不可思議な彼女

大和成生

第1話 秋の空

女心と秋の空。

女心は変わりやすいという例えだ。


秋は澄み切った空と過ごしやすい柔らかな気候で食物も良く育つ。でも台風前線が活発で大雨や大風も起こり易い


さっきまで穏やかに笑っていたと思ったら、もう大泣きしたり怒ったり。その変わりやすさに男は戸惑う。秋の空だ。


俺には姉が三人いた。従姉妹は五人全員女。

小さい頃は女の子の遊びしか知らなかった。幼稚園でもなぜか女の子しか寄ってこなくて、写真はすべて女の子と一緒に写っている。

女兄弟がいる男は女に夢を持てないと言うが、俺はまさにその典型だ。


女同士の会話の80%は、男が聞いてはいけない事で出来ている。姉にとって弟と言うのは男ではない。女が三人以上集まる、そしてその場に男がいないと聞いてはいけない事、いや聞きたくなかった事を嫌でも耳にする。夢など見れようはずもない。

幼い頃から女性に慣れていたせいか、俺は女の子にモテた。どうすれば泣くか怒るか喜ぶか、なんとなく学習していたからだと思う。好きな子をイジメるという事もなかった。そもそも好きな子なんていなかった。女の子の行動は大抵は読める。どう言うつもりで話しているのか、何を期待しているのか、どう言えば満足するのか。

何事も想像がつくというのは退屈だ。俺にとって女の子は可愛いくて退屈な生き物だった。


女の子と遊んでばかりだった俺に、小学生の頃やっと男の友達が出来た。そいつはおっとりしていて大人しくて、外でボール遊びをするより教室で絵を描いているようなやつだった。女の子とのおままごとばかりで、まだ男の子の元気の良さについていけない俺にはそいつののんびりとした穏やかさが居心地良かった。学年を重ねていくと徐々に男の友達も増えたが、やっぱりそいつといるのが一番落ち着いた。そいつとは高校でもクラスが一緒になった。

そこで俺達はおかしな女の子に出会った。

彼女は可愛くもなく退屈でもなかった。

彼女は俺の親友に一目惚れした。

正確には俺の親友の絵に、一目惚れしたのだ。

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