第53話 子どもたちが集団で走り回る光景は今も昔も一緒だな
さて、俺はアイシャを子どもたちに仲間として迎え入れてもらった。
「あちしアイシャ!
よろしく!」
「あたしはマリアだよ」
「僕はヤコブ!」
「僕はシモンだよ」
まあ、マリアとかアイシャという名前は被ってる場合が多いんで、どこどこの家の子供のマリアとか言う感じに呼ばれるけどな。
俺たちの子供のアイシャの場合は”リーリスさんのところのアイシャ”と呼ばれるわけだ。
聖書でも12使徒にセベダイの子ヤコブとアルパヨの子ヤコブがいたり、ヤコブの子ユダとイスカリオテのユダがいたり、ペテロと名前を変えるシモンと熱心党のシモンがいたり、イエスの母マリアとマグダラのマリア、さらにはベタニアのマリアに小ヤコブとヨセの母マリアまで居るくらだ。
なんで名前をつけるのがかなり遅い理由の一つでもあると思うんだよな。
で、今日はアイシャ達は同じくらいの子どもたちで集まって遊ぶ日だ。
遊ぶと言ってもみんなで集まって、ただ走り回る感じだけどな。
「あいしゃーあそぼー」
アイシャをその友達が迎えに来たようだな。
「あーい、いまいくねー」
んしょんしょと服を着替えてからアイシャは俺たちに向かっていった。
「じゃあいこー」
俺は頷く。
「おう、じゃあいこうか」
バスケットにパンを入れて俺に手渡したリーリスも頷いた
「怪我しないように気をつけるのよー」
アイシャはコクコク頷いた。
「あーい」
それから俺はアイシャを前にして家の外にでていく。
リーリスは息子の世話のために留守番だな。
家の外ではアイシャと同じくらいの年齢の女の子がニコニコしながらアイシャを待っていた。
家の外は綺麗な秋晴れで青空が広がっている。
「ごめんねー、じゃあいこー」
「うーん」
アイシャと女の子は手をつないであるき出した。
俺はその後をのんびり歩いて行く。
アイシャに仲のいい友だちができてよかった。
そして小さな子どもたちが10人ほど集まっている広場に到着する。
子どもたちの様子を見守る役割は子供の親などが持ち回りでする。
皆が集まったことで自然と子どもたちが走り回りだす。
先頭になって走る子供、それを追いかける子供、マイペースに走る子供など様々だがみんな楽しそうに笑顔で騒ぎながら走っている。
子供も雨の日は家の中で暇つぶしをするしか無いけど晴れた日はこうやって走り回るのが一番の楽しみなのだ。
今まではよたよたしか歩けなかったから、余計に走り回れるのが嬉しいのだろう。
”わーわー”
”おーおー”
そのうちバターになって溶けちゃうんじゃないかというくらい同じ場所をぐるぐる回っていたり、ハチのようにあっちこっちに走り回ったりと走り方も個性があっていい。
そしてしばらくすると皆疲れ果てて地面の上に転がるのだ。
「じゃあそろそろ休憩にしよう」
”はーい”
秋の日差しを浴びて適度に暖められた土はポカポカ陽気も相まって俺たちの眠気も誘うがここで眠るわけにも行かない、子供達も起きあがりこぼしのようにぴょこんと立ち上がる。
なかなか起きれない子供は他の子供が手を取って起こしてあげてるな。
「さてさて、休憩所までいくぞー」
”はーい”
なんかもう眠いのか皆フラフラしてる。
子供たちをまとめて昼寝させることができる集会所にたどり着いたら皆寝藁に倒れ込むように転がって寝息を立てはじめた。
”くーくー”
皆、天使のように愛らしい寝顔だ。
しかしうちのアイシャが一番かわいいと思うのは親ばかだからか。
そしてそのうち子どもたちが目を覚ます。
「のどかわいたー」
「おなかすいたー」
「しっこー」
子どもたちがめいめいに欲求を訴えるので、まずはおしっこという子供を外に連れ出しておしっこをさせる。
「すっきりー」
喉が渇いたという子供には水瓶からコップに水をすくって水を飲ませる。
「ぷはー、おいしかったー」
そして、みんなでお昼ごはんだ。
今日はドングリパンにナツメヤシをペーストにして塗った物。
「あまーい」
「おいしー」
ニコニコしながらナツメヤシのペーストをたっぷり塗ったドングリパンをパクパクと子どもたちは食べていく。
そしてお腹がいっぱいになったら、もう一度みんなお昼寝時間だ。
よく寝る子供はよく育つというし、たっぷり寝たらみんな元気に育ちそうだな。
走りたくなったら走る、走り疲れたら寝る。
子供のうちはそういう感じでいいんじゃないかな。
そして子どもたちが起きだしたら、もう一度皆でかけっこだ。
そんなことをしているうちに陽も傾いて空が黄色くなったら解散になる。
「ばいばーい」
「またねー」
アイシャは来るときと同じように、友達と手をつなぎながら家に帰る。
「たのしかったねー」
「うん、たのしかったー」
そして家の前でお別れをする。
「またねー」
「またねー」
今日は子供が走り回るのを見たり、昼寝をさせたりしただけだったが、子どもたちが元気に遊び回る様子を見るのもいいものだ。
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