転生少女と厨二少年とクリスマス

 いよいよ寒さも本格的になり、あの行事が近づいてきた。そう、クリスマスだ。


「ということで、三年ぶりのサンタさん捕獲作戦の会議をはじめまーす!いえーい」

「……」


 ここは、私の部屋。床一面に散らばったネットやスコップ、トングなど。そしてそれを見つめて呆然とするアオくん。


「ハルちゃん……?またあの悪魔のような所業をおこなうつもりか?」

「私は別に悪魔じゃないもん。知的好奇心に抗えないだけだよ」

「知的好奇心か。ならもうちょっとテスト勉強頑張ろうな」


 悪魔。悪魔、悪魔か。そういえばアオくんが子供の夢を壊す悪魔がいると言っていたな。


「アオくん!今回はサンタさん捕獲じゃなくて悪魔を捕獲しよ!」

「む?それならサンタクロースを捕まえるよりはマシだな」


 よし、サンタさん捕獲作戦改め悪魔捕獲作戦の会議を始めよう。


「トラップは何が良いかな。ネズミ獲り?」

「ネズミ獲りごときで捕まえられる訳がないだろう」


 それもそっか。ネズミ用の罠にかかる悪魔はカッコ悪い。


「ここにこんな風に魔方陣を描けば良い」

「魔方陣!カッコいい!!」


 というわけでクリスマス前日の夜。クリスマスパーティーをするという名目で我が家に居座るアオくん。


 クリスマスケーキをもぐもぐと食べるアオくんは可愛い。それはそれは可愛い。


「よし、今夜は張り込みをするぞ」

「了解」


 今日は深夜も寝ずに、悪魔が来ないか見張るのだ。そして夜の十一時。私達は行動を開始した。


「アオくん、魔方陣の準備は出来た?」

「勿論だ」


 張り込みを開始した。が、悪魔はやってこない。一時、二時、三時、と時間だけが過ぎて行く。


「―――――!」


 唐突にアオくんが何か唱え始めた。そして素早く魔方陣を丸め、瓶に入れて封をし、札を貼った。


「これで悪魔を封印できたぞ」

「え……?悪魔なんて見えなかったよ」

「あの悪魔は気配を消すのが上手くてな。巧妙に姿を隠していた故、感知に慣れた者にしか見つけられないのだ」


 つまりアオくんは感知に慣れていると。さすがである。


「ところでハルちゃん、ベッドの枕元を見てみろ」


 ベッドを見てみると、大きな靴下の中に、何かが入っているように見えた。


「私がサンタさんに頼んだプレゼントが入ってる!」

「ほう。ちなみに何を頼んだのか?」

「それはねー、ギネスブックの最新版だよ!」

「え」


 実はずっとギネスブックが気になっていたのだ。ここは異世界だから、私がもといた世界とは人類の物事の限界値も違うかもしれない。そんなことを思いついてから、ずっとギネスブックが欲しかったのだ。


「アオくん、メリークリスマス!」

「メリークリスマス」


 こうして私はクリぼっちを回避することができた。ちなみにその後昼の十二時まで爆睡してお母さんに怒られたのはご愛嬌だ。

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