第12話 母の言葉

 外に出ると、黒髪のゴーストとホタルが喋っていた。いやいいけど、二人とも気絶してなかった?いやいいけどさ。

「あれ?ティナその人は?」

「げっ、こいつよ!屋敷に住み着いたのは!!」

「ふーん、ゴーストビビらせてたのはお前か…」

「いや仕方ないじゃんゴースト退治が任務でっ…」

 そのあと黒髪のゴーストと兄さんが何やら言い争っていたけれど、暫くほっといたら静かになった、体力切れだけど。

「で?ルキさんはゴーストの退治方法を知ったんだっけ」

 そういうと、黒髪のゴーストはとても驚いて後ろに何歩も下がった。普通ゴーストは外出てこないんだから戻っていればいいのに。

「そうなんだよ!光魔法と風魔法を同時に解放して、光で瘴気を払いつつ風で幽体を飛ばして最後は大地魔法で土に押し戻すんだ。」

「ああなるほど、本当にゴリ押し技だね…」

 確かに冒険者の間ではゴーストは光魔法で怯ませるのが鉄板と聞いたし、風魔法は一部の魔法研究会が有効的手段だとか言ってた。結局幽霊は死んだものの成れの果てだから地面に埋めれば元に戻るということなんだろう。

「でも何でこんな簡単なのに…」

「簡単…?何言ってるのティナ、同時に複数の魔法を展開するなんてできる訳ないじゃん。」

「なんてこった」

「パンナコッタ」

「…うわおもんなやめろよ」

 兄とゴースト、仲良いのでは?私と同じくギャグセンがクソなのがいい感じだね。自覚はしてるよ、つまらないってね…

「なるほどね、確かにこれはいくら母の言葉や本があっても無理だわ」

 教えるのが下手っていうのも絶対あるだろうけどさ。一人だけ規格外の魔力と祝福持ってるんだもん、誰も真似できないよね。

 実の子供である私と兄以外はね?

「じゃあ試してみるから、そこのゴースト実験台ね」

「嫌よ!?」

 黒髪のゴーストはすごい勢いで首を横に振る。どこかの小説の幽霊のように首が取れかかったりしないのかな…

「そういえばゴーストの名前は?」

「私?私は…エリカ。エリカよ」

「エリカ?ふーん、よろしくね。」

 きっとこのあとこの人に館案内してもらうことになるだろうしね。仲良くしておかないと面倒臭そうだ。

「じゃ、ルキとホタル。私は一度王都に戻るけど…どうする?」

「俺って戻っていいのかな?」

「私も一度戻る!入るならそれなりの準備をしていくべきだと思うし…」

 じゃあ兄貴は置いていくとして。城下町で買い物でもしてくるとしよう。それにまずは王に許可を取らないと…ああ面倒だ。

「じゃあエリカ。ルキにぶっ飛ばされないようにね」

「えええええええ」

「うるさっ…」

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