第96話 ヤムイモというのはなかなか面白い作物らしい

 さて、交易商人から石鎌やお守りとしての宝貝の貝殻、オニキスなどを手に入れるとともに、しなびた芋を手に入れることができた。


 しかし、だいぶしなびているしこれを植えて芽が出るのかはネットで調べてみたほうがいいか?


 というわけでちょっと調べたがおそらくこの芋はギニアヤムという種類のヤムイモのようだ。


 ヤムイモは品種にかかわらず休眠期間があるらしく、その時は含有水分が20%から30%ほど減って、固くてしなびた状態になるらしい


 ギニアヤムの原産地のギニアでは乾季は11~5月くらいで、雨季は6~10月くらいなので冬の間は乾燥に備えて休眠しているんだな。


なので春先に種芋を埋めて冬ぐらいに収穫を行う。


なおギニアヤムの種類としてはホワイトギニアヤムとイエローギニアヤムがあるが、これらは交雑可能でアフリカで最も生産量が多く,熱帯雨林から湿潤サバンナの疎開林まで広く栽培されているらしい。


なお、熱帯アジアや南太平洋諸島ではヤムイモはトゲイモとダイジョと呼ばれる品種がメインだが、このあたりでは乾季が5月から 10月くらいで雨季が 11月から 4月だったりするので、11月ぐらいに種芋を植えて5月ぐらいに収獲するという感じになるらしいが。


 ギニアヤムは日本の長芋や自然薯と同じヤマノイモに属するため、すりおろせば”とろろ”にもできるようだが日本の長芋などに比べて粘りは少ないようだ。


 そしてギニアヤムには毒はないようなので手間をかけて毒抜きする必要はないらしい。


 栽培にはヤムマウンドという山型にした土に種芋を植えるか、普通に穴をほって種芋を植えるかが一般的なようだが、ヤムマウンドを作るのは相当重労働らしいので俺がやるには厳しそうだな。


 そして肥沃な土地で大きな種イモを用いて栽培すると10ヵ月で25kgと相当大きくなるらしい。


 市場に並ぶヤムイモの写真などを見ると、たしかにバカでかい芋がゴロゴロ置かれているが、最初は遠近法による目の錯覚かと思ったぜ。。


 栽培期間は早生品種で6ヵ月、晩生品種で10ヵ月程度だが、早生品種は湿潤サバンナの疎開林まで分布するが、晩生品種は熱帯雨林から低緯度の湿潤サバンナでしか栽培されていないようだ。


 これは気温の問題かな。


 とするとこの芋は早生品種で6ヵ月ほどで収穫できるが、おそらくそこまでは大きくはならないのだろう。


 ちなみに熱帯雨林では雨が多く石灰分、要するにカルシウムが溶けて流れ出してしまうので、それを補うために、焼畑すなわち伐採した木を燃やして灰にしてアルカリを補充して栽培するのが一般的なようだ。


 キルベト・クムランの周囲は石灰岩が多いからそのあたりは多分問題ないだろう。


 気温的にはエリコ周辺はヤムイモが栽培できる北限には近いと思うけど、多分大丈夫だろう。


 ちなみに縄文時代の日本でも山で自然薯をほったり、里芋を食べたりしていたらしい。


 種芋の植え付けは5月くらいにやることになるが、エリコの周辺は水浸しになるから、やはり栽培はキルベト・クムランでやるしかないな。


 エチオピアなどでは芋の栽培と麦の栽培が両方行われているが、芋は怠け者の食べるものとしてあまり好まれていないらしい。


 麦と違って除草や鳥を追い払ったりする必要がなくて種芋を植えれば収穫まではほとんど何もしなくてもいいからというのがその理由のようだ。


 まあ、この時代だと麦に対しても細かい世話をして育てるわけじゃないけど、手間がかからないならそれに越したことはないよな。


 今年の増水期はキルべト・クムランでやることがたくさんありそうだ。

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