主人公とのカップリングが人気だが、どちらが左側なのかは意見が真っ二つに分かれている。
ステータスは主人公と同じく万能型だが、ややMNDが低くINTが高い。本人は【マジシャン】希望と言っているが、どのジョブにも安定した適性を持っている。元ネタは【サムライ】。
▽
「私は
武器は剣と盾、【ファイター】として友を守れる騎士を目指している
皆よろしく頼む」
艶やかなブロンドのストレートヘアにエメラルド色の瞳、筋肉質で引き締まった体の原戸さん。攻略対象キャラ。親が剣術の師範代で、真面目で忠義を重んじる騎士道精神の持ち主。高潔で美しい立ち振る舞いは男子からの人気が高い。やや喧嘩っ早いのが難点。
ステータスはSTRとVITが高くAGIとMAGが低い前衛型。強力な重装備で身を固めれば優秀な壁役になれるだろう。元ネタは【パラディン】。
▽
「あ、あの……
武器は…短杖を使います…【クレリック】志望…です」
ふんわりとわずかにウェーブがかった桃色の髪と同じく桃色の瞳。体を少し丸め、気弱そうに話すのは毘沙さん。攻略対象キャラ。今は姿勢が悪いので分かりづらいが、その制服の下には見事なプロポーションが眠っている。庇護欲を掻き立ててくるような立ち振る舞いは原戸さんと並んで男子からの人気が高い。
ステータスはSENとAGIが低くVITとMNDが高い。後ろで回復や補助をさせるのもいいが、耐久力が高いので前衛にも向いており、回復と壁役を同時にこなす【ヒーラータンク】型もアリ。元ネタは【ビショップ】。
▽
「
武器は長杖、【マジシャン】志望 あたしの勉強の邪魔はしないでよね」
薄紫色のツインテールに気が強そうなブドウ色の瞳、ツンツンした性格のチビッ子、草紗さん。攻略対象キャラ。人当たりが強いため孤独になりがちだが、本音は皆と仲良くしたい寂しがり屋。足手まといになるのを恐れて背伸びをしがちないじらしい子だ。かわいいね。
ステータスはSTRとVITが低くINTとMAGが高い純後衛型。攻撃魔法はもちろん、高いMPと豊富なスキル枠を活かして回復や補助も行える魔法のエキスパートだ。非常に打たれ弱いので急にポックリ逝かないか心配。元ネタは【ソーサラー】。
▽
「俺は
武器は長物、【ファイター】を目指している! よろしくな!」
燃えるような鮮やかな赤色の髪を短く刈り、元気よくハキハキと喋るのは鈴瀬くん。熱く真っ直ぐな性格で、主人公や定村くんと一緒にクラスを引っ張るリーダー気質。学業の成績はあまりよろしくない。
ステータスはINTとMAGを犠牲にSTRとVITを極めた典型的脳筋タイプ。AGIもやや低く扱いづらいが、重武装から繰り出される強烈な武器攻撃はアタッカーの要として安定した強さを持つ。元ネタは【ベルセルク】。
▽
「はよ~っす ウチは
武器はダガー、【シーフ】志望ッス よろしゃ~す」
鮮やかな金髪と健康的に焼けた肌、バッチリキメたメイクがイケてるギャル、朝田さん。攻略対象キャラ。誰にでも気さくに話しかけていく押しの強さと優しさ、ここぞという時にはしっかり決めてくれる頼もしさもあるクラスのムードメーカーだ。
ステータスはSENとAGIが高くVITとINTが低いスピード型。軽量武器を両手にそれぞれ持たせた【二刀流】による華麗な連続攻撃は必見。打たれ弱いのが欠点。元ネタは【アサシン】。
▽
「
武器はメイス、【クレリック】志望です よろしくお願いします」
濃いブラウンのおさげ髪に大きめの丸眼鏡。誠実で控えめな性格の芽木さん。非攻略対象の仲間キャラ。皆からは「委員長」と呼ばれていて、鈴瀬くんとは別のベクトルでクラスをまとめる縁の下の力持ち。草紗さんとは幼馴染で、仲睦まじく一緒に勉強している事も多い。
ステータスはAGIが低くSENとINTが高い万能型。前衛・後衛どちらも器用にこなせる名実ともに優等生だ。余談だがとあるストーリーをクリアするとINT依存の光属性魔法攻撃、《メガネビーム》を習得する。ネタ……と思いきや隙が少なくパワーもある便利なスキルだ。さすが委員長だぜ。元ネタは【メギストス】。
▽ホヨヨ
「ホヨは海月野 火夜代です!
