世界最強の魔剣を持つ最弱勇者〜魔剣の奪い合いが起こるので必死に守ってます

水無月のん

第1話 魔剣を手に入れた学生

 俺の名前は郡山一樹、16歳。

 何の変哲もないただの高校2年生。

 唯一の変わったことと言えば、こないだじいちゃんが死んだ。

 じいちゃんは面白くて、気さくな人だった。


 「おじいちゃんー遊ぼー」

 「一樹か、よく来たな!」


 子供の頃はよくじいちゃんの家に行って遊んでいた。

 その度におじいちゃんは頬を緩めて玄関まで迎えに来てくれる。

 俺がまだお母さんに甘えていた頃から相手をしてくれたりしたそうだ。


 そんなおじいちゃんが死んだ。


 死因は交通事故、おじいちゃんが運転している最中に突然突っ込んで来たとか。

 加害者側も脳から血を流して死んでいたみたいで、俺はこの悲しみと怒りの感情のぶつける場所に困った。


ーーーー


 「一樹ってなんかつまんねーよな」

 「は?どういう意味だよそれ」

 「いやだからそのまんまの意味」


 いつもの通学路、少しチャラめの金髪が目立つこいつは『猿渡亮さわたりりょう』まあいわゆる腐れ縁ってやつで、俺がまだオムツを履いてるときから一緒にいる。


 「今日の数学って確か小テストだよな」

 「ああ」

 「勉強してねーわ」


 そして、こいつの『勉強してねーわ』は、俺の中で信用できない言葉第一位に入る、こいつがこれを言う時は大体高得点を叩き出す。


 「一樹は?なんかやってきた?」

 「いやまあ、大したことはしてないけど」

 「なんだそれ?もったいぶらずに言えよ」

 「寝てた、いい夢みてた」


 亮に怪訝な顔をされるも俺は自信ありげにそう言った。


 実は俺が異世界で無双する夢を見た。


 男なら、いや男女問わず憧れを抱いたもの、それが……


 『魔剣』


 特に異世界ラノベでは必ず出てくると言える必須級の武器であり、誰しもが一度は憧れを抱くであろう、それが魔剣である。


ーーーー


 事の発端はじいちゃんが死んでから起こった。


 「一樹、ちょっと来なさい」


 じいちゃんの葬式からしばらくした後、親戚みんなで集まってじいちゃんの遺書を読むことになった。

 不意に起きた交通事故だったが、遺書があったのだ。

 どうやら、遺産の相続とか遺言的なものを読むらしい、俺はショックすぎてそんなことはどうでも良かった。


 


 お母さんが一通り遺書を読み終えた後、右下に大きく書かれていた。

 親戚一同、静まり返った。

 

 「またお父さんのお遊びね、本当好きだわね、こういうの」


 沈黙を破ったのは他でもないじいちゃんの娘、母さんだった。

 じいちゃんはこういう冗談が結構好きで、遺書に書いていてもおかしくなかったのだ。


 「確か……押し入れの奥にレプリカの剣があったよな」


 お母さんの姉(叔母さん)が言う。

 レプリカの剣?そんなのあったけ?


 「ちょっと取り行ってきます」


 お母さんが剣を取りにこの場所を離れた。

 少ししたらお母さんが鞘に収められた鞘が手入れされた西洋風の剣を持ってきた。


 「こんなのしかなかったけど……これレプリカよね」


 お母さんによれば、剣と鞘がガッツリくっついてるらしく、離れないらしい。


 「かったいわねー、こんな鞘も抜けないような、レプリカでいかにもおもちゃみたいな剣を孫にやるお父さんの気が知りたいわ」


 親戚一同、剣を回し合い鞘から抜こうとするが誰も抜けない。


 肝心の俺も、


 「一応危険はないっぽいから一樹に渡すけど、変なことしないでね」

 「はーい」


 ということで俺は魔剣?のような見た目をしたレプリカの剣を手に入れた。


ーーーー


 あれから剣を持ち帰った俺は、なんとか剣を鞘から抜くことができないかと模索していた。

 力づくで思いっきり開けるのもダメ、叩きつけて鞘を壊そうとしてもダメ、工具を使ってもダメ、とにかく色々試したがダイヤモンドでできてるのでは……と思うくらい頑丈だった。


 「開かないなーほんとにこれレプリカの剣なのかー?」


 俺は疲れてその剣をひたすら見つめていた。

 俺はふと、柄の部分を見ると少しボタンのような、押せそうなものがあった。

 何を思ったわけでもないが、俺はボタンを押した。


 「なんだ!?」


 すると辺りは白い光に満ち、どこかに転送する雰囲気だったので俺は咄嗟にその剣を手に取った。次第に薄れていく重力に本当に転送しているのだと思う。


 「痛っ」


 次の瞬間、3秒も経たない内に突如地面に尻もちを着いた。

 辺り一面の草原、青く澄んだ空、心地よい風、ここどこだ?


 「剣は……抜けないか」


 そしてそう思うのも束の間、前から2匹の小さい子供のような緑色のゴブリンがやってきた、


 「やばくね」


 幾ら子供ゴブリンだとは言え、ほとんど武器が無い丸腰の現代人が闘ったら、このゴブリン達がライオン並に強かったら……


 今の俺じゃきっとやられるな、


 ゴブリン達が持っているのは木の棍棒のようなもの、一つ力比べをしてみるか、判断をしくじったら死んでしまうし、逃げたところでもう無駄な気もするし。


 ここで予想外の攻撃が飛んでくる。


 「痛っ」


 ゴブリンの内1人が棍棒を少し離れたところから投げてきた、予備動作で気付ければきっと回避できたはずだ、攻撃された腕を抑えて考える。


 俺は落ちたゴブリンの棍棒を拾うや否や、投げ返した、

 

 棍棒はゴブリンの明後日の方向へ飛ぶと、ゴブリン達は走ってきた。


 「もうこれを使うしかないっ」


 鞘から抜けないままの剣を構え、ゴブリンと闘う準備をした。

 ゴブリンの1人目が何か言いながら飛び攻撃を仕掛けてきた。

 飛んだと言っても1mくらいで、それでもあまりに現実世界から離れ過ぎていたものだから対応が遅れた。


 俺は剣を上からくる攻撃に剣を横構えにして防ぐ。


 『ガキンッ』


 剣を構えると言っても、剣はそこそこ重く咄嗟な動作は難しい。


 「ぐウェヘヘヘヘヘ」

 「グフェエエエエ」

 「気持ち悪いな」


 ゴブリン達がなんとも下衆い笑みを浮かべる、まずいな。


 俺はゴブリン達と睨み合いながら、隙を窺う。

 この一手一手の読みに俺の命が掛かっていると思うと一気に心拍数が跳ね上がる。


 ゴブリン達が一斉に攻撃を仕掛ける、その次の瞬間だった。


 『遅いねー』


 ゴブリン達が気絶するのと同時に、俺と同い年くらいの女性が現れたのだ。


 

 


 


 


 


 





































 





















 


 

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