第1章第1話
高校2年の冬、広夢と咲が付き合った。叶人と広夢と咲は中学2年から2回のクラス替えを経ても4年間、ずっと同じクラスで仲のいい3人組だった。何をするにも一緒だった。広夢の気持ちには最初から叶人も咲も気づいていて、やっと付き合った、そういう感じだった。
「うわっ、ちょ!!」
隣の席からつつかれて飛び起きる。
「おい水村!うるせーぞ。授業中くらい大人しくしろ。関口もちょっかい出してんな。」
寝起きの脳が状況に追いつき、叱責する教師に適当に返事をし、叶人は咲を睨んだ。
「え、なに。あたしがわるいの?起こしてあげただけなのにそんな顔されもなぁ...」
申し訳なさの欠けらも無いその微笑みに腹を立てる。
「.....起こし方があるだろ。勘弁してくれ。」
「叶人さぁ、寝言で『咲...』ってあたしの名前呼んでたけど、一体どんな夢をみてたんだろう?」
やはり寝言いってたか。咲の夢見てたから。
「見てっ、たけど別にやらしい夢見てたわけじゃないから」
叶人は咄嗟に取り繕うが、もちろん逆効果である。
「え別にあたしそこまで言ってないよ。ただどんな夢見てたのかな、って」
ちょうど学校のチャイムが響いた。なんとか逃げ出せそうである。
「ほら関口、チャイム鳴ったから帰るよ。広夢が待ってるよたぶん。」
「えあたしまだ話おわってないのに!」
「おれの中ではもう終わってる。広夢に早く会いたくないのかー」
広夢と咲と叶人は大抵一緒に帰宅する。
家の方向は違うが、3人ともスクールバス登校なのでバスまでいっしょだからである。
「会いたい、けど....」
「ならはやくいくよ」
「........。」
叶人が教室を立ち去る姿を見つめる咲の表情は晴れやかとは言えないものだった。
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