第46話 雨の日は家の中でのんびりすごそう
さて、畑への麦や豆、野菜などの種まきは終わってエリコにはのんびりムードが漂っている。
晴れた日には畑の麦などを食いに来るガゼルや猪などを見張って、作物を食われそうになったら弓で射てその肉は美味しくいただいたりする。
俺は娘を連れて以前娘が種を蒔いた所で芽が出てきた物を娘に見せる。
娘がドバっと麦の種を落としたところだな。
「ここの麦なんか元気ないだろ」
娘は頷く。
「あい」
「あんまり距離が近すぎると水を取り合って、こうなっちゃうんだ」
娘はしゅんとしている。
「むぎしゃんごめんちゃ」
俺は娘の頭をなでてやる。
「まあ最初は知らないからしょうがない。
だから、来年はちゃんと間を空けてあげような。
娘はコクリと頷く。
「あい、あかったでし」
娘が笑顔で言った。
やるべきことを一つ覚えたのは大変良いことだ。
そして別の雨の日。
雨具がない冬のエリコでは雨が降ったら農作業はお休みだ。
まあ、獣も雨の中動くやつはそんなにいないが、家畜小屋やサウナ風呂も離れてるし、そのうち葦を束ねた簑でも作ろうかとは思うけどな。
「とーしゃんひまー」
娘が退屈そうに俺に言ってくる。
「うーん、ひまかー?」
俺は娘に聞き返す。
「ひまー」
まあ遊びたいざかりの娘にとっては家の中でのんびり過ごすというのは暇以外の何物でもないようだ。
「うーんじゃあ何か暇を潰せることを考えようか」
娘はコクコク頷く。
「あい」
とりあえず編み物は糸がなくなってしまったので無理だ。
あ、でも毛糸のあまりはあるから糸を使った遊びならできるな。
「じゃあ、ちょっと待ってろな」
「あい」
俺は薄く削った丸い木片と毛糸を用意する。
そして木片に石錐でボタン状の穴を2つ開けてそこに毛糸を通す。
「ん、案外糸を通すの大変だな」
細い木の枝の先で糸を押し込んでなんとか通すと端を結ぶ。
「よしできた」
「できたー」
俺は糸をねじって娘に渡していう。
「その状態で糸を左右に広げてみてくれ」
娘はコクリと頷く。
「あい」
俺の言ったとおり娘が両手を広げるとねじれた毛糸がまっすぐになろうとして、真ん中の木片をビュンビュンと音を立てて回し始めた。
「すごーい!」
娘は面白がって糸を伸ばしたり縮めたりしている。
「おもろー」
ああ、娘が気に入ったようで何よりだ。
しかし、流石に単純すぎてしばらくすると飽きてしまったようだ。
「とーしゃー、あきたー」
俺は苦笑して娘に言う。
「そうか飽きたか、じゃあ次はあやとりをしてみるか」
「あやとりー!」
俺はさっき使った糸を木片から外して結び直す。
あやとりのような糸を使った遊びは世界中に有って、一人や二人だけでなく多人数で行うものや、紐を口で咥えたり手首や足も使う技などさまざまなバリエーションがあるらしい。
もっともあんまり複雑なものにいきなり挑戦したりはしないけどな。
「じゃあ、糸でちょうちょさんを作ってみるな」
俺は娘にそういうと娘は首を傾げた、
「ちょうちょ?」
「ああ、ちょうちょだ」
俺は輪っか状にした紐を左手と右手の指にかけ、糸をひねったりかけたり外したりしながら糸の形を整えていく。
「よ~しできたぞー」
娘が顔を輝かせる。
「すごーい、ちょうちょだー、あちしもやるー」
俺は指から糸をほどいて娘に渡してやる。
「よしじゃあやってみようか」
「んしょ、はじめはどうやるのー?」
「ああ、初めはな左手の親指と小指に紐をかけてな」
「こうー?」
「おう、そうそう、んで
1回ひねってから、右手の親指と小指に紐をかけるんだ」
「んーと、こうかなー?」
「そうだ、うまいぞ」
「あちしじょうずー」
ちょっと苦労したが無事にちょうちょが出来上がった。
「できたー」
「おう、よくやったな」
俺達の様子を見ていたリーリスも言う。
「それ面白そうね。
私にも教えてくれる?」
俺は当然頷く。
「ああ、皆でやろうか」
その日は俺とリーリスと娘で日が暮れるまであやとりで時間を潰した。
バリエーションが尽きたら、久々にスマホを起動して俺は知らないがこの時代の住人である娘やリーリスでもわかるモチーフのものを覚えて二人に教えたりもした。
なんだかんだであやとりで色々作ったりするのは楽しかったぜ。
その後は皆でのんびり食事して夜になったら寝る。
人生は死ぬまでの暇つぶしと言うが、戦争や競争があまり無い時代は本当に過ごしやすいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます