第17話 最良の選択

 ゴーストの攻撃は、生前に持っていた1番強い感情によって使える能力が違う。

 喜びならば幻術、怒りなら炎、哀しみなら水…といったところだ。

 しかしエリカは全ての魔法を全部展開してくる。今まで全く見た事がない。

 流石、ゴーストの上位互換と言ったところだろうか…

「妖術展開、水魔法展開、大地魔法展開」

 魔法を展開すればするほど、私の体力は減っていく。私でないとできない荒業だ、これはホタルとルキだけでやらなくてよかった…

「邪魔しないでよ…っ!」

 このまま受け流し続けるのも限界になるだろう、まだあと2日くらいはいけそうだけど…

 私はエリカを攻撃する資格はないんだけど、このまま放っておいたらきっと…

 もっと悲しむことになる、から。

「エリカ、ごめん」

 光魔法と風魔法を展開し、エリカをぶっ飛ばした。彼女は叫び声1つ、あげなかった。

「エリカ、このブローチ?」

「…これが、私の魂が留まってるものだから」

 早く、壊して。そう言った。これを壊したら、任務が完了する。

 今ここで私が倒すことが、私の為にもエリカの為にも最良の選択だろう。

「破壊魔…」

 ドン!!

 私が詠唱をする途中、別の存在がラピスラズリを破壊した。エリカは灰のようになって消えていった。

「…!?何故、ここに…」

「助けに参ったのだが?」

 国王…はそう堂々と言った。

「ティナ!良かった…」

「国王陛下に知らせて良かったよ」

 ホタルとルキが続いて部屋に入ってきた。全身からゾワッと、何かが這い出てくるような感覚があった。

「ティナ?どうかしたの?」

「あっ…いや…」

 純粋な、キラキラした瞳で問いかけてくるホタル。

「ううん、なんでもないよ。帰ろう」

 私は部屋の花を取って、3人の後に続いた。あっけなく、任務は終わった。



「ただいま、キリさん…」

「おう、おかえり。…なんかあったか?」

 座ってるキリさんにもたれかかり、私は花を見つめた。

「何にもないよ。…ちょっと部屋に戻るね」

「…夕飯、ちゃんと食べに来いよ?」

「…うん」


 やけに涼しい部屋に、私は銀の杖を置く。真っ白なワンピースを着て、髪を解いてベッドに横になる。

 髪の色と、目の色と…感情の大きさ以外は、私とあの子はそっくりだった。

「リド…は…今どうしてるかな」

 そう呟いてから、自嘲が漏れる。こんなに感傷的になるのは私らしくない。

 まさか、任務先で2年前を思い出してしまうだなんて思ってもなかったのだから。

 頭の中に、エリカの声が木霊する。愛していた、って。

 うん、私だって、そうだったのに。

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