第2話 なぜかスマホがネットにつながって検索などもつかえるがまあありがたいと思っておこう


 さて、俺が町の人間に案内されたのはレンガを積み重ねて作られた四角い家だ。


「とりあえずしばらくはここを使ってくれ。

 交易などでこの街に一時的に宿泊するものが使う建物だ」


「ああ、わかった、ありがとうな」


 中は土間で隅っこに藁が積み上げてあってそこが寝床らしい。


 こちらも冬らしく少し寒い。


「藁の寝床か……まあ仮眠室のベットと大してして変わらないかもな」


 そしてスーツのポケットの中に入っているものを出してみる。


 服のポケットには防水のスマホと太陽電池式の充電器、イヤホン。


 ズボンの財布の中には定期、銀行のキャッシュカード、クレジットカード、Tポイントカード、病院の診察券、近くのホルモン屋のポイントカードなどが入っていた。


 後は家の鍵とか原付の鍵とか物置の鍵とか自転車の鍵とかのついてるキーホルダー。


 以前ウクライナ人が来た時に買った幸せの卵付きだ。


「うーむ、もうホルモンとか食えそうな気がしないな」


 せっかく顔なじみになって、店に行ったら”毎度”って挨拶されるくらいになってたのにな。


「当然スマホも使えないよな」


 そうおもって画面を見たら何故かつながっていた。


「なんでつながるんだ?」


 SSIDをみたらsiawase_freeと出ていた。


「よくわからんが幸福の神様がつなげてくれてるらしいな」


 ソーラーバッテリーチャージャーがあればとりあえずは充電はできる。


 試しにようつべでお気に入りのアニソンを検索して流してみた。


「おお、ちゃんと聞けるし見れるし有り難いなこれ」


 一人でさみしい夜もこれで安心だ。


 DVDになったら借りようと思ってたアニメの続きも見れるな。


「とは言えバッテリーは消耗するしあんまり無駄には使わんほうがいいか。

 とは言えエリコってどこだ?」


 何故かつながるグーグル検索で調べるとエリコ、イェリコ、ジェリコなどという項目が出てきた。


 どうやらメソポタミアでも最古の石壁がある街らしい。


「ああ、エヴァンゲリオンでアスカがシンジと一緒に住むことになった時、決して崩れぬジェリコの壁っていってた場所なのか」


 ついでにナトゥーフという言葉も調べてみた。


「ふむ、ナトゥーフ文化と言うのは人類最古の文化の一つなのか」


 この期間はちょうど狩猟と採取、牧畜と農耕の過渡期らしい。


「あんまり無駄に電池を使わないほうがいいか」


 それを調べたらとりあえず電源を落とし、防水のキャップのたぐいをきっちりしめておく。


 街に出るとナツメヤシがたくさん植えられているのが見えるな。


「ああ、やっぱり場所的には間違いないみたいだな」


 干したレンガを使い四角い家を立てているというと、そこまでは古くないようなきがする。


 街にすむ人間が身に着けているのはなめし革のようだ。


 そして彼らは弓矢を持っているが鏃は黒曜石っぽいな。


 そして猟犬っぽい犬を連れている。


 外見はアフガンハウンドとかファラオハウンドに近いのかな。


「おーい、お前さん達何処かに行くのか?」


 一人が俺に向いて答えてくれた。


「ああ、ガゼルを狩りに行くんだよ。

 お前も来るか?」


 その言葉に俺は苦笑い。


「すまん、俺には弓は使えんのだ」


 そう言ったら、おいおいというような表情をされた。


「お前さんその年で弓を仕えないのか?」


「すまん、そうなんだ」


「ちゃんとつかえるようにした方がいいぞ」


「あ、ああ、そうだな」


 この時代では基本肉は狩猟で得るもののようだな。


「まあ、ヤギの乳を絞るなり、ナツメヤシの実をとるなりはしろよ」


 そう言うと彼らは街の外へ出ていったようだ。


「山羊の乳搾りか……それも楽しそうだ」


 働かざる者食うべからずってことで、俺は山羊の乳搾りを手伝うことにした。


「さて山羊はどこに居るのかな?」


 俺は集落の長らしい女性に聞くことにした。


「すみません、山羊の乳搾りを手伝おうと思うのですが、どうすればいいですか?」


 女性はふむと考えたあと言った。


「では、私が一緒に行きましょう」


「え、いいんですか?」


「はい、それに貴方乳搾りの経験はあるのですか?」


 俺は首を横に振った。


「いえ、無いです」


「では私が教えてあげます、これを持ってください」


 と俺が渡されたのは大きな革袋。


「これは?」


 と俺が聞くと彼女は答えてくれた。


「勿論絞った乳を受けて入れるためのものですよ」


「あ、なるほど分かりました」


 そう言えばこの時代はまだ土器はないし、木の桶とかも多分無いのだろう。


 なら液体をもらさずに入れられる入れ物は革の袋ってわけだ。


 俺達は街のハズレの方に歩いていった。


「おお、山羊だ」


 山羊はパサンと呼ばれる野生の山羊が家畜化されたというが、その歴史は犬についで古いらしい。


 粗食に耐えて乳量も羊より多く気性も割とおとなしい上に、羊ほど広い放牧の場所もいらない。


 ただ毛皮や毛糸目的であれば羊が、乳量や肉質、更には農耕の耕作につかえるという点では牛のほうが優れているのだが。


「では、横から袋を山羊の乳の下に入れて受け止めてください」


 彼女は格子の間から手を伸ばして乳を絞ろうとしている、山羊には子供を見せて乳を出しやすくしているらしい。


「では行きますよ」


「どうぞ」


 彼女が山羊の乳首を親指と人差指でぎゅっと握った後、人差し指、中指、薬指、小指で握っていくことで乳が絞り出されていく。


「なるほど、そうやるのか」


「はい、一人ですと難しいので二人一組でやるようにしてください」


「分かりました」


 手で乳を絞るやり方は初めて知ったが、なかなか面白いな。

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