第31話 お前は何で組織に入ったんだ?
【勇者パーティー乙女の会】
アレスの義姉、テレス=エングラム宅にて
「それで、昨日の夜からアレスくんの姿が見えないということらしいけど、何か心当たりはある?」
「それなんですが、実は私たちはアレス君に最近避けられていて....。」
「でも何故そんなことをするのか皆目見当もつかないのよね....。」
「わたくし達としてはアレスさんと一度会って、話がしたいのですが....。」
「うーん、なるほどねぇ...。因みに今更だけど、あなたたちとアレスくんの出会いは?」
「彼が【紅】に所属していて、その中でも1番の実力を持つと聞いて、私が声を掛けました。」
「なるほど....アレスくんが裏の仕事をしていることは知っていたわけね。なら話は早いわ。おそらくだけど、アレスくんの所属している【紅】、そのアジトに行ってみるのが一番手っ取り早いわ。」
「しかし、部外者のわたくし達を中に通してくれるでしょうか?」
「難しいんじゃない?いくらあたし達がアレスの知り合いとはいえそう簡単にとはいかないと思うわ。」
「だが、実際私達にできるのはそれぐらいか....。」
「問題はアジトの場所ね。身内の私でもどこにあるか知らないのよ。」
「とにかく街で情報を集めよう。知っている人がいるかもしれない。」
こうして勇者パーティーの3人は街へ向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一方その頃.....
「で、街に来たわけだが....。レイ、お前は何がしたい?」
「私はアレスと歩いているだけでいい。」
「そう言われてもなぁ....。」
困ったな、することがないぞ。
どうしたものか考えていると.....
「あ、そういえばジャンボテリヤキンバーガー。」
「ん?腹が減っているのか?ならそこら辺の店で....。」
「違う。アレスがいつも食べているヤツ。あれを食べてみたい。」
「まぁ、別に構わないけど。」
俺達は俺がいつも世話になっている露店にやってきた。
「オヤジ~、いつもの2つくれ。」
「おぉ、アレスか!んん?そっちの別嬪さんは?」
「あぁ、こいつは...。」
「レイ。アレスのパートナー、特別な関係。」
「お前なぁ...。」
「ほおぅ、あのアレスにもついに彼女ができたかぁ。人生何があるかわからんなぁ。」
「ちげぇよ!ただの同僚!」
何でこいつは毎回ややこしくなる言い回しをするんだ....。
「ひどい。私泣いちゃう。」
そのポーカーフェイスで泣くとかよく言えたなぁ、おい。
まあしかしコイツ仮にも女の子だしフォローはしとくか。
「強いて言うなら俺の友達だ。」
「へぇ~、アレス、大事にしてやれよ。友達ってのは一生もんだぜ。」
「わかってらぁ。」
「はいよ、ジャンボテリヤキンバーガー2つな。」
「サンキュー。よし、行くぞレイ。」
俺が歩き出すと何やら後ろで耳打ちをしている。
『いいかい、嬢ちゃん。今はまだ友達でももしかしたらその先の関係になれるかもしれないぜ。嬢ちゃん美人だしな。』
『言われなくてもそのつもり。でも、オジサン見込みがある。また来る、アレスと。』
「ガッハッハー!ああ、いつでも待ってるぜ!」
笑い声に気を取られ、後ろを見ると....
なんかレイと屋台のオヤジが握手してるわ。
そして店主と別れたレイが俺の方に向かってくる。
「お待たせ。」
「何を話してたんだ?」
「それは言えない。ただあの人いい人。」
「よくわからんけど、気を許せる人ができてよかったな、うん。」
いや、俺はそれ以上なにも聞かないよ?
なんか嫌な予感するし、そう、なにもなかった、うん。
「広場にベンチがあるからそこで食うか。」
コクっとレイが首を縦に振る。
広場に着いた俺達は二人でベンチに座る。
そう、座るんだが....
「なあ、レイさんや。」
「何?」
「なんでそんなに俺の方に寄るわけ?そっちもっと空いてるよね?」
「そうしたいから。」
「そうしたいからってお前なぁ....。」
まぁ、なんだろう、どうせ言い負かされるしもうそれでいいや。
ジャンボテリヤキンバーガーを食べながら、俺はレイに気になっていたことを聞く。
「そういえば、俺が組織に入った理由は知ってるよな?」
「うん、大切なものをもう失わないため。」
「ああ、そうだ。前から気になってたんだが、お前は何で組織に入ったんだ?」
「スカウト。でも...。」
「でも?」
「続けようと思ったのは、アレスがいたから。」
何を言っているんだこいつは?
俺がいたから?どゆこと?
「ええっと、すまん、わかりやすく頼む。」
「スカウトされて組織に入った私はずっと独りだった。でもそれでいいと最初は思ってた。アレスに出会うまでは。」
「俺に出会うまで?」
「アレスと二人で初めて任務を任された時、私は一人で何とかしようとしていた。そんな私にアレスはこう言った、『何かあれば俺をを頼れ、一人でできることには限界がある。』って。」
「ああ、あの時か。」
「そう、最初は何を言っているのかわからなかった、けど。」
「けど?」
「当時の私は自分の力を過信して敵がいるところにに無暗に突っ込んだ。その結果私は捕まって、任務は失敗したと思って自害しようとした。そこに『俺の仲間に手を出してタダで済むと思うなよ?』って助けてくれたのがアレス。」
うーん、なんだろう。
「なんでそんなに俺のセリフ覚えてんの?」
「そこで私はこう思った、私は今この人に守られたんだと。」
あ、俺の質問はスルーね、おっけ、了解。
「それまで自分なんて捨て駒だと思っていた私に、命の価値をアレスは教えてくれた。でも、それと同時にこうも思った。『じゃあ、この人は誰が守るの?』って。そして私は、助けられたお礼として組織にアレスがいる限り、同じ場所でアレスを助けようと思った。」
「それは....。」
俺は今まで自分は守る側の人間で、守られるなんてこと考えたことがなかった。
だけど...、そうか、お前がいたんだな。
「....ありがとうな、俺の事見守っててくれて。」
「これはお礼だから。」
「いや、でも俺お前が色んなところについてきてまで俺の事見守ってくれてたのにストーカーとか思ってたし....本当にごめんな....。」
「それは普通にアレスを観察するためだから気にしなくていいい。」
.....そっか、そっか、気にしなくていいか....。
「いやまてい!結局ストーカーじゃねえか!」
「私とアレスの仲、大丈夫。」
「いや、よく考えろ?例えば俺がお前の事ずっと隠れて見てたらどう思う?嫌だよね?」
「私はアレスなら気にしない。」
「いやいや、お風呂とかもだよ?」
「むしろご褒美。」
ダメだぁ....。
てか忘れてたぁ、こいつを普通の人と同じにしちゃダメなんよなぁ。
でもまあ、重たい空気も消えたことだし良しとするかぁ。
こうして俺とレイは二人で有給?を楽しんだ。
ボス『なるほど...これがアレスのルーティーン....。私も同じことをしてみるか!』
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