転生少女と少年

 受験というビッグイベントを終え、私達は高校生となった。無論、私は天才少女なので入試勉強など楽勝だった。嘘である。アオくんにしごかれながら勉強した。それはそれはしごかれた。


「何はともあれ、合格できてよかったー」

「ハルちゃん、模試の判定とか合格水準ギリギリだったもんね」

「そのことは忘れてくれ」


そして、待ちに待った高校生活はとても充実していた。そして、アオくんのモテ期は再来した。


みんながアオくんの素晴らしさに気づいたってことだよね!それとも……。


「アオくんアオくーん、最近堕天使様発言しないよねー!何でー?」

「いや、あれは黒歴史というか古傷というか。とにかく忘れて今すぐに」

「え?もしかしてあれ厨二病だったの?俺の右腕が疼く的なやつだったの?」

「忘れてくれ。頼むから」


衝撃の事実である。どうやらアオくんは堕天使様ではなかったようなのだ。


「え、あれ、てことはあの、その」

「どうした?」

「私の前世発言も厨二的な何かと思われてる?」


アオくんが堕天使様じゃないと分かった今、私の前世についても信じてもらえないかもしれない。


「俺はハルちゃんの前世を信じるよ。たとえハルちゃんがカラスを白と言っても信じる」

「いや、だからカラスは信じなくて良いって。」


カラスのネタはまだ続いているのか。


「でも、そっか。信じてくれるんだ。」

「俺はハルちゃんを信じる。だから、俺が今から言うことをハルちゃんにも信じて欲しいんだけど……」

「?」

「もし俺が転生して生まれ変わってもハルちゃんに会いにいく。このことを、どうか信じてくれないか」


その言葉に思わず息を飲んだ。


「信じる、信じるよ!」

「だからそのときはまた、俺と仲良くしてくれたら嬉しい」

「勿論だよ!!!」


そう言ったあと、私達は別れた。今思えば、そのときにもっと話しておけば良かった。


だって、アオくんはあの日を境に消えてしまったから。これを人は行方不明と呼ぶ。何日経ってもアオくんは見つからなかった。もしかしたらアオくんはこの世界にいないのかもしれない。この世界には。


私は、前世でのとある出来事を思い出す。前世の私は、来世のアオくんらしき人物と出会っていた。それにアオくんは、『生まれ変わってもハルちゃんに会いに行く』と言った。


だから、もう大丈夫なのだ。とにかく大丈夫なのだ。何が大丈夫かはよく分からないが。そう自分に言い聞かせた。

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