君の薬に草なプロポーズ

だぶんぐる

君の薬に草なプロポーズ

「君の心を草生えすぎの大草原にしてみせる!!!!」


それがプロポーズの言葉だった。


雪女。


それが高校の時の私のあだ名。


真っ白で冷たくてちっとも笑わないから。


だって、笑えないから仕方なかった。


心の病だとお医者様には診断されて、色んな治療法、食事療法や薬、色んな方法を試してみたがちっともうまくいかなかった。だから、諦めた。

別に笑えなくても構わない。

人とうまくコミュニケーションとれなくても。

嫌われても。

苛められても。

構わない。


仕方ないから。


なのに、馬鹿な男が言ってきた。


「俺はお前を笑顔にしたい!!」


毎日毎日馬鹿みたいに色んな方法で私を笑わせようとした。


笑えなかったけど。


それでも、笑わせようとしてきた。


何度も何十度も何百度も馬鹿なことを言ってきた。


駄洒落も小咄もアメリカンジョークも告白もされた。



笑わせようと色んな事をされた。


沢山のネタを仕込んだ笑わせデートにも連れていかれた。


何度も何度も何度も連れていかれた。


大学生になって、家に帰るたびにネタが仕込まれていた。


毎日毎日色んなネタをやって滑ってそれでも笑わせようとしていた。


そして、


「君の心を草生えすぎの大草原にしてみせる!!!!」


プロポーズされた。

正直、とんでもなくスベっていた。

だけど、






「ふふ……」


大量のネタをやり疲れて眠ってしまったらしい彼の変な髪型の頭を撫でながら昔を思い出しながら、あの時と同じように零れる笑みが止まらなくなる。

撫でる手の薬指だけにある違和感がたまらなくくすぐったい。


「君が私の心に生やした草。それが私の病を治す薬草になったんだね……」

「俺より面白いこと言わないでくれるかなあ!」


そんなことを叫びながら変な顔をする。

今日も私の心は薬草の大草原。君がはやしてくれた草でいっぱいだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君の薬に草なプロポーズ だぶんぐる @drugon444

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