第10話 兄妹

「お化け退治ィ?」

「うん…でも、ゴースト系に効く魔法なんてアイビー様しか使えなかったっていうし…」

 うちの母親、人に教えるの下手で申し訳ない。風魔法が何とかかんとかみたいな本は読んだことあるけど、未だに母親以外に使えた人はいないみたいだからきっと私も無理だろう。

 私案外初心者なんだぜ、ははは。

「しかも、Eクラスの人と合同なんだけど…そもそも館の扉錆びついてて入れないはずなんだよね。」

「Eクラスが、任務?Bクラス主席と?」

 普通、Eクラスに任務は与えられない。魔法が弱いから、どちらかといえば守られるはずの人たちだからだ。時々、弱い魔物をしばく仕事はあるみたいだけど。

「ホタル、今すぐに幽霊館まで連れて行ってくれる?」

「え?何で?」

「もちろん、気になることがあるからだよ」

 さて、もしもだけれど。この勘があっていたら…また面倒なことになりそうな予感がする。ホタルには悪いけど、ほんの少しだけ巻き込まれてもらおう。


 兄妹喧嘩にね。


「ここだよ、幽霊館…」

「うーわ、名に恥じない佇まいだねこりゃ。さて、レッツご…」

「こんにちは!!」

「うるせえ黙れ消えてくれ」

「酷くね!?」

 いけないいけない、ビビりすぎてつい暴言が。目をやると可愛らしいゴーストが立っていた。人型の綺麗な黒髪のゴーストだ。

「黒い髪なんて初めて見た。綺麗じゃん」

「え!?えへへ、ありがとう。でも助けて欲しいの!」

「接続詞の使い方勉強してからね?」

 そう言うとポカーンとした顔をしていたホタルが倒れてしまった。確かに目の前で友達が当たり前のように幽霊と喋ってたらそうもなるわ。

「えっと…緑髪で緑の目をした人間の男が最近館に住み着いちゃったの!!」

「ふーん」

「反応薄くない!?」

 にしても緑髪で緑の目か。最近聞いたような聞いてないような。魔力はないのに神々に沢山の祝福を受けた人ってこと?なーんか心当たりあるんだよなあ。

「よいしょっと」

「ちょ、何してるの!?人間じゃ開かないわよその扉重いんだか…ら…」

 普通に開いた。まあそうだよね、魔力で無理やりこじ開けたわけだし。なんて考えてたら幽霊ちゃんまで倒れちゃったよ。いやあ、今日の私は気絶者生成メーカーだね。いやはや物騒。

 因みに扉の中は真っ暗で、今にでもお化けが出そうなくらいだ。さっき出会したので全く怖くはないが。

「誰だああああああ!!」

「うわ早速降臨した」

 結構キモい蜘蛛型のお化けだ。ゴーストには魔法も物理も効かないのでこう言う時は光の花って呼ばれるモノをぶつければ良いんだけど。

 当たり前、用意なんかしてないのよ。

 走るのは遅いけど逃げるのは得意。よく言うじゃん、逃げ足は早いって。あれ褒め言葉だと思う、ちゃんと逃げれるんだから。

「こっちだ!」

 男の声…一度そっちに行くと、蜘蛛はどこかへ行ってしまった。

「…やっぱそうか」

「は?え?」

「兄さん?」

 パサ、とローブが落ちる。きっとこんな暗い中でも、髪の色と目の色はよく見えるだろう。だって、兄の瞳が見えるんだもの。

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