第26話  いやあ、我ながらいい出来だなあ、うん

「今日はギルドから依頼があった魔族の討伐を行う。みんないいな?」


「ええ。」


「はい。」


「ああ。」


例のあれも完成したし、準備万端やな。

とりあえず頑張りすぎないように注意しよう。


「アレス君、考え事をしているようだが大丈夫かい?」


「ああ、問題ない。」



俺達はミネルネ高原に向かい、魔族の討伐へと赴いた。

しっかし久しぶりだなあここも。

涼しいわあ。


「この辺にいるはずだ。正直、二手に分かれ探したいところだが.....今回はやめておこう。」


「ああ、それがいいな。」


『アレスさん、やはり何かあるのでしょうか?』


『あの様子だとありそうね。』


ミネルネ高原を歩くこと十数分。


「貴様ら勇者パーティーだな?」


「お前はまさか....。」


「例の魔族?」


「そう考えるのが妥当でしょう。」


ふむ、どれどれ....


『鑑定』


レベル的には今のこいつらで充分だな。

それならば.....


「悪いが俺は戦闘に参加しない。お前たちの荷物は必ず守ると約束しよう。」


「アレス君....わかった。」


「仕方ないわね。」


「参りましょう。」


「私はミラヴォーネ様が配下、レヒュルンだ。貴様らには悪いがここで死んでもらおう。」


「私達とてお前に負ける気はない、行くぞみんな!」


「任せなさい!」


「承知しました!」


俺は例の物をいじりながら戦闘を見ていた。


「この者たちに祝福を、『身体強化』!」


「『重力操作』!」


「ほう、私に重力魔法をかけるか。しかし残念、私は身体能力でそのようなもの無効化できる。」


「『グラビティスラッシュ』!」


グァイン!


「ほう、剣にも重力魔法をかけていたか。なかなかやるな。ではスピードはどうかな?」


なるほど、俺が戦った2体より少し強いなコイツ。

しかし今のこいつらなら戦えない相手ではないな。


「『コンポジィムァジィック、ウィンドファイヤーストーム』!」


俺がまだ見てない複合魔法か。

まだまだ引き出しはありそうだな。

いじいじっと....


「『ライトニングコンパージェンス』!」


「ヘレナ、助かる!」


「でりゃあ!」


ギィィン!


「こんなもの効かない......何?」


残念だが奴の持つ剣は闇属性。

光を纏った聖剣エクスキャリバーの敵ではない。


「くっ、我が剣が切れていくだと?」


シュイン!


「どうだ!?」


「このままでは.....くそっ。」


「セリス、効いてるわよ!」


「セリス、そのまま切り捨ててください!」


「はぁぁぁぁ!」


「なっ、バカな!?」


スパァン!


「うぉぉぉぉっ!」


バタッ


「やった、のか?」


「やったわ!」


「わたくしたちの勝ちです!」


「私達が魔族に....ありがとう、これもアレス君の訓練のおかげだ。」


「ん?ああ、うん、そうだな。」


「ちょっと!もう少し労ってくれてもいいじゃない!」


「ああ、すごいな、見事な戦いだった。うん、すごい。」


「アレスさん.....やはり.....。」



その時、俺はさっきの敵とは明らかに比べ物にならない魔力を検知した。

こいつは....


「なんだ!?新手か!?」


「2体いるなんて聞いてないわよ!」


「まさかそんな....。」


「貴様らの戦いを見ていたが.....なるほどレヒュルンでは敵わないわけだ。」


こいつがミラヴォーネか。

確かに魔力が桁違いだ。


「我はミラヴォーネ、魔王様直々の配下が一人。貴様ら、見たところつい最近レベルが上がったと見える。面白い、これもアレス、貴様の力か。」


え?なんでこっちに話振るの?

いや、みんなもこっち見るなし。


「いや、俺は特に何もしていないぞ?そいつらが勝手に頑張っただけじゃね?」


とりあえず俺弱いです、全然戦えませんアピールをしておくか。


「まさか、お前がミラヴォーネ......まいったなあ、こりゃあ敵わないわ。」


「面白いことを言う。我に挑まず敗北を認めるというのか?それほどの力を持ちながら。」


「いや、大した力持ってないし、俺弱い、オウケイ?」


「まあいいだろう、ならば直接勇者パーティーをつぶすまで。我を相手にどこまで戦えるかな?」


まあ、ぶっちゃけ相手にならんだろうな。

レベル差がありすぎる。

いじいじっと....


「セリス、連戦になりますがいけますか?」


「ああ、やるしかないだろう。」


「あたしもまだ戦えるわ!」


「抗って見せよ勇者ども。」


「来るぞ!みんな備えろ!」


セリスの言葉にみんな構える。


「『メガヒーリング』!」


ほう、ヘレナのやつ範囲回復魔法使えるようになってたのか。

やるやん。


「『サンドウォール』!」


これは目くらましか。

だがこの手の敵は大体こういうの効かないんだよなあ。

俺の経験上。


「効かぬ。」


フォォォォン!


ほう、覇気だけで飛ばすか。

敵もなかなか.....


「まだよ!『コンポジィムァジィック、アクアエクスプロージョン』!」


へええ、アリサのやつ異なる2つの属性を同時に使うか。

こりゃあ面白い。


パシャァァン!ドォォォン!


しかし.....


「人間ごときが複合魔法を使うか、だが我の前で魔法は無意味だ。」


「き、効いてないの!?」


「私が行く!ヘレナ、もう一度私の剣に魔法を付与してくれ!」


「わかりました!『ライトニングコンパージェンス』!」


「助かる!これに火を付与して....。」


ほほ~う。

セリスのやつ、剣に2属性同時付与するか。


「行くぞ!『ファイヤーライトニンググラビティスラッシュ』!」


「面白い、受けよう。」


ズドォォォン!


直撃か。なかなかの威力が出たはずだが....

コイツもタフいな。


「なるほど納得だ。貴様、聖剣の力をまだ発揮しきれていないな?」


「っ!?」


「聖剣の力は魔剣の逆。つまり憎しみではなく愛によって真の力を発揮すると聞く。愛する者がいない貴様では使いこなせないわけだ。」


「.......愛する者......。」


「まあいい、死にゆく者に教えても意味はない。今度はこちらから行かせてもらおう。」


「『グラビティ』。」


重力操作の中でも敵の行動制限に特化した魔法か。

流石は上級魔族といったところか。


「くそっ、動けない!」


「なによこれ!?重力操作とは違うの!?」


「参りましたね......。」


「『ファイヤーフォールダウン』。」


上位の炎魔法か。

これを喰らったらまずいな。

いじいじっと.....


「ヘレナ!防御魔法よ!」


「この者たちに守りの力を!『ホーリーバリア』!」


グゴゴゴゴゴ


「このままでは.....勝てない.....。」


「アレスに頼ってたのがよくわかるわ.....。」


「アレスさん....。」


いやあ、我ながらいい出来だなあ。

いじいじ....


ズドォォォォォン!


「くっ!」


「うわっ!」


「きゃあ!」


ここまでか。

ドンマイだな。


「もう、結界を張るほどの魔力がありません!」


「くそっ、どうすれば....。」


「あたし達じゃ勝てない....。」


いじいじ....

ん?どうした、みんなしてこっち見て。


「アレス君、頼む、力を貸してくれ!」


「アレス、お願いあんたの力が必要なの!」


「アレスさん、お願いします!」




俺が出した答えは.....

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