武器はスティレット(※1)、なりたいジョブは…まだ決めてません!
よろしくおねがします~」
スティレット……なるほど。ホヨヨちゃんのSTRではまともな武器を持つことが出来ず、かと言って軽い武器では力の無さが余計に目立つ……攻撃方法が限られる代わりに軽さと殺傷力を併せ持ったこの武器はピッタリだろう。慧眼ではあるが自ら導き出したのか、或いは誰かの助言だろうか……普通の冒険者ならレベルを上げれば相応にSTRも高まり、攻撃そのものがパワーアップする。こんな小手先のテクニックなど無用となるのだ。武器の種類や歴史に詳しくなければ辿り着けない答えだが……まあ、よし。
他のFクラスメンバーは……残念ながらホヨヨちゃん未満の非ネームドキャラだ。「Fクラス男子」「Fクラス女子」で括られてしまう。ホヨヨちゃん自体もラブたんでは「かわいそうな女子」だったが、REではネームド化して専用のグラフィックまで追加された。昇進したはいいが酷い扱いもグレードアップした。かわいそう。
そして改めてホヨヨちゃんの容姿を観察してみる。
120cmあるかどうか分からない高校生らしからぬ背の低さ、ほんのりと肉付いているもののかなり細い線の体。やや青みがかったプラチナホワイトの髪、ふんわりとした前髪と長いもみあげは、まるで二本足のクラゲのよう。そして際立つビッグなアホ毛…身体測定時には潰されて身長に加算されない。
瞳は神秘的な青白い光を湛えていて、肌は真っ白でもちもちとした弾力を感じさせる。〆にはふにゃりと緩みきっただらしない笑顔……うむ、少々変われどやはりクラゲちゃんだ。
この「クラゲちゃん」というのは彼女……もとい彼のあだ名だ。入学後しばらくして誰からともなく付けられる事となる。しかし女子制服なのも相まって本当に女の子にしか見えないな……。もしかしてコレ女神様の趣味とかじゃないよね?
さて、最後は
▽ワルミ
「わたくしは明都院 割美………
武器は剣、【ファイター】を志しておりますわ どうぞよしなに………」
貴族っぽい所作をワルミの記憶から呼び起こし、そっとスカートの端を摘まんでカーテシー流のお辞儀をする。こんなのでも一応貴族。相応の立ち振る舞いを心がけなくては。
内なるワルミがオホホオホホと高笑いを強要してくる。おやめなさい。初手でイロモノ扱いされてしまってはたまったものではありませんわ! 拗ねてもダメなものはダメですわ!
さてさて周りの反応は……あ、やっぱりダメそう。余計に距離を取られてしまった。明都院財閥はダンジョンに関わる事業をいくつか展開しているため、この名前を知っている者も多い。その令嬢が何故かFクラスにいるんだから、警戒されてしまうのも無理はない。誠実な態度を示して少しずつわだかまりを解いていくしかないだろう。
さて、お次は施設案内……入学式以来の他クラスとの邂逅だ。
(※1)スティレット
「突き刺す」事に特化した刃を持たない角錐型の短剣。
切りつける攻撃が効きにくい場合を想定して、
防具の隙間や表皮の薄い急所を狙って刺し込む「鎧通し」系の武器種。
小型で軽量ながらも貫通力が高く、殺傷性は高い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます