KAC20244 「がぶっ」「ふあっ?」異世界賢者に会い、ワンコちゃんとささくれて…

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 絶対に、ささくれているよ!「部屋をそうじしたら、老賢者に会えてしまいました(たぶん)」異世界賢者って、結局、誰だったの?

 「あこがれをもちすぎるっていうのも、どうなのか?ささくれの、はじまりか?」

 あこがれ、か…。

ストレス続きの中学生生活で、わかってきたこと…。

 「異世界賢者に、会ってみたいなあ」

 ふと、ぼやいていた。

 「頭、良くなりたいなあ」

 押し入れに入って、部屋掃除。

 すると…。

 部屋全体に、紫色のもやが取り巻きはじめた。

 「ほう、中学生か…」

 「だ、だれ?」

 声をかけてくる主の姿は、見えない

「おい、君?」

 「は、はい!」

 「我は、異世界老賢者。お主、何かやってほしいことがあるのではないか?」

キター!

ならば!

この、今は姿の見えない異世界老賢者とやらに、学校の宿題をやってもらえ!

「…そ、それなら賢者様!」

「はい、終わり」

「え?」

 「シンキングタイム、終わり」

「…は?」

 俺は、ハッとなった。

な、何?

何が起きたんだ?

 手には、掃除用タオルが握られたまま。

 今まで、だれと話していたんだ?

 庭で、「老賢」ならぬペットの「老犬」が、くうんくうんと、鳴きはじめた。

 今はもう、リアルな中学生活を送ることだけで、いっぱい、いっぱい。

 あのときは、こうも言われたんだよな。

「こんな日本は、誰だっていやじゃろう。しかし、異世界に逃げることなく、現実を受け入れること。そうして生きていくことも、大切じゃぞ?異世界が理想的だとは、必ずしも限らない」

 そのとき!

何かが、さとれてきたような気がした。

 不思議と、やる気が出てきていたし。

 なのに…。

 長いようで短く、短いようで長い中学生生活は、宿題のような勉強分野では振るわず。

 「賢者って、何者?」

 空気が、重かった。

 「ほら?これ、食べな」

 夕飯の残りを、ペットの老犬に与えてみた。

 「どうだ、美味しいかい?」

 「うるせえぞ、人間!」

 「ふぁっ?」

 「こんなまずいもの、食えるか!」

 ちょっ…。

何で、今だけ賢くなって、動物の声が理解できたんだ?

「お、お前!人間の言葉が、わかるのかい?」

「がぶっ!」

心だけでなく、こちらの手もささくれました。



 





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