評価E…不良品と呼ばれているあいつが実はヒーロー!?

〇この記憶は夢?それとも現実?


――俺は、夢を見ていた。

少なくとも、その世界で俺は今のように不良品と呼ばれるようなことはなくて…逆に、天才、だとか神童、と持て囃されていたような気がする。

そうして俺は、その世界ではみんなに頼られ、みんなを救い、みんなを助ける。

そんな、ヒーローのようなことをしていたような気がする。

だが、そんな夢のよう日々はいつまでも続かない。

視界がブラックアウトする。違う風景へと視界が変化していく…

そして…次の俺の視界に映るのは俺に助けを求める少女とその少女を見つめることしか出来ない無力な俺。

俺は、ヒーローになりたかったんじゃないのか?それなのに、なんで俺は…

少女の声が聞こえる。

最後に夢の世界で俺の耳に入った言葉は

「いつか…また会おうね!一」

…という、期待しているような、それなのにどこか諦めているような、少女の声だった。

―そこで俺の意識は現実へと引き戻される…

冷や汗の流れる自分の体をベットから起こしながら俺は思わずこう呟いた。

「はぁ、またこの夢か…」

この夢は、俺の頭を悩ませる。

全くもって身に覚えはないのだが、何故か実際に経験したことがあるような気持ちになる。一体この夢はなんなのだろう…

…まぁ、一つだけ言えるのは

俺は―ヒーローになんてなれないってことだ。

「とりあえず眠ぃな…」

そうして俺の目覚めの悪い一日が今日も始まるのだった。



「なんだか調子悪そうだけど大丈夫?」

昼休み、俺らがいつもの様に屋上で昼ご飯を食べているときだった。急に渚がそんなことを言ってくる。

「ああ、大丈夫だよ、ちょっと寝不足なんだ」

実は今日1日何も手についていないのだが。

「それならいいんだけどさ…困ったことがあったらすぐに言ってね?一はすぐ1人でなんでも抱え込むんだから」

「あぁ、キツかったらすぐ言うさ」

…と、そんなことを言ったものの、きっと俺は渚には相談しないだろう。

相談したら、きっと渚は親身になって話を聞いてくれるだろう。一緒に悲しんでくれるだろう。だが、だからこそ僕は言えないのだ。

―他人が悲しむ姿、落ち込む姿なんてものは見たくないから。

っということで、話を変えることにしよう。

「話変わるんだけどさ、お前って夢とか見るか?」

自分の体に起きている現象について気になった俺はそう尋ねてみた。

「う〜ん、あんまり見ないわね」

俺ももともとは夢はあまりみたいタイプだったはずなのだが…いつから俺は夢を見ているんだ?まぁ、別にどうでもいいか。

「そうか、ありがとうな」

「でも突然、どうしてそんなこと聞いたの?」

「ああなに、ちょっと夢を見たもんでな」

「そんな悪い夢なの?」

「まぁ悪いと言えば…?でも、特に実害は出てないから大丈夫だぞ」

「どんな夢だったの?」

やばい、墓穴を掘ってしまった。

変に迷惑をかけるのもなぁ…

「…まぁ、俺の昔話みたいなもんだ」

まぁ間違ったことは言ってないだろう。

「昔話…ねぇ、でも、あなたってどんな子供だったの?あなたみたいな人がなんの特殊条件もなしに評価Eになるとは思えない」

俺の昔の話か…どうやって適当にそれっぽい話をしようかな…

いや―こいつには、もう言ってしまおうか。

…俺が今まで誰にも言ってこなかった事実を。

「俺は…どんな子供だったんだろうな」

「どういうこと?」

どこか困惑したような渚の声が聞こえた。

「僕は、昔のことは何も覚えてないんだ」

「1番昔の記憶でさえ1年ほど前の記憶だ」

いわゆる記憶喪失、と言うやつなのだろうか。何がきっかけなのかはよく分からない。

「なんで記憶喪失に?」

「それが分からないんだよな、俺は気づいたら今の家にいたからな」

「そういえば、あなた一人暮らしだったものね、大丈夫なの?昔のことを覚えてないって…」

「大丈夫だよ、なんも関係なんてない」

…俺の日常生活にはなんの影響もないことだからな。

「この話をしたのはお前が初めてだな、つまんない話だが、聞いてくれてありがとうな、渚」

「いえ、こっちこそ、隠してきたことを言ってくれてありがとうね」

…と、俺たちが互いに感謝の言葉伝えたその瞬間―

昼休み開始のチャイムが鳴り、僕らは慌てて自分たちの教室へと戻っていくのだった…

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