始業式
「あぁ、今日も生きてる」
悪夢にうなされて目覚めた朝。
いつから悪夢を見るようになったのだろう。
寝る前に6時にセットした目覚まし時計は今日も活躍することなく静かな部屋にポツンと存在している。悪夢を見たせいか変な汗をかいていたらしく服はべたっとしていて気持ち悪い。そんなことを思いながら部屋の窓を開けて薄暗い空を見ながら涼しい風を浴びる。
しばらくするとリビングから母親の声が聞こえてきた。
「早く起きなさい、朝ご飯だよ」
私の家族は毎日決まった時間に家族そろって朝ご飯を食べると決まっている。ここでいらないというと怒られることもよくあることだ。
朝ご飯を食べ終わるとうねった髪の毛をヘアアイロンで直して、今日から始まる高校生活に期待と不安を抱えながら高校生活中に成長するからと採寸の時に言われて買った丈の長い制服に着替える。
「行ってきまーす」
家族がみんなバタバタしている中そう言って家を出る。家族からの返答はないけどいつものことだから気にしない。玄関をでて階段を降りて駐輪所に停めてある学校から貸出されている自転車のカゴにスクバとリュックを詰め込む。学校が山奥にあるので、自然豊かな長い道のりを進んでいく。家にいるのが退屈で早めに出たせいか同じ制服を着た子、近くの高校だと思われる子とたまにすれ違う。後ろから来た同じ制服を着た子に抜かされないように必死で自転車を漕ぐ。
学校の駐輪場につくと指定された場所に自転車を停めて、リュックからタオルを取り出し久しぶりに漕いだ自転車でかいたおでこの汗を拭きとる。通学だけで疲れを感じながら昇降口に向かう。自分の下駄箱を探し見つけ開けると錆びているせいかギィィィと鈍い音が出るのを少し気にしながら教室に向かう。
教室につくと何人かもう教室にいて楽しそうに話している。黒板に始業式の日程を見て、決まった席に着く。幸運なことに窓際の一番後ろの席だった。HRが始まるまでなにしようかと考えていると席が近い子に声をかけられ軽い挨拶をする。挨拶が終わってしばらくすると担任と思われる太っちょな40代後半の男の人が入ってきてHRが始まりその後担任の指示に従って出席番号順に並び一列になって体育館に向かう。始業式が始まり、早起きしたせいか睡魔と闘いながら校長先生、理事長先生の話を聞く。睡魔に負け目覚めるとちょうど始業式が終わるころだった。司会の先生がクラスごとに教室に戻るように告げると出入り口に近いクラスから教室に戻り出す。
教室に戻りSHRが終わると今日はもう下校だった。下校する時間はどの学年も同じだったので昇降口、駐輪場は人で溢れていた。
「明日から本格的に高校生活が始まるのか」
自転車を漕ぎながら私はそう呟いた。
中学時代勉強しかしてこなかった私は高校生になれば友達ができ、もしかしたら好きな人ができるかもしれない。
そんな期待をこの時はまだしていた。
白色のキャンバス 無色 @nemu_3i
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。白色のキャンバスの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます