回想②
野郎と死について話したこともあった。
「死んだあと誰とも何も喋れないって、勿体なくない?」
「何言ってんだ」
「いやいや、死って人間が唯一全員で共有できるコンテンツじゃんか」
「お前人の死のことコンテンツって言ったか?」
「だったら絶対『俺はこんな死に方をした』とか『その死に方いいなあ』っていう、死の感想戦は盛り上がると思うんだよなあ」
「映画の感想を語り合う感覚で自分の死について語りたくはないって」
そう言ったものの、確かに一理あるなとも思った。
死ぬ最後の瞬間の感覚は誰にも共有できないもんな。
なんかこう、宇宙人に連れ去られて体中の血を抜かれて死んだとして、そんな面白い話があったら誰かに言いたいもん。
「キャトラレ性癖あったの?」
「キャトラレってジャンルとして確立してるんか!?」
寝取られじゃないんだから。
それから野郎は少しだけ考えて言った。
「でも駄目だわ。もし死んだ後に喋れるブースがあったら絶対いかに面白く死ねるかを考えちゃう。おもろい死に方思いついたら死んじゃいそうだ」
「はっ」
俺は鼻で笑ったが、俺もやりかねないな、と思いそれ以上の言及は避けた。
「もしお前が笑える死に方をしたら、俺はゲラゲラ笑ってやるよ」
野郎の死に方は特に笑えるものではなかった。
だから、死んだあと、野郎をダシにしてきっちり笑ってやることにした。
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