クフ王のピラミッド

松井みのり

クフ王のピラミッド


 この物語は、AとBの二人の会話劇から成り立ち、それで終わる。それだけである。


A:クフ王のピラミッドって知ってる?

B:ああ、お墓だか儀式に使われたヤツ?

A:そう。アレって誰がつくったんだろう。

B:そりゃあ、クフ王だろう。

A:いや、アレをつくったのは奴隷たちだよ。

B:まあ、そうか……。何を言いたいんだ?

A:「クフ王はなぜアレをつくったのかな」と疑問に思ってね。

B:自分が偉大な王だと後世まで伝わるようにかな。

A:まさに、ぼくやきみが奴隷の名前を知らないように?

B:嫌味なことを言うなよ。神様を信仰してつくったかもしれないだろう。

A:でも、実際にクフ王は成功したわけだ。奴隷よりも自分のほうが価値があることを証明したんだ。

B:そうかもな。もし、それが目的だったら、クフ王は嫌なヤツだ。

A:そうかな……。クフ王は悲しんでいたかもしれないよ。アレをつくってしまえば、汗をかき、必死に努力した人間よりも、自分の名前が残ることを。

B:お前、どうしたんだ?何かあったのか?

A:いや、別に。なんでもないよ。言ってみただけだ。


 これで、この物語は終わる。

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クフ王のピラミッド 松井みのり @mnr_matsui

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